記憶のカケラ〜3〜

 

 

 

 大事だからなくす前に手放そうと思う。

 

 *******

 

『いいのか?』

 これは友人に言われたセリフ。

 何か言いたげなポプキンズとピーターの顔。

 

 大事だよ。

 でも大事だから。

 この手から離れる前に手放すよりも先に。

 忘れたのならばそのまま。

 手放すこともなく離れることもなく。

 このままでいるのも良くないか?

 ああ、だけど。

 夢に見るくらいは。

 少しだけ。

 許してくれないだろうか?

 

  *******

 

 仮眠室に顔を覗かせると、グレグズンが毛布もかけずにベッドで眠り込んでいた。

 何をやっているんだ、この男は。

 せめて毛布でもなんでもかけて寝ろ。

 

 思いながらなぜか、そのグレグズンに違和感を覚える自分に行き当たる。

 

 全く、なんなんだ。

 

 目覚めた時の周りの反応といい。

 目覚めた直後のグレグズンの反応といい。

 

 なぜか違和感を覚える周りの視線。

 

 だけれど、全く変わっていないグレグズン。

 

 それに酷く苛立ちを覚える。

 

 落ち着かない。

 そんな気になるが。

 

 一年間の記憶が無い自分。

 一体何を忘れてる?

 一体何が欠けている?

 欠け落ちたその気持ちがなくなることはなくて。思わず一つ溜め息を付きながら。

 

 仕方なくグレグズンに手を伸ばし、毛布をかけた。

 

 と。

 

 ぐい、と腕が掴まれて。

 

「!?」

 

 起きていたのかと思って、グレグズンの顔を見ると。ライトグリーンの瞳は、どこか寝ぼけたように曇っていって。

 

「…グレグズン?」

 

「――――探した…」

 

 掠れた声でグレグズンが言う。

 レストレイドの腕を掴んだまま。

 

「…探したぞ、お前…どこ行ってた………」

 

 愛しげにライトグリーンの瞳が細められて。

 見たことのないその色に、視線が釘付けになる。

 

 優しく歪んだ口元に、掴まれた手が触れた。

 

「お帰り―――…」

 

 囁くような声音でそう言ったグレグズンに、カッと血の気が顔に上がるのが分かった。

 

 違和感。混乱。

 

 誰だ、これは。

 

 俺はこんな瞳の奴、こんな表情をして笑う奴を――。

 

 

 

 知らない。

 

 

 

 我に返る。

 思わず掴まれた手を振りほどいて。

 そのまま後ろも見ずに走り出す。

 

 何かが痛い。

 

 *******

 

「…?…」

 

 目を醒ますとかけた覚えの無い毛布が掛かっていた。

 そして手に何かを掴んでいた感触と。

 

 嗅ぎなれた葉巻の匂い。

 

「――レストレイド?」

 

 訝しげに名前を呼んでも答える声は無かった。

 

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