確 信 犯 (ヤード)

 

 ザワザワと騒がしかったロンドン警視庁もといヤード内。

 先程まで走っていた緊張感や混乱は無く、騒ぎは沈静化に向かっているようだった。

 

 と、いうことはもう終わっちゃったのか。

 

 刑事たちが胸を撫で下ろしながら己の持ち場に戻る中、ひとり物足りなさそうな顔をしている男。

 つまんないの、と周りに居るものが聞いたら何を言うんだと思うようなセリフを拗ねたように零す。

 だが、若い同僚の姿を視界に捉えるとその表情は輝きを取り戻した。

 

「ホープキンズッッ!!」

「うわッ!!!」

 

 突然後ろから抱きつかれて、呼ばれたホプキンズは目を白黒させたが、その姿を捉えるとほっと体の力を抜いた。

 

「ブラッド!!危ないじゃないですかッ!!」

「ははっはー♪んで、騒がしかったけど、なんかあったの?」

 

 ホプキンズの首に両腕を回して抱きついたまま、非難の声をさらりと交わして質問を重ねる。

 ホプキンズもブラッドのそういったはぐらし方には慣れているようで、溜め息を吐きながらも口を開いた。

 

「・・・取調べ中の容疑者が脱走して、凶器持って署内をうろついてたんですよ。

 でも、先程グレグズンさんが捕まえてくれましたよ」

「あの人が?めっずらしーーー」

 

 ブラッドが目を丸くして驚く。

 きょろりと目を動かす仕草は、愛嬌いっぱいな悪戯っ子のようだ。

 まあ実際、そうなのだが。

 

「んじゃ、とくに大きな騒ぎにはならなかったわけだ?」

「そーですね・・・あ、でも犯人を取り押さえる際に、グレグズンさんがちょっと怪我しちゃったみたいですけど」

 

 さっき、レストレイドさんが医務室に連れてってましたけど。

 ホプキンズの言葉にブラッドがへぇ、と漏らし、その目をキラリと輝かせた。

 ニヤリとした笑みを浮かべて、ボソリと呟いた。

 

「小規模ながら、イベントはしっかり発生したってわけだ」

「はい?」

「お前ら、廊下のど真ん中で何やってんの」

 

 何か言いました?とホプキンズが尋ねる前に、気だるげな声が上から響いた。

 

「あッ!グレグズンさん!」

「よぉ」

「なんだ、グレさんか」

「なんだってなんだよ詐欺師」

 

 どこか呆れた様子で二人に声をかけてきたのは当座話題に上っていたグレグズンだった。

 

「お怪我大丈夫でしたか??」

「ああ、かすり傷」

「チッ・・・・」

「おい、いまの舌打ちは頂けねぇぞ、詐欺師」

 

 ぐりぐりとブラッドの頭をグレグズンが押さえつける。

 そんな戯れに笑っていると、さらに向こうから声がかかった。

 

「何してるんだお前ら・・・」

「あ、レストレイドさん」

 

 そこにはまた呆れたようにして佇むレストレイドの姿が在った。

 

「お、レストレイド」

「んぁ、レスさん?」

「バカやってないでさっさと仕事に戻れ・・・」

 

 三人の横を興味無さげにレストレイドは通り過ぎようとした。

 

「あー、レストレイド」

 

 それを、グレグズンが呼び止める。

 

「・・・・なんだ」

「ありがとーね、コレ」

 

 グレグズンは包帯の巻かれた手を口元に持っていくと、その包帯に口付けるような仕草をして笑ってみせた。

 

「・・・・!!/////」

 

 途端に、レストレイドは顔を真っ赤にして、バッと踵を返すとツカツカと歩いて行ってしまった。

 

「?レストレイドさん?どうしたんですかー?」

 

 その後を、バタバタと走ってホプキンズが追って行く。

 後に残されたのはグレグズンとブラッドのみ。

 

「・・・あんま遊びすぎんなよ、お前。いつかゲームのラスボスみてーになっちまうぞ」

「でも、今回はナイスアシストだったんじゃないですか?」

 

 グレグズンに頭を押さえられたまま、上目遣いにブラッドがニコリと笑う。

 力の無い視線に呆れを混ぜて、グレグズンは軽く溜め息を吐いた。

 

「それだって偶然だろうがよ」

 

 あ、バレました?

 

 ブラッドの子どものような笑い声が、廊下の中で高らかに響いた。

 

 

 

 END

 名無しさんが書いてくれたグレレス馴れ初め話で出てくる容疑者脱走事件の裏側(笑)
 敵は味方陣営の中にこそ居るものなのです。
 ブラッドはホプキンズ以外は、グレさん・レスさん・魔王さん・ピーたんさんと呼びます(笑)
 危険な遊びに走らない限りは人懐っこい子です。

 ブラウザバックプリーズ!

 06.09.20.SUISEN