記憶のカケラ〜4〜

 

 

 

 足りない、何かが欠けたまま。

 

 *******

 

 最近のヤード事情。

 

 何故かレストレイドが物凄く俺を避けます。

 

 ――以上。

 

 *******

 

 何をやっているんだ、俺は。

 自分の行動を振り返って、思わずそう呟く。

 

 無意識的か、自覚的か。とにかくグレグズンを避けまくっている自分がいる。

 

 …頭痛がしてきた。

 

「何をやっているんだ、俺は…」

 

 もう一度そう呟く。

 

 ただ、あの日の。

 

 奴の目が。

 

 心に引っ掛かって仕方が無いという。

 

 ただそれだけの理由――。

 

 溜め息を吐きながら、窓に寄りかかった。

 

 *******

 

 俺なんかしたかねぇ?

 いや、今回は本当に何にもしてないんだけど。

 

 いつか前にも似たような状況があったなーと、ぼんやりと思いながら。レストレイドを探して歩く。

 

 気になる云々よりも、今のレストレイドの状態は必ずしも良好ではない。むしろ一年分の記憶が抜け落ちてる分、不安定なのだ。

 

 どこか、ここか。

 不安げな顔をして、立ち止まっているレストレイドの顔を見たりするものだから。

 構いたくなる。

 

 ああ、いた。

 

 相変わらず窓辺に寄りかかっている後姿に、声をかける。

 

「レストレイド」

 

 *******

 

 声をかけられて振り返るとそこにはグレグズンが立っていた。

「…なにかようか?」

「いや、用はないけど?」

 へらりとした顔を見せて、グレグズンが俺に言う。

 

「なぁ」

 

「なんだ?」

 

「…俺、お前になんかした?」

 

 その問いかけに、思わず体が強張る。

 

 いや、グレグズンは何もしていない。

 何もしてない。

 ただ。

 ただ、俺が。

 

「…いや」

 

 たっぷりと沈黙をとってそんな言葉を吐き出せば、ふぅんと気の無い調子でグレグズンが頷く。

 

「この間…、来たでしょ。仮眠室」

 

 気…づいてたのか。

 

「俺、寝ぼけてて覚えてないんだけど」

 

 ――なんかした?

 

 どう答えればいい?なんて聞けばいい?

 俺を誰と間違えた?

 聞けるか。

 大体、どうして俺がそんなことを聞かなければならない?どうしてそんなこと。

 どうして?

 

「…お前は」

 

 短く聞いた。

 

「お前は、誰か探してるのか?」

 

 その言葉に、グレグズンが僅かに瞠目した。

 そして、何かを言いよどむようにして頷いた。

 

「…まぁ、ね」

 

「そうか」

 

「…なんで聞くの?」

 

「…この間」

 

 この、間。

 想い出す手の指に触れた唇の感触。

 ライトグリーンの目。

 

「俺と、誰かを間違えてたぞ」

 

「………そうか」

 

「ああ」

 

 何故だが、心苦しい。違う、何故か。

 

 泣きたい。

 

 何を考えてるんだ、俺は。何をしたいんだ、俺は。

 

「なぁ」

 

 グレグズンが聞く。

 

「…なんだ?」

 

「なんて言ってた?俺」

 

「………『探した』」

 

「ん?」

 

「『探したぞ、お前どこ行ってた』」

 

 グレグズンのライトグリーンの目が細められて、俺を見る。

 

「『お帰り』」

 

 最後の言葉を口に乗せると、不自然なまでの沈黙と共に。

 

「――そう、言ってた」

 

「……そっか」

 

「それじゃあ、俺は行く」

 

 今のこの空間が、なぜか居た堪れない。

 その場から逃げ出すように歩き去った。

 

 *******

 

「――『お帰り』…か」

 

 諦めようと、押し込んだのに。

 なのに、結局は求めたまま。

 

「…駄目だね、俺も」

 

 自嘲に塗れた言葉を吐き出して、グレグズンもその場を後にした。

 

 

 つづく⇒NEXT