さあ、もう一度シャワーを浴びなくちゃ。(現代Ver.ハルヒ)
「おかえり」
慈しむようにそう言って、あたしは受話器を置いた。
あたしのジャックが帰ってくる。
そう思っただけでも心が弾んだ。
いつもの彼の帰りとは違う。だって、帰ってくるのはジャックなのだ。
その名を聞けば今でも世界が恋して止まない、切り裂きと謳われたあの男が帰ってくるのだ。
べつにごく普通に生活している彼が厭だったわけでもない。
それはそれで当時の妙にマジメで真っ当なところとマッチしていたし、当時あたしが愛していた彼の一部分でもあったから。
ごく普通に一緒に生活をし、ごく普通に仕事をし、ごく普通に戯れる。
そんな平均的な生活も日常にも、不満は無い。満足していた。
でも、それでもやはり別なのだ。
真っ当な彼と、血に溺れる彼と。
どちらか片方でも成り立たない。
その両性質を併せ持った男こそ、あたしの、ハルヒの愛した男だった。
「どちらのコールズも変わらない。どっちも本当のコールズだもの。
ああでもこんなに嬉しいのは何故かしら。ああそうだわ、だからこんなに嬉しいんだわ」
やっとどちらのコールズも帰ってきたから。
気分が良かった。
このままの気分のまま、気持ちよくシャワーを浴びたいと思った。
服を脱ぎ捨てると、浴室へと飛び込んだ。
逸る気持ちをそのままに、シャワーのコックをひねる。
すがすがしい、真夏の雨のようだった。
ピーチタイルに水がしみこんでいく。
「なんだか血を浴びてる気分」
浴びたこと無いのにね。ひとりごちる。
こんなに気持ち良いのに、誰かに聞かれたら頭がおかしいと思われそう。
いやでも肌に当たって弾けるそれを受け止めていると、なんだかそんな気分になってくるのだ。
血は血でも鮮血を浴びてる気分。
そんじょそこらの殺人犯の生半可な腕では見れない。
鮮やかなまでの紅。
「コールズが浴びる血もこんな感じだったのかしら」
キュ、とコックを閉める。
ろくに体を拭きもせず浴室を出た。
びしょびしょのまま、居間のソファにダイブする。
構うものか、いい気分なのだもの。
濡れた手でリモコンを持ちテレビを点ける。
「・・・前言撤回、コールズの浴びる血も、こんな感じ な の か し ら ?」
テレビは今や何処のチャンネルにしても同じ臨時ニュースをやっていた。
とある会社での白昼堂々の全社員刺殺事件を報じていた。
生存者数は未だ不明。きっと誰も生き残らないだろうな、殺ったのは彼だもの。
「全社員はおおげさでしょ。その場に居た全社員って言えばいーのに」
誤解招くわーこれだからメディアは。
ころんとソファに仰向けに転がり、テレビを見ているとガチャリと戸が開く音がして渦中の彼が帰ってきた。
「あ、おかえりー」
「なんつーカッコしてんだ・・・つーか、ああッ!!ソファびしょびしょ!!」
「だって気持ちよかったんだもん」
「理由になってねぇし!」
「そんなことよりさ、」
せっかくアンタも帰ってきたことだし。
さあ、ふたりでもう一度。
シャワーを浴びなくちゃ。
END
『水アカ。』のハルヒside。
ハルヒってリパの殺人をどう思ってるのかとかリパ自身をホントに愛してんのかとか考えてくと
ワケわかんなくなります。むずかしいよハルヒ。
自由に生きてるけど、日本人がよく勘違いする自由の意味を、彼女は取り違えてはいないと思う。
でも最後の部分でいつもどおりのリパハル問答をできたのでちょっとスッキリ(笑)
ブラウザバックプリーズ!
07.07.10.TOWEL・M
自由とは在るものではなく探すもの。自由とは、不自由の中に居るからこそ自由なのだということ。