新聞のおくやみ欄。

 

八十、七十は天寿を全う。

六十、五十は中ったか。

十代、二十代。

 

なに、あった?

 

 

 

                                                                          もぬけの空の午前中/若い美空はそれでも生きた

 

 

 

サヨナラ サヨナラ サヨナラ

 

手紙の お悔み

夜中の どしゃ降り

正午の 太陽

 

きみの 人生

 

さようなら

 

 

手紙のおくやみ。

 

俺には 『親友』が居た。

幼稚園以来の親友で、エガミといった。

小・中・高

全部いっしょで、クラスが違おうがよく一緒に遊んだ。

いや

一緒に遊んだというのはすこし違う。

一緒に居て、それぞれ別々に遊んでいた、と言うのがきっと正しい。

俺は俺で、クチクチと何かを作っていて

エガミはエガミで、コツコツと何かを作っていた。

 

背中合わせで

視線を合わせることなく

互いに違う方を向いて

 

出来上がると、お互いに出来たものを見せ合った。

そうしてまた背中合わせにお互い何かを作り出す。

 

その様子を眺めて、親が笑っていたのを憶えてる。

 

 

大学は別々。

エガミは中心地の都会の大学に進んだ。

俺は北の都会の大学に。

 

それからは手紙でやり取りをするようになった。

その頃はまだピッチから携帯へ移り変わる時代で

みんなまだどっち付かずで、持ってるヤツも少なかったんだ。

女子なら凝ったレターセットで送り合うんだろうが

男にそんな節操は無い。

 

茶封筒に、ルーズリーフの用紙。

 

いま思えば親しき仲にも礼儀無しな付き合いだったな。

中心地の都会は何でもモノが揃ってるから、よく俺は遊びがてらエガミの処にも遊びに行った。

宿代を浮かすために泊めてもらったりとか

大学生の、よくある学生生活を俺たちはそれぞれ満喫していた。

 

 

でも、それもある日突然終わる。

たった一通の手紙によって。

 

春先に手紙を出して、それきり。

返事が返って来なかった。

俺も春先は授業登録とか新入生歓迎とかでいろいろ忙しかったから

忘れてた。

 

六月。

真っ白な封筒が届いた。

字もアイツにしては綺麗だなと思って裏を返したら

アイツの母親からだった。

 

俺もそうだが

エガミは小さい頃から体が弱かった。

でも、まあそんなに大病も患わずにそれぞれデカクなったから

「俺たち、よく生きてるよな」、と

笑ってよく話していた。

 

手紙には、大学の講義中に倒れ、そのまま半ば植物状態だということが書かれていた。

 

 

夏休み、地元の病院に見舞いに行った。

病室ではエガミの母親が迎えてくれてた。

「友達がお見舞いに来てくれたときに限って寝てるのよ」

そう言うと、口元に手をあてて苦笑いを隠した。

俺が覗き込むと、エガミは目をキョロキョロと動かした。

俺は「ヤッホー」と言って、手を振った。

 

その年の秋、エガミは亡くなった。

 

 

 

サヨナラ サヨナラ サヨナラ♪

 

てがーみの おくやみ

よなーかの どしゃーぶりィ

しょおーごの たぁーいよぉ 

 

きみの じんせー 

 

さよぉーなーらーぁ♪

 

 

 

俺は大学が始まってたから葬式には行けなかったが

代わりに行った母の話によると

遺影の写真は最高だったそうだ。

 

 

 

                                                                        もぬけの空の午前中/若い美空はそれでも生きた

 

 

 

俺には無駄な自信がある。

エガミにはまた会えるという無駄な自信だ。

もう居ないのはわかってる。

でも

俺が忘れたような頃に、ばったり会えるような気がしてならない。

人間は、そうやって生きてゆくのだろう。

 

・・・・ぱちん、パラパラパラ。

 

「よっと」

爪を切り終わり、立ち上がる。

うーんと伸びをする。

隣でゆれる白い女が、太陽光に反射して煌めいた。

 

 

 

�鬚�/つづき
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