前略、浴槽にて。(ルパルブ)

 

 ルブラン邸、その浴室。

 据え膳なんだか生殺しなんだか分からない状況に、怪盗は置かれていた。

 

「モーリスー・・・」

「・・・・・・・」

「なんかもう・・・なんて言ったらいいのか分からないんだけど」

「・・・・・・・」

僕が来るって分かってる日に、なんで風呂場で撃沈してんですか、アンタは。

 

 がっくりと膝をついて倒れても、当のその原因は寝息を立てて浴槽内で爆睡中だ。

 マイペースで、作家で、どこでも寝てしまう彼のことだからいつかはやってしまうだろうと思っていたけれど。

 

 まさか自分の前でやられるとは。(いや、他のヤツに見られたらそれはそれで厭だが。)

 

 風呂に入ったまま寝ると、たいがいの人間は溺死してしまうか風邪を引くかのどっちかだが、

 幸いモーリスは浴槽の縁に引っかかって溺死は免れていた。(それに関してはかなり胸を撫で下ろした)

 果たして怪盗の理性がぶち切れることからも免れるのかどうかは別だが。

 

 ・・・ひとまず浴槽から出さないと。

 このままだと風邪を・・・・あああああでもその前に自分の理性が持ちそうに無い。

 本当は起きて自分であがって欲しいのだが・・・この睡眠状態では、それも見込めそうに無い。

 

 べつに知らない間柄では無いんだし、てゆーかもう幾度と無くコトに及んでる仲なのだから、

 ブチ切れてしまったときはときでしょうがない、自業自得と了承してもらおう。(泣)

 

 怪盗はしくしくと涙を流しながら、寝入ってしまったモーリスを湯から引き上げる。

 その真っ白い首筋だとか、ほのかに朱に染まった肌だとかが目に入り、早くも理性がガラガラと音を立てて崩れ始める。

 

 なんて言うんですかね、浴室の青のタイルにあなたの肌がやけに映えるんですよルブランさん。

 っつーかもうここでヤっちゃっていいですか?

 ここだったら汚れようが何しようがそれこそナニしようがすぐ洗い落とせますからね。

 華奢な体がボクの嗜虐心をもろにいま直撃してるんですよ

 泣こうが喚こうがいまならなんだってでき以下略

 

 悶々と黒い(というかもはやぶっ壊れ)思考に浸った怪盗だったが、

 ハッと気がついてぶんぶんと頭を振って追い払った。 

 

 だめだ、部屋に行くまでは我慢しろ俺!!と言い聞かせながら。(それもなんか違うだろ)

 

 モーリスの濡れた体をタオルにくるんで簡単に拭くと、そのままの状態で抱き上げて部屋へと向かう。

 その部屋へと上る階段の途中で、怪盗の二度目の理性崩壊がやって来た。

 

「ん、・・・らうーるー・・・」

 

 もそもそごそごそ。

 怪盗の腕の中、眠る体勢を整えたいのか身じろぐモーリス。

 あまつさえ自分の名前(しかも本名!)を呼び、無意識にも自分に擦り寄ってくる。

 

・・・・・・!!

 

 階段の途中、ガクッと二度目の膝落ちを喰らった怪盗。

 モーリスを抱く腕の震えは、腕力ではなく理性の限界を訴えている。

 

 あああああああもそもそするな!ごそごそするな!擦り寄るなーーーッ!!

 しかもなんだ、「らうーる」ってよ!!

 なんだその幼子の寝言みたいな声は!!

 可愛いじゃないか!!!

 汚されたいのか?階段を汚されたいのか?!!

 何プレイだか知らないが受けて立つぞ?!ボクは!!

 

 ふるふるふると震える腕に鞭打って、もう自分でも何考えてんだかわかんない思考も追いやって

 ようやく部屋に辿り着いた頃には怪盗の息は何故か激しく切れていた。

 

「あああもう帰りたい・・・世界の果てまで行ってしまいたい・・・・」

 

 ゴンッ!と自分の頭を部屋の壁に打ち付けて、怪盗が涙を流す。

 その光景はかなり異常だ。(というか、可哀想だ。)

 怪盗が壁際で欲望と理性の葛藤に疲れ切ってどよんとしていると、ベッドに寝かされていたモーリスが目をさました。

 

「んー・・・ラウール?」

「・・・・起きた?」

「んん、・・・・・?帰るの?」

「できることならいますぐ・・・・・!!」

 

 起き抜けでぼーっとしているモーリス。

 それを見ているだけでも再び理性の崩壊がやってきそうだ。

 いや、だから別にもう何度もコトに及んでいる仲ではあるから、そうなってしまってもいいんだろうけど。

 

 モーリスはただの一作家で、体力の有り余ってる自分とは違うわけで。

 たまにコトに及んだ時も、たいがい失神するほどヤってしまったりするわけで。

 そうなってしまうとそこからモーリスは丸一日体の自由が利かなくなるわけで───

 要するに、某探偵のように(←?)理性の崩壊に怪盗が身を委ねられないのは、その辺の後ろめたさがあるからだろう。

 

 はーーーっと盛大な溜め息を吐くと、ひとまず出直してこようと怪盗は立ち上がろうとした。

 

 のしっっ。

 

 怪盗が立ち上がろうとした瞬間、背中に何かがのしかかった。

 

「・・・・モーリスさん?ボク、いったん帰りたいんだけど・・・」

「やだー・・・」

「やだって・・・;」(あなたいまタオル一枚羽織ってるだけで裸ですよね?!)

 

 微妙にしっとりと濡れた肌を払い除けられないまま、怪盗は逡巡した。

 

「モーリス・・・このまましてるとボク我慢できないんだけど・・・」

「・・・・・・」

「モーリスー」

「・・・・・・」

「・・・・・・襲うよ?」

 

 そこでピクッ、と反応があった。

 なのでこれで退いてくれるかな、と思ったのだが。

 

「・・・・・いいもん」

「・・・・・は?」

 

 返ってきたのは何やら可愛らしい返事で。

 思わずぐるっと振り返ると、頬を紅潮させたモーリスとばしっと目が合ってしまい、二人して照れた。

 

 

 そういうわけで、我慢に我慢を貫いた怪盗は、最終的に愛しい人を美味しく頂くことができましたとさ。

 

 

 

 END

 前拍手SSのルパンサイド話の欄外に
 『風呂で寝られて理性を鍛えさせられる嵌めになったからという余談がある』
 という記述をしたらそれにリクエストの声が。いやぁ、みなさんよく読んでいらっさる(笑)
 たぶんにこんな感じで怪盗のみが頑張る結果になると思われます。
 水仙的には風呂場で襲っちゃってもいいです。(ぇ)

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 06.09.21.SUISEN