魔笛 (ヤード・ブラッド語り)

 

 スコットランドヤードには癖のある警部が何人かいるけれど、その中でも一際異彩を放っているのはやっぱりアルさん。

 アルセニー・ジョーンズ警部その人だろう。 

 外見の得体の知れない雰囲気どおり、得体の知れない面が結構ある。

 

 ひとつに。

 非常時に使う呼子があるでしょ、何かあったとき皆に知らせて呼び寄せる為の。

 ヤード内ではアルさんの吹く呼子は『魔笛』って呼ばれてる。

 アルさんはグレさんに魔王ってあだ名で呼ばれてるし、それはヤード内で結構広く精通されてるからそれでかなって思ってたんだけど。

 話を聞くと、どうも違うらしい。

 

 何でも、アルさんが犯人を見つけたりして呼子を吹くと、かなり高い確率で犯人が死に至るらしい。

 

 以前、白昼堂々人を刺して逃げようとした男をアルさんが見つけて呼子を吹いた瞬間、

 その男は横からすごいスピードで走ってきた馬車に吹っ飛ばされてそれからぴくりともしなくなった。

 脱獄した男を見つけたときも、そのときは逃がしちゃったんだけど、呼子を吹いたのはアルさんだった。

 そしたらやっぱり、次の日脱獄した男はテムズ川にぷかりと浮いていた。

 嫉妬と妄執に駆られて暴れていた女は、アルさんの呼子の音を聞いた途端手に持っていた包丁で自分の首をぶすりと刺してしまった。

 

 そんなことが決まってアルさんが呼子を吹いたときに起こるもんだから、ヤード内ではアルさんが吹く呼子を『魔笛』って言うようになったらしい。

 

 ボクがそれについて知らなかったのは、最近アルさんが呼子を吹くことがないからなんだよね。

 よくある都市伝説的なものかとも思うけど。

 

 やっぱりホントなのかな?

 

 

 それともうひとつ。

 『黒い馬』の話。郊外での、ある事件を追ってたときのことらしいけど。

 調べていくうちに犯人も分かってさあ逮捕しようというときに、犯人が悪あがきをして逃げ出しちゃったんだ。

 けっこう裕福な家だったんだろうね、その家の馬車に乗って犯人は逃走したんだ。

 その場に、アルさんが居たんだ。アルさんは犯人が逃げたのに気づいて外に飛び出した。

 それと同時にその家の厩から、一頭の黒い立派な馬が飛び出してきた。

 アルさんはそれが当然とでも言うようにその馬に飛び乗って、犯人を追いかけたんだ。

 

 犯人が乗って逃げた馬車は二頭馬車で、かなり速かったらしいけどアルさんの乗った黒馬には敵わなかったらしい。

 あっという間にアルさんの乗った黒馬は犯人の乗る馬車に追いついて、犯人は御用となった。

 アルさんが帰ってきて、皆で犯人に手錠をかけたりしてふと気づくとさっきまでそこに居た黒い馬が見当たらない。

 アルさんに聞いても知らないと言う。

 で、他の刑事が家の人に聞いたら家の人は驚いた様子で

 

「家には黒い馬なんて居ません。あの馬車の二頭のほかには老いた馬が一頭居るばかりです」

 

 って言う。

 それで厩にも行ったけれどやっぱり家人の言うとおり、そこには老いた馬が居るばかりだったって。

 周りには他に家もなく、他の馬が迷い込んでくるなんて考えにくい。

 みんな狐につままれたような顔をして首をかしげていたらしい。

 

 アルさん一人を除いてはね。(元よりアルさん無表情だしね)

 

 

 黒い馬が出てきたのはこの話でだけだったけど、他にもアルさんを巡る不思議な話があるらしい。

 だけどボクの情報網を以ってしてもなかなかアルさんの情報って入ってこないんだよね。

 アルさん本人に聞くのが一番早いと思って訊いてみたんだけど、アルさん、

 

「我は魔王だからな」

 

 って言うばかりなのさ。

 

 

 

 END

 以上、魔王にまつわる不思議な話でした。(笑)
 自分でキャラ作っといて何ですが、アルセニーの家族構成とかムチャクチャ気になります。
 お母さんとか意外と黒髪美人そう^^
 いえ、魔王は魔王なので、そこんトコが明かされることは無いような気はしますが(笑)

 ブラウザバックプリーズ! 

 07.06.07.TOWEL・M