まだ魂になんてなれない

なりたくない

 

何度も自分の胸に突き刺さる白銀の閃光を見とめながら

そう、思った。

 

 

 

残り香のソネット・��

 〜バーネット・ベシュー探偵社〜

 

 

 

───ゴン!!

「あ、悪い。落とした」

ワザとだ・・・・絶対にワザとだ・・・・・

上から降ってきた本の直撃を喰らい(しかもハードカバーの角★)、

一瞬悶絶したベシューは両手で頭を擦りながら涙目で恨めしそうに上を見遣った。

脚立に座り、クスクスと意地悪く笑いながらこちらを見下ろす男。

「君がいけないんだよ?この悪戯盛りのバーネットの足元で無謀にもくつろぐなんてね」

もう一冊落とそうか?手にしていた本(これまたハードカバー★)をベシューの遥か頭上にかざす。

こちらも涙目になっているが、その理由は全く違う。

「・・・・結構デス;」

つつつ、とベシューが脚立から遠ざかる・・・・間も無く第二撃がベシューの頭を直撃した。

「〜〜〜〜〜ッッ!!!!」

「あっはははははは!!!ははははははは!!!」

先に受けたところに追撃を喰らって今度こそ悶絶するベシューの上に、

無情にもこれでもかというほどに楽しげな笑い声が降り注いだ。

その笑い方は可笑しくて可笑しくて、笑いを堪えきれなくなって気が違ったように笑う子どものようだった。

 

笑い声の主はジム=バーネット。警察が手こずる難事件を嗅ぎつけては名推理で解決する私立探偵である。

そしてその名探偵の心無き悪戯によって悶絶してしまった男はテオドール=ベシューと言う。

元・パリ警視庁のベテラン刑事で、現職の頃からどうにも解決できない難事件を

バーネットに相談し共に行動していた仲で、付き合いはけっこう長い。

いまは刑事を辞めて(正確には辞めさせられて★)そのバーネットの探偵稼業に相棒として付き合っている。

・・・・泣く泣く。

 

 

『バーネット・ベシュー探偵社  調査料無料』

事務所の玄関にはこんな看板が掲げてある。

もちろん、本当に依頼主から調査料は取らないし、成功したときの報酬もこの探偵社はいっさい貰わない。

が、事件を取り扱うたびにバーネットはしっかりと臨時収入・・・・

事件の犯人などから、きっと何かをちょろまかして、大もうけをしているのだった。

刑事の頃からそれを知り、しかし探偵としての推理力には敬服しているので、

事件解決の為にバーネットに協力を頼んできたベシューにとっては、今も昔も頭の痛い話である。

「報酬は二人で等分」と言われたとおり、バーネットはきちんと自分にもその臨時収入をくれるが、

この事務所のバーネットの住居スペースに居候させてもらっているので(拉致られたとも言う★)

正直、それほど金も必要ないので実際ベシューは

等分された金を受け取らないか、もしくは雀の餌程度にしか受け取らないことがほとんどだ。

そんなとき、必ずバーネットは残念そうな、すまなさそうな。そんな複雑な顔をしてベシューを見つめる。

あれはなんだろう

気になってはいるが、いまだに聞けずじまいのベシューなのだった。

 

「ベシュー?大丈夫か?悪いところに当たったのか?」

いつのまにか脚立から降りて来たバーネットがひょい、と顔を覗き込んできた。

ちょっとここに至るまでの過程を回想していたのだが、もしかしたら走馬燈だったのかも。

本気でそう思っていると

「ベシュー?」

眉をひそめてバーネットがちょっと心配そうな顔になる。そっと頭を撫でられた。

「ん・・・・っああ、ちょっと痛かっただけ・・・・」

ずっと俯いたままだったのに気がついて、慌てて顔を上げる。

「ならいいんだが・・・・何か気になる記事でもあったか?」

ここは事務所の書庫室。

依頼も無く、久しい小春日和のなか二人で本の整理をしたり、読みあさったりしていた。

自分も最初は本を読んだりしていたのだが、先ほどから今日の新聞を読んでいた。

「ん、ああ・・・この殺人事件が、ちょっと・・・・」

言って指差した記事に、ああ、とバーネットも納得した。

そしてとても残念そうで、それは自分も一緒だった。

「作家・ルブラン氏とその担当者の殺害事件か。・・・・惜しいことだね」

「好きだったんだけどなあ、この人の作品」

「僕もだよ。『風の詩≪うた≫』シリーズだね。これだよ」

さっき自分を悶絶させたハードカバー本2冊をバーネットが拾い上げる。

「二巻まで出てるんだよな。いいよな、独特の雰囲気が」

受け取った一冊のページをペラペラとめくる。

「静かに唱うような文章で・・・・装丁も綺麗だしな」

モーリス=ルブランは最近『風の詩』シリーズという本を出してベストセラーになった作家だった。

淡々としつつもどこか穏やかな、唱うような文章を書く人で、シリーズの続き共々これからが期待されていたのだが。

「深夜、帰宅途中に暴漢により刺殺、か・・・・」

「続き、読みたかったなあ」

もうすぐ出る予定だったのにな、と呟くとバーネットもそうだなと苦笑して

「犯人がその場で取り押さえられてすぐに捕まったから良かった・・・とは言いがたいものな」

それから二人で黙った。

二人ともどこかやるせなさでいっぱいだった。

 

リローン♪

玄関で呼び鈴が鳴る音が聞こえた。

素早くバーネットが立ち上がり、事務所の部屋へと向かった。

自分もその後に続いた。

事務机の前に立つとバーネットが言った。

「どうぞ」

入ってきたのは少し太り気味の、しかし優しそうな老紳士だった。

「失礼します・・・・・・・

 あの、こちらの探偵がとても実績のある、素晴らしい名探偵とお聞きしまして・・・・お力をお借りしたいと」

「私がバーネットです。こちらはベシューと言って元・パリ警視庁勤務のベテラン刑事で私の相棒です」

無理矢理辞めさせられたあげくに拉致られてそうなったんです。

喉まで出かかった言葉をグッと堪えて、老紳士に軽く会釈した。

「どちらの名もよくお聞きします。とても心強い・・・・」

「それで、本日はどのようなご用件で」

感嘆の溜め息を漏らした老紳士をバーネットが促すと、紳士は困惑の表情を浮かべながら話し出した。

「私はある出版社の編集長をしている者なのですが、先日、専属の作家とその担当者が、その、殺されまして・・・・」

そこでバーネットと自分は顔を見合わせた。

「それは、ルブラン氏の事件のことですか?」

バーネットが尋ねると、老紳士はそうです、そうです、と繰り返した。

「あの事件は犯人が捕まったのでは?」

それとも新たな真犯人でも?

自分がそう尋ねたが、紳士はかぶりを振り、

「違います、違うんです・・・・探してほしいのは犯人ではなくて・・・・」

話が見えてこない。

バーネットも眉を寄せたまま、じっと先の言葉を待っていた。

 

「殺された張本人、“モーリス=ルブラン”です」

 

意味が分からず、バーネットと二人、困惑した表情で顔を見合わせた。

 

 

 

NEXT

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さあてやっちまいました!バーネット&ベシューコンビがでびゅーです!!ルパンものでは正式連載初かな?
しかし初っ端からやってくれますよこの二人(笑)ハードカバーの角はキツイだろバーネット!!(爆笑)
しかもルブランいきなり死んでるし★あ、これはパラレル設定として読んで頂ければ。バーネット(ルパン)とモーリスは面識無しです★
てゆーか、他連載片付けてから連載に移れや自分★うっわー同時進行かよー徹夜したんなら人魚の�犬任眤任討筺璽曠鵐泙法次頁�)
とゆーわけでこちらもお付き合いくださいっっ(>_<)よろしくっっ☆

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