今日は病院に行ってきた。母さんに連れられて。

主治医と母さんの会話はつまらないからいつも聞いているようで聞いていない。

いつもどおり薬がいっぱい出た。

それだけだ。

 

 

 

                                          もぬけの空の午前中/もぬけの空の国語の時間

 

 

 

今日の受診は割りと早く終ったので午前のうちに学校に着けた。

下駄箱を抜けてすぐの雨具置き場に上着を置きに行くと果たしてそこにその男はいた。

『 今日の名前は? 』

ボクの思考が創った、真っ黒な彼だった。

まだその日の彼の名前を決めてなかったボクはちょっと悩んだ。

フックに上着をかけて、カバンを背負いなおして・・・

「 !!、 カプセル!! 」

ピンと来た。直感てものが来たらしい。これが来た時の、コンセントにプラグがカチッとキレイに納まったような感覚はすごく気持ちがいい。

その余韻に浸っていると、いつのまにかすぐ目の前に彼、カプセルがいた。

『 直感か。』

それは問いじゃなくて確認だった。だってカプセルの顔が笑ってる。

「 そお!! 」

ボクは上機嫌のまま、自分の教室に向かって走って行った。

笑った顔をそのままに、カプセルは解けるように消えた。

 

          ***

 

休みの多いボクだけど、友達がいないとかイジメとかは全く無い。

物の分別のがつく子達ばかりで正直助かっている。

「 おー、おはよー。」

「 来たんだ、今日も休みかと思っちゃった。」

「 あー・・・今日の給食のおかわりが減る・・・(泣)」

教室に入るとタイミングよく3時間目が始まるちょっと前ぐらいだった。いくら遅刻・早退の常連でも授業中に

出たり入ったりは気が引ける。今日はラッキーってとこだ。

おまえらなー、と軽くそれぞれをあしらって一番窓際の自分の席に着いた。

「 プリント、机の中にあるから。あと、これ。二時間目の算数のノート。」

「 ん、さんきゅ。」

隣の席の子。アダナは「コム」。名前は・・・なんて言ったかな。忘れたし、どうでもいい。

だって名前より「コム」のほうが広まってるんだし。

「 げー、次、国語かあ。」

「 暇だよね、寝そう。」

あふ、とコムが小さくあくびをした。

 

          ***

 

国語の時間。

本当に暇だった。

しかも今日は新しい単元に入ったからたまに音読させられる程度。

いつも以上に暇だった。

(「 カプセル、カプセル、居る? 」)

(『 ・・・なんだ。』)

はっとすると、隣に真っ黒なカプセルの姿。真っ黒な姿は、背後にそびえる晴天によく映えていた。

こんなときはカプセルと一緒に遊びに行ってしまうのに限る。「一緒に」というのは少し違うかもしれないけれど。

(『 どこに。』)

聞こえていたらしい。怪訝そうな目をこちらに向けている。

(「 君の背後で美しく輝く所に。」)

ふう、と溜め息をついて、ゆっくりとカプセルが後ろを振り仰いだ。

(『 ・・・空か。』)

初春の光が、ボクたちだけにまぶしかった。

 

 

そのあと、ボクは教科書を見ていたけど見ていなかった。

目に映るのは眼下の街並み―――それは今まさにカプセルが空から見ている光景だった。

時折、カプセルの体を雲がすりぬけて行く。ひんやりとした水蒸気の感覚でさえ、共有することは造作も無くて。

急降下のときに受ける風の爽快さといったら、もう、言いようが無かった。

 

 

                      

                                          もぬけの空の午前中/もぬけの空の国語の時間

 

 

 

・・・キー・・・ンコーンカー・・・ンコーン・・・

 

授業終了の合図と共に、先生は居なくなっていた。

「 あ〜・・・退屈だったねえ。」

ん〜・・・っと伸びをしてコムがぼやいた。

「 そうでもなかったよ。」

ボクの応えに、コムはえーッっと声を上げた。

 

 

�鬚�/つづき
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