もぬけの空の午前中。
一階の居間でテレビに見飽きたボク。
もぬけの空の午前中/誰もいないけど誰かいる
廊下に面してるふすまの曇りガラスの向こうにゆっくり滑るように移動していくものが視えた。
( 白い着物だ。三・四歳くらいか。おかっぱ頭だな。)
玄関付近まで来ると音も無く消えた。「すうっと」なんて効果音はいらないくらい音も無く消えてくれる。
残された気配が香のように空気の間を漂う。その香に耳を澄ますのがボクはたまらなく好きだ。
居間の隅に少し斜めに置かれたテレビ/その隣の隅に置かれた低い引き出し棚
それらの間でさっきから何かが行ったり来たりしている。
意識を向けると足が視えた。鳥みたいだ。
「 畳を駄目にしてくれるなよ。たまには飛べ。」
言うとバサバサと、―――音の大きさから察するに小鳥ではなさそうだ――― 羽ばたきが聞こえた。
テレビのすぐ目の前にいるボクの胡坐の中に緑色の羽根がひとつ、舞い落ちた。
顎を引いて視線を下に向ける。摘み上げたそれも先ほどと同じ。
音も無く、消えた。
その部屋のどこを見回しても、緑の羽根を持つ鳥はいなかった。
いや。
羽根を持つ、動物も造物もなかった。
もぬけの空の午前中/誰もいないけど誰かいる
「 ・・・それでも退屈なものは退屈なんだよなあ。」
くあ、と大きな口を開けてあくびをひとつ漏らすと、そのままの状態を器用に維持し、5つの錠剤と一つの粉薬を喉奥でゴクンと一飲みにした。
不味い、とつぶやいた。
つづき
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