三月十五日の遺品(ラフバニ)
「おかえり、バニー」
「ラッフルズ」
鍵がかかっていたんでね。合鍵を使って入らせてもらったよ。
リビングの丸テーブルに肘をついた状態で座っていたラッフルズはそう言いながらヒラヒラと手を振った。
そして椅子の背もたれに背を預けるとしばし僕の行動を見つめていたが、
やがて、来い来い、とでも言うようにこちらに手招きをした。
「? なに?」
首を傾げつつもラッフルズの前まで行くと、屈むように促された。
腰をかがめると座っているラッフルズと顔が近くなった。
そこでラッフルズの手が伸びて、落ちてきていた僕の前髪をふわりと掻き揚げた。
ちゅっ。
「!・・ら・・?!・・・・・!!////」
こともあろうにラッフルズは僕のこめかみにキスを落としたのだ。
一気に顔に朱が上って言葉もおぼつかない僕にラッフルズが苦笑いを浮かべる。
「いやぁ、君とチームを組んだ夜のことを思い出して。不意に、ね」
まだ思考力が起動しない僕の頭をラッフルズの手が撫でるのを感じながら、僕は浮かび上がったあの日の光景を見ていた。
バカラ賭博で大負けをしたあの日。
もとよりあった財産などとうに無くし、選ぼうにも選択肢はひとつしかなかったあの日の夜。
ラッフルズの部屋に入ってすべて打ち明け、ひとつしかない選択肢を実行するべく彼の部屋を立ち去ろうとして
そんなガッツがあるのかと揶揄を受けて僕はその場で持っていた拳銃をこめかみに宛てた。
しかしその決心も、それが火を吹く前に彼の見せた表情によって打ち消されてしまったが。
まあだからこそ、いまここにこうして居るのだけれど。
「う、や、あれは・・・てゆーかそれとこれとどう・・・・」
ようやく言葉らしい言葉が僕の口から出たが、それは呂律のまわったものではなかった。
「君は僕に比べて精神的に弱く、善人だからねぇ。
我が親愛なるパートナーが自ら命を絶つ、などという愚かな行為をしないようにする為の一種の予防策さ」
そこでまたこめかみにラッフルズの唇が触れた。
「少なくとも、ピストル自殺だけはできそうにも無いだろう?」
こめかみにピストルを宛てた瞬間に、この予防策を思い出すだろうからね。
耳元に吹き込むように囁かれて。
「ラッフルズ!!」
僕は大声で怒鳴ったが、その顔は怒りとは違った意味で真っ赤になっていて効果は無く。
ラッフルズはそんな僕を見てクスクスと笑ったのだった。
そしてその日以来。
「じゃあ、またあとで落ち合おう」
「うん、じゃあまた。」
「あ、バニー」
ふわり、ちゅ。
「〜〜〜〜〜っ///// ラッフルズ〜〜〜っ!!」
その日以来、その行為はラッフルズから僕への挨拶みたいなものになってしまったのだった。
END
日本では知名度の低い『ラッフルズとバニー』を布教すべく急遽拍手小話にてラフバニ参戦。
この話の前提として、ラッフルズはバニーがピストル自殺する夢でも見てるといいよ。
不安で確かめに来ちゃったんだよ。(そして勝手にお邪魔)
第一話読んでまず、この『こめかみチュウ』話が浮かんだのでした。
ブラウザバックプリーズ!
06.08.30.SUISEN