記憶のカケラ〜5〜

 

 

 

 誰を探しているんですか?

 

 *******

 

 相変わらず、俺はあいつを避けたまま。

 

 *******

 

 相変わらず、あいつは俺を避けたまま。

 

 *******

 

 仮眠室。

 最近、何故か近寄りづらかったそこに足を踏み入れてみれば。

 そこには計ったように、グレグズンがいた。

 

「…よぉ」

 

「…ああ」

 

 沈黙。

 

「休みに来たのか?」

「あ、ああ」

「そんじゃ、俺はもう行くわ」

 

 ゆっくりどーぞ、の言葉と共に横をすり抜けようとするグレグズンの腕を思わず。

 

 掴んでいた。

 

「?――レストレイド?」

 

 不思議そうな顔で振り返るグレグズン。

 

「あ――、え…いや」

 

 自分で自分のした行動に、なんて理由をつけていいのか分からなくなる。

 

 どうして引き止めたといわれれば。

 

 聞きたくて。

 

 それは俺の首を突っ込む領分じゃないのに。

 聞きたい。

 聞きたくない?

 

 聞きたい。

 

 それと伴うような、胸の痛みに似た感覚。

 

「だ――れと」

 

 ああ、こんなことを聞く自分が嫌になるのに。

 

「…誰と、間違えたんだ?」

 

 グレグズンが僅かに息を呑むような声。

 

「……聞きたい?」

 

 悲しげに歪んだグレグズンの目に、後悔しそうになるが。だけれど、否定の言葉を先にするより先に。

 掴んでいた腕を逆に掴まれて。

 そのまま、腕の中に引込まれた。

 

「ぐれ…ぐずん…?」

 

「……お前」

 

「え?」

 

 耳元で言うのは、グレグズンの声。

 

「お前」

 

「…お、れ?」

 

「お前のこと、ずっと探してた」

 

 俺のこと?

 どうしてグレグズンが?

 

「ごめんな。混乱するだろ?」

 

 そんな声で言うな。

 どうして。

 

「大丈夫だ。何も言わないから」

 

 どうしてそんな声で言うんだ。

 

「――――サヨナラ――――」

 

 言葉と共に体を包んでいた腕が離れていく感覚。

 

 一瞬重なった視線の先、ライトグリーンの目が酷く悲しそうで。

 

「ぐれぐず―――…」

 

 声をかけるよりも先に、頭の奥に鋭い痛み。

 

「ッ……」

 

 頭を押さえて、蹲る。

 

「…ッ、った…」

 

「レストレイド?どうした」

 

 グレグズンの声が聞こえる。

 激しい頭痛。

 だけれど、それよりもグレグズンの顔が見たくて。

 

 顔を上げた先で、ぼやけたライトグリーンの目。

 

「……る…なッ」

 

 泣きたいのに、泣けない子供みたいな顔で。

 

「…んな…めッ」

 

 そんな顔、するな。

 

 言いたかったのに、それよりも先に。意識が溶けるように消えた。

 

 

 つづく⇒NEXT