僕ら、世界を騙して愛し合う。(明智20)
「二十面相が逃げ出した?」
受話器を耳に当てた明智がこちらをちらりと見る。
警視庁からの電話を受けて電話口に佇み話す明智の様子を私はじっと見つめていたが、
彼の視線を受けてソファから立ち上がり彼に近づく。
「替え玉と摩り替わっていたのですね?いつ替わったのかは判らないのですね。・・・・そうですか、はい」
近づいていくと受話器から漏れる声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声であるからして、電話の相手は中村警部だろう。
明智が空いている片手を広げて差し出してきたので、その腕の中にすっぽり納まる。
明智は片手に受話器、もう片方の腕の中には私という形で構わず電話を続けている。
時折、気まぐれに髪に触れてくる手が心地よい。
「わかりました。・・・ええ、では」
チン、と音を立てて電話が切れる。
「バレたみたいだね」
「遅すぎるくらいだがな」
受話器を置いた手が腰に回される。
これで完全に明智の腕の中に閉じ込められることとなった。
まさか中村警部も脱獄した二十面相が探偵の腕の中で自身の脱獄の報せを聞いていようとは夢にも思うまい。
「捕らえたその日のうちにお前は逃げ出してきていたのにな」
「・・・別に僕はいつ出てきたって良かったんだよ。だけどごろーちゃんが」
「事件が落着したんだ。長居する理由も無いだろう」
「いや。僕、犯罪者だから」
そう。私はいつ脱獄したって良かったのだ。
事件の中途だったらすぐ逃げ出していただろうが。
私が起こした事件はいつもどおり明智にすべて見通されて、私が捕まり事なきを得た。
だから、一息もかねて少し独房でゆっくりしていたって構わなかったのだが。
「事件の最中はお前に触れられないからな。今回もお前が長引かせるから。禁断症状が出るところだったぞ」
自分を抱く腕に少し力が込められる。
髪に顔を埋められる。その感触がくすぐったい。
「事件中はちょくちょく会ってるじゃないか・・・それに、僕は明智と事件で対峙するのも楽しいから好きなんだけど」
ふうと溜息を吐く。そう言う自分だって、明智の肩に顔を埋めているのだが。
明智の身体から漂う独特の香り。
エジプト煙草の匂い。
「会ってたって、お前が変装してると判り難いし判らない。だいたい、こうやって抱きしめられない」
「まあそれはそうなんだけど」
「脱獄はバレたが、次の仕事はまだ先でいいだろう?」
額に柔らかな感触。
思わずキュ、と目を閉じる。
「脱獄した怪人が探偵の家に帰ってきてるなんて、中村警部が知ったら腰を抜かすだろうね」
「中村君どころか世間が、だろう。だが、彼らは逆転の発想が出来ないからな」
「・・・明智の方が犯罪者に向いてそうなんだけど」
「探偵なんてそんなものだ。それに僕は始めから言っている。犯人は捕まろうが逃げようが構わない、と」
込み上げる嬉しさを押し殺して僕は呆れ顔を見せる。
「もし、バレたら?」
「そうだな」
不安そうに見せかけて、実は期待している彼の答え。
「二人で逃げる」
期待通りの答えとともに彼の両手に頬を包み込まれ、甘美な感触が唇に落ちた。
もしそうなったら僕らの居場所なんて世界中の何処にも無いことは周知の事実。
それでも愛し合わずに居られない僕らは、世界を騙して愛し合う。
END
明智20同棲ネタ。
たぶん同棲する上でのルールのひとつとして、事件上で対峙することになった場合は
事件中は事件以外では会わないっていうのがあると思う。
主に明智邸に20が同棲してる形なので、20が明智邸に帰らなくなるって感じかな。
そりゃ明智、禁断症状も出るわ(笑)
でも20は20で明智の居ない間にこっそり帰ってきて、
空っぽの明智のベッドに勝手に潜り込んで明智を補充してるといいよ。
ブラウザバックプリーズ!
08.11.21.TOWEL・M