記憶のカケラ〜6〜
かえっておいで。
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『レストレイド』
名前を呼んでくれる声。
『好きだ』
ライトグリーンの瞳。
『――――サヨナラ――――』
記憶が、流れ込んでくる。
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倒れたレストレイドを見て、血の気が引いた気がした。
ここまで俺が焦っているなんて久しぶりだと、頭の隅で感じながら。
そのままレストレイドを病院に担ぎ込む。
担当医が『大丈夫です、ただの疲労とストレスによる貧血のようなものです』の言葉と共に去って行ったのを見て安心すぎて力が抜けた。
ベッドの傍らに座ってやれやれと溜め息を付いて、久しぶりにレストレイドの寝顔を拝みながらその青灰色の髪を撫でた。
『疲労とストレス』。
どうやら、考えるほどのこともなくストレスというのは俺だろう。
そりゃそうだ。
いきなり、あんなこと言われれば誰だって少しぐらいは混乱する。
なのに、言ってしまった自分の愚かさに正直苦笑しか漏れない。
「…悪かったな、レストレイド」
歯止めが利かない自分が忌々しい。思っているなんて、失くす前に手放そうだなんて。
出来るはずもないのに、そう高を括って。その結果がこれだなんて情けない限りだ。
「…悪い」
謝りながら、まだ顔色の悪いレストレイドの頬に指を滑らせた。
「……ッ………」
青灰色の瞳が、ぼんやりと目を醒ます。
それが俺を捕らえるまで、しばし待つ。
「ぐれ…ずん……?」
「大丈夫か?」
いつも通りに、いつもの声音でいつもの目で。そう聞いた。
「…あ…」
何を思ったか起き上がるレストレイドを、押し留めて言う。
「こら、待て。具合まだ悪いだろ。医者呼んでくるから、寝てろ」
そう言って立ち上がろうとする俺のスーツの裾を掴んで、レストレイドが慌てて起き上が――ろうとした。
「…ッ…」
クラリとしたのか、そのままベッドからずり落ちそうになるレストレイドの体をベッドの上に引き戻して、
尚も裾を掴んだままのレストレイドに諭すように言う。
「ほら、まだ駄目だろう。大丈夫だ、すぐに戻ってくる――」
「ぃゃだ…ッ」
「ん?」
「ゃだ…」
見れば、泣きそうな顔で裾を掴んだままのレストレイドがいる。
まさか、今度は医者が怖いとか言い出すような年齢まで記憶が逆行したのかと少々焦った。
「レストレイド?」
「…っめ…」
「…レストレイド?」
青灰色の目から、ぽろぽろと透明な雫があふれ出している。
「おい…、どうした?」
「ごめ…っ、俺……わ…てた…ッ」
「レストレイド?」
泣き出したレストレイドの涙を拭いて顔を覗き込む。
「…レストレイド?」
「ごめ…んッ……、忘れて…」
ごめん、忘れてた。
言いながら泣きじゃくるレストレイドに、息を呑んだ。
「…思い、出したか?」
大袈裟なくらいに首を縦に振って、泣くレストレイドを思わずそのまま腕の中に抱き込んだ。
「……良かった…」
「ごめん…ッ…」
「いいよ」
泣きながら何度も謝るレストレイドの涙を唇で受け止めて。
「……お帰り、レストレイド」
抱きしめてそう囁いた。
戻ってきてくれたことに、腕の中の温もりに。
深い安堵が広がる。
「お帰り」
もう一度言ったその言葉に、レストレイドの腕が背中に回って告げた。
「―――ただいま」
END
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名無しさんからまたも頂いてしまいましたーーーっ
王道記憶喪失ネターーーっ!!!!
3、4話あたりが一番好きかなー♪
今回はレスでしたが、グレの場合は忘れてても大差無さそうですね(笑)
感覚が覚えてるーみたいな感じで体の記憶を頼りに思い出しそうです、グレさんだったら。
名無しさん、どうもありがとうございましたーーーっ!!!!
06.08.20.from ;通りすがりの名無し人さん