母の居た夜。(BB)
微笑みを浮かべた母がそこにいる。
柔和な笑みを浮かべて、こちらにむかって手を差し伸べる。
それはなんて幸福な夢。
母らしいふくよかさと温かさと安堵。
そして子に対して向けられる無償の慈愛をもって抱かれる。
なんて温かく、幸福な───
そこまで思って、頭のどこかが切り替わる感じがした。
母に抱(いだ)かれ眠る安らかなこの現状に感じる違和感。すれ違い。
意識の裏側から声がする。
これはなんて温かく、幸福な───夢だと。
それを即座に否定して、追い出そうとする自分。
これを、この母を夢だと認めてしまったら目が覚めるじゃないか。
そうして覚めると同時にこのぬくもりも、跡形も無く消え去ってしまうのだろう。
そんなことあってなるものか。
消えないように消させないように、必死に母にしがみ付く。
けれど無常かな、母は柔和な笑みを讃えながら、遠くなっていく。
「・・・・・・?」
意識は完全に醒めている。
なのに消えると思っていたぬくもりはいつまでもそこに存在していた。
むしろそれは夢よりも確かで、はっきりと感じられた。
不思議な思いにつられるようにそっと瞼を開けてみた。
「・・・え、ぁれ?バーネット・・・・?」
開いた目と鼻の先にバーネットの寝顔があった。
ワケも分からず自分の状況を確認すると、自分はバーネットの腕の中で眠っていたのだった。
途端パニックを起こしてグルグルになる頭の中。
(??・・・?!なんで??ここは僕の部屋?・・・じゃない、バーネットの部屋だ・・・なんで?なんで??)
体を起こそうにもバーネットの腕がしっかりと体を捕らえていて動けない。
バーネットの胸に身を預けたままでいるしかなかった。
「ん、・・・・」
「・・・・ぁ、」
どうしようかともそもそ身じろぎながら思案していると、上の方から寝ぼけた声がした。
反射的に顔を上げると、ぼんやり開きかけた淡い水色の瞳と目が合った。
「あー・・・えっと、ジム、おはよぅ・・・・」
「ん・・・?ああ、ベシューか。起きたのか?」
「うん・・・っていうか」
何がどうして僕は君の部屋で君と一緒に寝てるの??
困惑を露わに泣きそうになりながら、起き抜けで大きな欠伸を漏らすバーネットに尋ねる。
バーネットはまだ寝足りないようで、一度開けた目を再び閉じて答えた。
「昨日の夜、いきなりお前が僕の部屋に来てベッドに潜り込んだんだよ・・・」
「嘘。」
「残念ながら本当だ。まあ昨日寒かったしな。寝ぼけてたんだろ。」
でなければお前にあんな積極的な行動が取れるわけが無い。
とくに僕に対しては、とバーネットは付け加えた。
「せせせ積極的って何さ??!何?!僕何したの??!」
「ん〜あ〜・・・?まぁそこんトコはご想像におまかせします・・・」
「任せられても!!何?!何なの??!言ってよぅ!!バーネット!!」
「あ〜もぉ・・・うるさい・・・・」
「わわ?!」
起こしていた上半身を抱きこまれて、今一度バーネットに抱かれる体勢になった。
しかも今度はよりしっかりと。
「ちょっ、ジム、放して・・・っ」
「今、何時だ?」
もがもがと暴れてもバーネットは全くおかまいなしで、こちらの声など聞き入れてくれない。
「え?えーっと・・・4時半?」
「まだ早いじゃないか・・・もう一眠りしてから起きても遅くないぞ」
「なら僕は自分の部屋に帰って寝るから・・・」
「今から自分のベッドに戻ったって冷たくて寝らんないだろ。いいからこのまま寝るぞ」
「うぅっ・・・」
普通に寝ぼけるならまだいい。
それなのに、自分はどうしてよりにもよってそのままの状態でバーネットのところに行ったのか。
ううううう、と居た堪れなくなっていると不意に頭を撫でられた。
「? な、なに?」
「・・・昨日はよく寝られたか?」
「? う、うん・・・?」
質問の意図がよく分からないのだが、よく眠れたことは確かなので、肯いておく。
バーネットはそれにそうかとだけ返して寝の体勢に入った。
なので仕方が無いので自分も諦めて寝に入ろうと、体の緊張を解いていく。
そういえば・・・自分はさっき何か、夢を見てはいなかっただろうか?
思い出そうと試みたが、それらはすでに霧散してしまっていてもう一度形作ることは叶わなかった。
それでもその夢を思った途端に心がどこか落ち着いて、安らいだから。
きっと、良い夢だったんだろう。
しばらくするとまだ薄暗い部屋の中、二つの穏やかな寝息が室内を満たした。
END
『加護のある夜』の続きでベシューside。
バーネット探偵社は午後の2時から3時までという営業時間の短さなので多少寝坊しても平気です(爆)
そんな会社で働きたい。それで給料も待遇も良かったら裏で絶対何かあるよ(笑)
たまにはこんなBBもいいだろう(*^^*)
ブラウザバックプリーズ!
06.11.23.SUISEN