「それで春は沈黙しちゃったんだってさ」
「してねぇよ」
不機嫌そうな、拗ねたような声。
振り向けばベッドの上で寝そべった彼女の恋人(?)が、頬杖をついてムスッとした顔で見ていた。
「だってそう書いてあるもん」
「その本にそう書いてあろうがなかろーが、してないもんはしてねぇの」
今度はハルヒの方がむつくれる。ぷうっと頬を膨らませて、不機嫌そうに。
「だって書いてあるんだもん」
そう言うとプイッと顔を背けてしまった。
彼が寝そべるベッドに腰掛けていた彼女の膝の上には彼女がさっきまで読んでいた本が座っていた。
彼は面白くもなさそうにそれを一瞥して認めると、
「あっ」
サッと彼女の手から本を引ったくり、空いた膝の上にドッカリと己の頭を座らせる。
件の本はポイッと放り投げられベッドの白いシーツの上に弾んだ。
「むーーーーっ、なにすんのよう、もうっ」
何がなんだか全然ワケがわかんないっと、どこか悔しそうにハルヒは足をバタつかせる。
「ででで、あーーー頭がガクガクする。揺すんな・・・ったく、ほれみろ、ドコが沈黙してんだよ」
「?」
彼の言ったこと、とくに最後の一言がよくわからず、足をバタつかせるのもやめて、今は自分の膝上の男の顔を見る。
「『ハル』は沈黙なんかしてないだろ?」
手が伸びてきて、落ちているハルヒの前髪で遊ぶ。ハルヒの耳にはサラサラと髪の唱が聞こえていた。
してやったりと、ケタケタと笑う男が憎い。
「──・・・っちがうもん!本に書いてある『春』のことだもんっ!!」
悔しそうに、なおも言い募るのだった。
***
夜。
寝る前に薬を飲む少女。
日に日に飲む薬の量は増やされている。
それだけ日に日に病は進行しているということか。
「やっぱり『春』も『ハル』も沈黙しちゃうよ」
今じゃないにしても。
コップいっぱいに注がれた水を、一気にグイと飲み干した。
***
翌日。
その日もハルヒのところを訪れていた男。
ハルヒが部屋を出ている隙にベッドサイドの小棚の引き出しをサッと開けた。
錠剤、粉薬が引き出しの中を溢れんばかりに埋めていた。
「・・・・ほんとに沈黙する気じゃねぇだろうな、ハル・・・・・」
それは近いのか遠いのか。
ぱたぱたと近づいてきた足音に、すばやく引き出しを元に戻した。
***
そして春は沈黙する。
END
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ちょっとは仲が進展したのか?!(笑)リパーにハルヒのことを『ハル』と呼ばせてみたかっただけですスミマセン^^;
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