あの頃の僕らはそうなる前に終わってしまった。(学園Ver.ドリバジ)

 

「バジル先生?」

 カラリと音を立てて隣の美術室の引き戸を開ける。

 途端こちらに背を向けて何やら描いていた人物はビクッと肩を跳ね上げる。

「ド・・・グレイ先生」

 別に名前で呼んだって誰も何とも思わないだろうに。

 言い直した彼に少しだけ苛々する。

「また空きを利用して絵を描いてたのかい?・・・たまには音楽室にも足を運んで欲しいのだけれど?」

 背後から抱きしめるようにして腕の中に閉じ込め耳元で囁けば相手はまた面白いくらい過敏に反応した。

「う・・・あ、だ、だって、ッ!!うわあ!!!////」

 ガタン!!と大きな音を立ててバジルが立ち上がる。

 その拍子に座っていた椅子はひっくり返ってしまった。

 それを避けながら、耳を手で覆い顔を真っ赤にして後ずさる彼にごめんごめんと両手を上げる。

 耳元に口を寄せた瞬間油彩の臭いではない彼自身の仄かな香りが鼻をくすぐり、つい耳を舐めてしまった。

 彼は顔を真っ赤にして何も言えずに口をパクパクと動かしている。

 

「うぅ・・・なんで・・・・?」

 蚊の鳴くような声に、涙が混じっているのに気づく。

「なんでこんなこと・・・・・・」

 そのまま彼は両手に顔をうずめてしまった。

 ちいさな嗚咽が響く。

 

 ああ、それもこれも、全部僕が悪い。

 あの当時、この感情にもっと早く気づけていたのなら。

 けれど。 

 

 あの頃の僕らはそうなる前に終わってしまった。

 

 いや僕が終わらせたのだ。

 この手で。

 この細い首に

 間違った感情の刃を突き立てたのだ。

 

「バジル・・・」

 

 歩み寄り、そっと手を伸ばす。

 彼の首の後ろへと手を当て、さする。

 

 今の彼に傷跡なんて無い。

 まっさらな、白く美しい肌だ。

 だがまたいつかこの首に間違った刃を突き立てるのではないかと思うと───

 

 彼の首を撫でていた僕の手に、そっと彼の手が重なった。

 彼は顔を上げて、野辺咲くすみれのようにちいさく微笑んだ。

 その瞳はまだ涙に濡れているというのに。

 

「バジル・・・」

 

 名前を呼んだ。愛(いつく)しむように。伝わるように。

 

「バジル」

 

 あの頃そうなる前に終わってしまったものが。

 

 まだあの頃のままで居る君の僕に対するほのかな想いと

 君に対する感情に気づいてしまった僕の想いがどうかひとつになるようにと。

 

 

 泣かないで。

 僕はただ君を愛したいだけ。

 

 

 

 END

 ドリバジでいきなり学園モノに走ってますが何か。(爆)
 しかもいつもの学園モノのノリではなく若干シリアスで。
 まずこの二人は互いの感情を重ね合わせることから始まりそうです。
 バジルの方がまだ当時の憧憬的感情を引きずってて一気に気づいたドリアンに追いつけてない感じ。
 ドリアンは今すぐにでもバジルを愛したくてしょうがないんだよ。前世の分まで。^^
 あ、ちなみにドリアンは音楽の先生です。

 ブラウザバックプリーズ!

 07.06.01.TOWEL・M