わたしのお気に入り。(ホムワト)

 

  彼の手はいつも真っ先に僕の腰へと伸びる。

 そして僕の腰には彼の腕が回され、額には彼の唇が柔らかく落ちる。

 どうやら、これが彼のお気に入りであるらしい。

 

「くすぐったいんだけどな、ホームズ・・・」

 

 腰に回された腕も何処となく恥ずかしくて、身じろいでしまう。

 そのうえ額には彼の冷たい唇の感触が落ちてくる。

 それをどうにも回避できない状態であるのだから、それすらも図ってやっているのだとしたら憎らしい。

 

「ホームズ〜〜〜っ」

 

 さっきから落ちてくることを止めない唇が、額だけでなく瞼の方にまで落ちてきた。

 このまま調子に乗ってさらに下まで降りてくるのではなかろうかと心配になる。

 何せ今は昼間で、僕らは依頼人もよく通す居間でこんなじゃれあいをしているのだから。

 腰に回された手が不穏な動きを見せないのが唯一の救いか。

 だがそれも目の前の男が調子付いたらどうなるか分かったもんじゃない。

 

「しょうがないじゃないか。ここのところ依頼はないし、退屈で脳みそが腐りそうなんだよ。」

「・・・そりゃあコカインなんかに走られるよりはいいけれど・・・・・」

 

 でもその鬱憤を僕で晴らすってどうなの?

 眉をハの字にさせて文句を言う。

 

「これだと君ばっかりが堪能してることになるじゃないか。

 君はいいかもしれないけど、その間に僕の供給はゼロだよ。」

 

 君が僕の腰と唇に当たる僕の額の感覚がお気に入りなのはよぅく分かるけれど。

 閉じ込められている不自由さに身じろいで文句を言う僕を、

 相変わらず楽しみながら僕の探偵は何処吹く風でのたもうた。

 

「じゃあ、君も僕にお気に入りを見つけたらいい。」

 

 お気に入り?

 君における、僕の?

 

「───この状態で?」

「この状態で」

 

 もの凄く範囲が限られるじゃないか。

 ぶつくさと文句を言いながらも早速探索に掛かる。

 

 ホームズの背中に手を回してみた。

 この感覚は嫌いじゃないけれど(むしろ好きだが)ずうっとこうしているのは腕がしびれてしまう。

 つと背伸びをしてちょうどこちらに首を傾けていたホームズの唇にキスを落としてみた。

 これも悪くはないけれど、何度も背伸びをするのは大変だ。

 

 あれこれ試して、最終的に僕はホームズの胸に顔を埋めた。

 

「お気に入りは見つかったかい?」

「うん。こうするのがいちばん楽。あったかいしね」

「君がそうしてくれてると、僕も君の髪に顔を埋められるな。」

「なんだか結局君のお気に入りを増やしただけのような気がするんだけど」

「僕だってさっきまでのように君の額にキスできないからね。差し引きゼロだよ」

 

 腑に落ちない面もあったように思うが、それでも次の事件が舞い込んでくるまで。

 冒険の合間の退屈な時間を、僕らはこうしてお互いで満たすことに努めた。

 そのうちに僕が彼の温かさに眠気を誘われて意識を手放し、そんな僕を抱えながら彼もソファで眠ったことは、

 目を覚ましたときの僕らだけが知るところだ。

 

 

 

 END

 久々に好いホムワトが書けましたv
 これで探偵が腰に回した手を不穏に動かし始めたら大変なことになりそうですが(笑)
 今回はまったりで。^^
 冒険のときが来るまで、おやすみなさい。

 ブラウザバックプリーズ!

 06.12.15.SUISEN