嗚呼、やっぱり僕は君が好き。(ルパルブ)
仕事を一段落させて休暇がてら普段はなかなか一緒に居られないあの人とロンドンへ行った。
偽名を使って招かれた夜会で売り出し中の盗賊の姿を見つけた。
あの人にそれを教えると
「かっこいい・・・」
と、言った。
正直、へこんだ。
「いつまで拗ねてる・・・」
「言ったー・・・僕より “らしい” って言ったー・・・」
夜会からの帰り途。
馬車に乗って行ってもよかったのだが何となく道すがら、ふたりで歩いて帰っていた。
“らしい”という言葉の前に付くのはもちろん『怪盗』。
今夜たまたま会場内に居たロンドンの盗賊の一人の容姿をモーリスが褒めた。
フランス・イギリスのみならずヨーロッパ中にその名を轟かす怪盗である自分。
その自分の前で、たかだかロンドンでちょっと実績を上げたばかりの盗賊が自分より
『怪盗に相応しい』などといった類の言葉を吐かれたら、そりゃあへこむというものである。
それが親愛なる人の口からなら尚更。
そんなわけで、ちょっとモーリスより数歩先に歩みを進めて距離をとっていてみたり。
もちろん、背後からてくてくとマイペースに歩いてくる彼の気配を感じてはいるけど。
・・・たしかにあの男はなかなかのいい男だった。青い目に白い肌を黒髪でシメて。
あの顔なら女性遍歴もなかなかのものだろう。(それは自分も負けてはいないが)
だがしかし英国人だ!所詮英国人だ!!ああもうこれだから英国人は!!!!(←完全なヤツ当たりです)
夜会で見かけた盗賊の姿を思い出して憤慨していると、うしろからそろりと手が伸びてきて。
「よそ見してるうちに誰かにさっさと攫われてやる・・・」
手を繋ぐ、には及ばないがモーリスが自分の指をきゅ、と握った。
その滅多に無い所作に心が綻ぶが、それもなんだか悔しくて握り返すのをグッと堪える。
「あの駆け出しの盗賊になら攫われてもいいんじゃないの?」
突っ返すようにそう言い放てば後の気配が少しだけ暗く小さくなった気がした。
握られた指から力の無いその手が剥がれ落ちそうで、正直焦った。
そのとき、後からぽつりと呟きが漏れた。
「───ラッフルズは」
何を言おうとしているのか。そこで一度言いよどんで、気配が逡巡した。
「ラッフルズは『かっこいい』。でもおまえは『好きだ』」
「・・・・・・・・」
・・・・・・・・・え?
「え?ごめ・・・モーリス・・・・も、一回」
思わず足を止めて固まった。
それでもさっきまで自分が握られている側だったのにいまやしっかりと彼の手を握り返しているのは
無意識のうちに逃亡防止を企てる本職のなせる業か。
「・・・・・・言えるかー・・・・」
ああもうこの手を離せ、一人で帰ると言わんばかりにそわそわしている彼の口からそんな蚊の鳴くような声を聞いて。
胸の奥底からじんわりと染み出してきたあるひとつの感情にまかせて彼の体を抱きしめた。
嗚呼、やっぱり僕は君が好き。
END
ラッフルズをダシにしたルパルブ。
ラフバニはいろんな19世紀メンバーと接点があるのでダシにしやすいです。
ああしかしなんだこのルパルブの甘々っぷりよ。
そしてルパンがヘタレてんな。いやでもルブもルブでルパン好きすぎです。
ブラウザバックプリーズ!
06.09.01.SUISEN