Toy Color =Side:Lupin=

 

 どうしてこうも自分の料理は造りものめいた色味しか出ない?

 ダイニングテーブルに並べられたカラフルな料理に、げんなりとした視線を向けた。

 

 正直、自分で作った料理は嫌いだった。

 

 持ち前の要領の良さで料理の味はそこらのシェフより格段に上、盛り付けも完璧にこなせた。

 だが如何せん、色が良くなかった。不自然なのだ。

 自然のものを使って作ったはずなのに、出来上がった頃には人工物のようになっていた。

 たとえるならそう、子どものオモチャの色。

 妙にギラギラしていて、毒々しくて。

 いくら味が良いと言ってもそんなものを作ったところで食べたい気になるはずもなく。

 たいていの食事は乳母に作ってもらうかカフェなどで済ませていた。

 

 でも、そんな料理を彼は美しいと言う。

 最初に作ってあげたときには不味そうな色に退かれたらどうしようなどと思っていたが、

 どうしたらこんな綺麗な色を残したまま美味いものを作れるんだと感心された。

 自分からしてみれば、彼の作るアイボリーカラーの料理の方がずっと美味しそうに見える。

 彼らしく、落ち着いた色合いで。

 彼はそれを甚く気にしていたけれど、僕は気に入っていたからその旨を告げるとそれは嫌味かと拗ねられた。

 本心なんだけれどなぁ?その後僕の言葉を誤解して拗ねた彼を宥めるのは大変だった。

 

 思うに自分は凝り性なのだ。

 完璧主義すぎて、手を抜くことができない。

 それゆえに、まるで機械から造ったかのような料理が出来上がってしまう。

 料理を作るときに必要なのは「美味しくできますように」という想いを込めることが第一前提であって、

 完璧な、狂い無き造形物を造ることとは違う。

 本職犯罪者、怪盗な自分にとっては出来なくて当然なのかもしれない。

 それが少し悲しかった。

 

 ああ、彼のところへ帰れなくなって幾日が過ぎただろう?

 まさか本を買いに出かけたその出掛けに、事件に巻き込まれることになろうとは。

 その買いに行ったのだって、ほんの散歩、外に空気を吸いに行く程度のものだったのに。

 目撃していただけだったが、瞬時に俊敏な反応をみせてしまう己は、気づけば事件に参加する一人となっていた。

 とてもではないが帰れそうになく、仕方なく部下を通じて電報を打った。

 彼は干渉を一切してこない人なので、裏稼業が主な生活の自分にとっては彼のその姿勢はとてもありがたかった。

 でもそのおかげでもう随分と彼の作る料理にお目にかかれていない。

 こんな身も心も擦り減っているときにこそ、彼の優しくて温かい料理を食べたいのに。

 

 時間はもう深夜。

 ようやっと、すべてのカタがついた。

 下男すら雇わない彼は、一人で住まうには広すぎるあの一軒家の寝室で眠ってしまっただろうか。

 夜が明けてから帰ってきても良かったが、いまはもう早く帰りたかった。

 周辺に家も無いこの番地に、ひっそりと佇む見慣れた屋敷の影が見えてくる。

 まるで幽霊屋敷のような佇まいも、彼が居ると思えば親しみが湧いた。

 音を立てず、中へと入る。

 使っている部屋数が少ないので、生活感が極端に感じられない廊下を進む。

 ふと、視線の先に明かりを見つける。

 キッチンだ。

 

 そっと覗くと、こちらに背を向けて座っている彼の姿が見えた。

 何か食べているらしい。夜食だろうか。

 だがそのうちに始めは口に食べ物を運んでいた手がのろのろとしか動かなくなり、

 終いには食べ物を口に運ぶのをやめ、皿の中のものを掻き回すだけになった。

 カチャン、カチャン、と金物どうしが弱弱しくぶつかり合う音だけが響く。

 具合が悪いのだろうか?

 心配になって声をかけようかと思ったとき、今度は盛大な溜め息が聞こえ、彼がテーブルに突っ伏した。

 料理の盛られた皿を、まるで何かの仇のように突き放す。

 その仕草に、ひょっとして。

 遠目から見ても皿の中身は彼特有のアイボリーカラーだ。

 そして目を移せばまだ片付けられていない調理器具。

 

 ひょっとして、自分の作った料理がまたアイボリーカラーになってしまったことに落ち込んでいるんだろうか。

 

 そこまで思い当たって、ついクスリと笑ってしまった。

 気にする必要なんて無いのに。

 優しく落ち着いた色合いでまとめられた料理は、自分のどぎつい色の料理に比べてなんと温かいことか。

 以前褒めたら拗ねられたと述べたが、コンプレックスになっているのか本心から褒めているというのに

 「莫迦にしてるだろう」と言って聞き入れてくれないのだ、この男は。

 終いには僕に料理を作れと強請ってくる。僕の作る方が綺麗で、美味しいからと。

 僕にしてみればその言い分こそどうなのだと言いたくなってくるのだが、

 彼の方こそ本気で自分が作る料理を美味いと思っているらしく、僕はいつも嬉しさに顔を赤らめながら作る嵌めになる。

 

 彼はそのままテーブルの上でゴロゴロしながら身じろいでいたが、だんだんとその動きが小さいものになってきた。

 夜も遅いし、眠くなってきているのかもしれない。彼は眠たくなったら何処でも寝てしまうタチだから。

 それはまずいと思い立った僕はキッチンに足を踏み入れると背後から彼の首に腕を回し、その背中に呟いた。

 

 ただいま、と。

 

 

 

 END

 ルパンサイド。互いに足りないものは分け合えばいい。
 てゆーか以前皆さんから頂いたアンケでルパン×ルブランを意識し始めたら
 ルブさんが可愛くなってきましたが何か。
 中性的な人だったのになぁ(水仙の中では) 
 ちなみにルブが何処でも寝てしまうのをルパンがまずいと思ったのは、
 以前風呂で寝られて理性を鍛えさせられる嵌めになったからという余談が。(笑)

 ブラウザバックプリーズ!

 06.07.23.SUISEN