「なんか・・・今回の依頼って」
「怖いか?」
おどけたような口調は完全に揶揄だ。
「違う!変だって言おうとしたんだ!!」
ムッとして声を上げたが逆に肯定したようになってしまった。
ケラケラと声高に笑い出したバーネットに、ベシューは居心地悪く首をすくめる。
「まあそうだね。おかしな事件だ」
突然笑い止んだ彼は頬杖をつくと、ふっと遠くを見るような目つきになってそう言った。
「殺されたモーリス=ルブランを捜して欲しい」
依頼人の口からはそんな不可解な言葉が出た。
いや・・・これが殺されて遺棄された死体を捜して欲しいというのなら話は別だが。
「?ルブラン氏の遺体は現場で収容されたのでは?」
刺殺された現場ですぐさま犯人も取り押さえられ、事件自体としてはもうそれで解決しているはずだ。
さっきまで新聞を読んでいて事件記事の内容を鮮明に覚えていたベシューは老紳士に尋ねた。
「はい、そうです・・・確かに遺体は収容されました。しかし・・・・」
老紳士の次なる発言は、さらに不可解だった。
「遺体が、消えてしまったのです」
「遺体が消えた・・・・?」
「安置所から、ですか?」
バーネットの問いに紳士がはい、と答える。
「警察の話によると確かに遺体は安置所に運ばれているんです。
で、部下も亡くなっているので確認に呼ばれた私が駆けつけたときにはもう」
「ルブラン氏の遺体はなかった、と」
結局、この編集長である紳士が遺体確認に
訪れた際に警察も遺体がなくなっていることに気がついたということらしい。
そうだろう、死体は自分で逃げ出したりしないから見張る必要も無いだろうし。
事実、遺体収容から紳士が連絡を受けて駆けつける数時間の間に遺体は消えてしまったわけだけれど。
だが犯人も捕り、事件の被害者である遺体が消えてしまう理由が何処にも見当たらない。
「遺体の取り違えは?」
「それも、無いようです。そもそもその日の夜の遺体は彼らだけだったそうで・・・」
バーネットの何かの間違いではないのかと投げかける問いも現実、事実として消されていく。
遺体はほんとうに消えてしまったのだ。
老紳士としては、ただでさえ担当編集者も亡くなっていて、
世間が騒いでいるのにこれ以上大事にはしたくなく、ここに頼みに来たとのことだった。
「わかりました、お受けいたしましょう」
バーネットはそう言うと老いた編集長の手を握って応えた。
「て、ゆうかさ」
ベシューが胸のうちにある疑問を口にする。
「どうして編集長が依頼に来るんだ?」
座っていたベシューはバーネットを振り返ると、ソファーの背もたれに顎を載せて首をかしげた。
「亡くなったルブラン氏って、家族はいなかったのか?」
身寄りが無くて代わりに、ということでの依頼なら解かるのだけれど。
しかしファイルを開いていたバーネットがそれを否定する。
「いや・・・姉と妹がいるようだよ。今回のことでずいぶん塞ぎ込んでいるようだが」
「相変わらず情報が早いんだな。
でもじゃあ、その塞ぎ込んだ姉妹の代わりに来たってことなのかな」
でも、なんかおかしいような気がする。
「塞ぎ込んで出てこられないのなら、僕らを呼びつけることだって出来るよね」
依頼人に呼び出されるのは珍しくもないし、こちらにしてみれば向こうはお客なんだから遠慮することもないはずだ。
兄弟が殺された気持ちを考えれば尚更。
殺された作家とその担当編集者
消えた作家の遺体
その遺体を捜すよう依頼に来た編集長
兄弟が殺されたというのに動かない実の姉妹
繋がりはある、けど、何かおかしい。
動くべきところが動いてなくて、動かなくてもいいところ動いてるような気がする。
「・・・なんか頭こんがらがってきちゃったな・・・」
「考えすぎてショートするなよベシュー・・・・」
ソファーの背もたれにずるずると顔を埋めて
いまにも頭から煙を出しそうなベシューをバーネットが手招きをして制す。
「考えるのは僕、動くのは君の領分。そう決まってるだろう?」
さ、行くぞ。
立ち上がりざまにバーネットが擦り切れ気味のジャケットを羽織る。
「・・・・・でもけっきょくお前も動く側に回ってくるくせに」
ムスッとむくれた表情でソファーから立ち上がると、ベシューもバーネットに従った。
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ずいぶん間が空きました・・・・
大丈夫です、途中成仏なんてことにはなりません(汗)
一応話の方は悶々考えてるんですが、考えてもまとまらないことに気づき(オイ;)
連載再開した方がマシじゃーという結論に至りました☆
これも冒頭部分を打ってそれっきり放置プレイしてました・・・・
放置プレイ・・・ベシューを泣かせちゃいけません☆(何?!)
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