・・・・・・真っ暗といっても本当に真っ暗ってわけじゃないから。

目が慣れてくれば、だんだんいろんなものが見えてくる。

真っ暗より暗いピアノ/窓に映る夜

 

窓辺でぶら下がるクマ。

 

 

 

 

 

 

                                      もぬけの空の午前中/真夜中は13回鳴る

 

 

 

 

 

大きなまあるい目が夜の暗さを物ともせずに、ツルリと弧を描くように輝いている。

大きなまあるい目は今にも飛び出してきそうなほどに引ん剥いていた。

寝返りを打てばもう視界に入ることはないけれど。

背中に視線が突き刺さって/振り向いた瞬間そこにいる気がして

仕方が無いから、ボクもじっとクマと目を合わせてる。

 

静かな夜だな

 

父さんも母さんももう寝てしまった。

時計は一時間おきにボンボン鳴るけど、10時以降はもう数える気にもならないから今が一体何時なのか見当もつかない。

 

・・・12時の合図は、実は13回鳴ってるんじゃないかな

 

頭をグイっと居間の方に向ける。

オレンジ色の小さな灯りが、ぼんやりと照らしてる。

その宙空を、何かが流動してるような気がしたけど。

頭を元に戻してまたクマとにらめっこを始める。

 

ああ・・・・・・ 今、気づいた・・・

 

クマは微動だにせずに/昼間のように窓が開いてるわけじゃないから

少しだけ、ボクの目から力が抜けた。

 

あのクマの目、ギョロっとしてるんだぁ・・・・・・

 

飛び出さんばかりに剥きだした目。

あの目がひどく背中に痛かった。

持って来てくれた父親の手前、可愛いといったが。

たとえ太陽の恵みの下でも/人工による灯りの下でも

あの眼光を、好きには、まして可愛いなどとは。

きっと、一生、無い、よ。

 

いきなり目の前がほんとうの真っ暗闇になった。

目から力が抜けたのはわかっていたから、てっきり自分で目を閉じてしまったのかと思ったけど、違った。

 

・・・これは手だ。それも、たぶん、彼の・・・・・・

 

ほんとうの真っ暗の中でボクは目を閉じた。

 

 

 

 

 

                                      もぬけの空の午前中/真夜中は13回鳴る

 

 

 

 

・・・ーン・・・ボーン、ボーン・・・・・・ーン・・・

 

・・・時計は何回鳴ったんだろう・・・・・・

 

日付は変わったんだろうか? たくさん鳴ったような気がしたけど。

 

もし12時だったら、ほんとうに12回だけしか鳴らなかったんだろうか?

 

ボクの耳には途中から聞こえた。もしかしたら、もっとたくさん鳴ってたのかも。

 

・・・・・・63回くらいとか。

 

そんなわけ、ないか・・・・・・

 

あ、日付が変わったとしたら、もう今日の彼の名前は「昨日の名前」だ・・・

 

また考えなくちゃな・・・・・・

 

あ、そうだ・・・

 

さっきはありがとね、『 鍵守(カギモリ) 』

 

昨日の彼の名前は、『 鍵守 』。

 

 

 

まだ今日の名前を決めてないから/さっき助けてくれたのは『 君 』だったし

 

だからあえて、『 鍵守 』。

 

さっきは、ありがとう。

 

 

��へ/つづき
窓を消してお戻りください。