<曖昧な5つの言葉>

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2 意志か意地か【Will】(LL:ルブランSide)

 

さっきから 中途半端な力加減で入れられる 鳩尾が 痛くて堪らない

 

締め上げられるたびに押さえつけられる背が触れるのは硬い石造りの壁だ。

松明の灯に陽炎のように蠢く影を携えて浮かび上がるそこは古城の地下牢という言葉がぴったりなそこだ。

そして自分の視界に映るのは私欲に肥えたとしか見えない意地の悪い顔をした貴族風な男と

見るからに途を踏み外したと思われる数人の男の顔。

正直、どれもこれも見ていて辟易してくるような面構えで、見たくなくて私は目を閉じる。

「おやおや、もうお休みですか」

だがそうすると頭と思しき貴族風な──言ってて面倒くさくなってきた、高価なのは服だけで

それを剥いでしまえば家畜同然のような男なのだ──男が、ぶくぶくに肥えた手の甲で頬を撃ってくる。

それが不快で厭で、仕方無しに私はまた目を開ける。

そうするとよく肥えた豚が醜く哂っているので、(もうこの際だから豚でいい。本物の豚には大変失礼かもしれないが

視線だけでもと目線を外らすが、今度は人の顎をその手で持ち上げてこちらを見るように仕向けてくる。

 

いい加減にしろこの豚が。

 

傍から見れば私は抵抗することもなく監禁・拷問されている囚人と言ったところだろうが、

これからそんなことをする予定のある人に忠告しておこう。

黙って苦痛に耐えているからって腹の底までもしおらしい、訳ではない。

 

「そうそう・・・あまり早く眠られても詰まらないのでね」

「・・・・・・・」

 

お前が詰まろうが詰まるまいが←キレたことによる一人称の変化)には関係ない。

ていうかむしろお前はいっそのこと、詰まれ。

自分は物静かなことと、滅多に動かない表情のせいか無気力に見られることが多い。

たぶん豚&その他の目にいまの自分は抵抗の気力も無いように映っているんだろう。

実際こいつらの存在に辟易してるだけで、そんなことは全く無いのだが。

「さて・・・あの忌々しいコソ泥も死んだことですし、彼の物語を綴ってきた貴方にも筆を置いて貰いたくてね」

アレからいろいろと公言されると不味い事を聞いてるといけないんでね。

悪玉ぶっておきながら実は臆病、という風体を晒してなお高慢な素振を見せる豚に、いい加減呆れて溜め息を吐いた。

「おや、疑っておられるんですか?アレからの助けを待っておられるのなら無駄なことですよ?」

何故って彼はもう先に黄泉の国の人ですからね。言ってくつりと哂う。

そのわりには随分とその『死んだ人間』の影に怯えるじゃないか。

死して尚脅かすのは彼の存在──最も、私は『今回の』彼の死を直接目にした訳ではないからあくまで仮定だが。

 

突然襟を掴まれて、この冷たい石の部屋に置かれた唯一の物であろう、骨も剥き出しなベッドに仰向けに叩きつけられる。

スプリングが無いから、当たった背中が痛くて堪らない。

そのまま口にくつわを噛ませられて、ホールドアップな状態で手足をベッドの足に鎖で繋がれる。

豚とその他は松明を掲げ、牢の外に出ると縛り付けられている私を見てせせら笑った。

「それでは、ムッシュ・ルブラン。また伺いますよ。思い出したらね」

 

来なくていい。むしろお前には思い出されたくも無い。

 

お前が俺を思い出してどう思うのかは知らないがお前に思い出されると考えるだけで吐き気を催す自信があるから断じて却下だ。

灯が下品な笑い声と共に去ってゆくと、そこには完璧な闇が訪れた。

目を開いても閉じても視界は真っ暗。本当の闇。

地下なのか何処なのか知れないが、ここは本当の密室・閉鎖空間なのだろう。

英国のロンドン塔という所の地下には閉鎖空間における暗闇で人を発狂させる拷問部屋があるというが

普通の地下牢でも灯が無ければそうすることは可能だろうと思われた。

だがかえって私にとってはこちらの方が安心だった。

さっきの連中と相対するよりも、物も言わずに確かにそこに在る暗闇の方がずっといい。

それは優しく確実に自分を溶かし込んで包み込んでくれる。

迫り来る恐怖、押し潰される感覚、なんてものは人間が勝手に絶望し、思い込んでいるからであって。

実際には暗闇は迫っても来ないし押し潰しもして来ない。

ただ、灯が無いから存在し始めただけで。

まあ、動くに当たっては物が見えないから不便ではあろうが。

幸いいまの自分に動く術は無いから暗闇が丁度いい。

むしろ灯の下で拘束された姿をさらす方が恥態だろう。

 

ようやく手に入れた静寂にゆっくりと目を閉じる。

相変わらず背中は痛いが、豚&その他に付き合った疲れをここらでひとつ落とすことにしよう。

休眠に入るに至ってはカビ臭さも湿った空気も気にならない。

 

それでも。

 

それでも震える指が私の体を揺すり、か細い声が私の名を呼んだなら、

私はすぐにでも目を開けて答えてやらなければならないのだろうが。


4 優しさか弱さか【Tender】(LL:ルパンSide)と対。

2006.02.16.SUISEN

 

 

 

3 危険か冒険か【Risk】(リパ&汁ドレ)

 

己の棲家のひとつである家の前で、ジャックはしかめっ面で立ち尽くしていた。

 

「ふーんふん、ふーん♪」

・・・・・・

まず、誰も居ない筈の自分の棲家から鼻唄が聞こえてきたら要注意だ。

さして立て付けの良くない戸を、なるたけ音を立てないようにして開ける。

「ふーん、ふんふふーん♪」

真っ暗な部屋の中、上機嫌にも鼻唄なんか歌いながらゴソゴソと動く怪しい影。

見覚えがあるだけに戴けない。

「ふーんふんふーん・・・ぃよっし、できたっ魔方陣!!

人ん家でなに召喚しようとしてんだおまえは

 

ゴッ!!

 

ジャックの肘が、ジルドレの後頭部にクリティカルヒットした。

 

 

「・・・おまえなぁ」

もはや怪しげな祭壇と化してしまった寝具&居間にジャックは呆れた溜め息を吐いた。

ジルドレの厄介な嗜みのひとつに、黒魔術というのがある。

これは初代ジルドレも没頭したもののひとつだが、この七代目は初代ほどマジメでは無いらしい。

これで悪魔が喚べたら面白い。

その程度の、娯楽気分でこのカルト的行いをやっているようなのだが。

「錬金術も黒魔術もやるのは勝手だが時と場所を選べっつーの!!」

「あう!」

 

ゴン。

 

肘打ちを喰らい、床に座り込んでいたジルドレの頭に今度はジャックの拳が飛んだ。

「ぅぅぅ・・・痛い」

ふぇ、と泣き出しそうになりながら、恨めしそうにジルドレがジャックを睨む。

「ったく・・・なんで人ん家でこーゆうことをしようとするかね、おまえは」

血に染めたかのように紅い髪をくしゃりとかき回すと再び溜め息を吐いて部屋を見回した。

 

でこぼこの、隙間だらけの床は白チョークで描かれた巨大な円と

奇妙な記号──魔方陣と言ったか──でいっぱいに埋め尽くされている。

そしてそこから視線をさらに奥へと持って行くと、怪しげな人形や札、メダル、蝋燭などなど・・・

明らかに儀式めいた祭壇と化した寝具に行き当たる。

ここはカルト集団の集会所か、と他人事のように突っ込みを入れたくなってくるのもしょうがないと言えよう。

 

「・・・で、なんだってまた俺んトコでやろうと思ったんだ、お前は」

「(ぐすっ)むぅ・・・ジャックにも、手伝ってもらおうと思ったんだぁ・・・」

「・・・・一応訊くが、何を」

ちょっと一回ばかし生け贄を

一回ばかしも何も一回手伝ったらアウトじゃねーか

 

ガゴン!!

 

本日三度目の後頭部追撃に、とうとう泣き出したジルドレを叱りつけると箒とモップと雑巾、

そしてバケツといった臨戦態勢でひとまず今日の寝床を確保しに乗り出すジャックであった。

2006.02.16.SUISEN

 

 

 

4 優しさか弱さか【Tender】(LL:ルパンSide)

 

じわじわと 首を苛む痛みが 脳に到達するより早く。

 

目を覚ますと心配そうに覗き込んでいる部下たちの顔がまず飛び込んできた。

次に首に走る痛みと──忌々しい記憶。

らしくもなく虚を突かれてあの成り上がり貴族に短剣で喉を刺されたのだった。

倒れた自分、ひひひ、と悪魔のような哂い声を上げた男。

 

───後はあの物書きだな───・・・

 

自身が思い出した言葉に、背筋をスゥッと冷たいものが下りた。

ヤツの言った、『あの物書き』とは誰を示すのか。

少なくとも自分の周囲で思い当たる人は一人しかいない。

だが一体、ヤツが彼に手を下す理由が何処にある?

きっと別人だと思い込もうとしても、今回の事件がヤツの自分に対する

私怨で起こっている以上、絶対に無いとは言えないのだ。

醜い私怨の矛先が、彼に向けられる可能性があるということを。

すぐに部下を彼の家へと送る。

案の定、そこに彼の姿は無かった。

僅かながら争った形跡を見つけて、焦りと痛みがじわじわと体中を駆け巡ってゆく。

 

───あの家畜野郎め!!

もしも彼が死んだりしていたら、ボンレスハムにするどころじゃ済まないッ!!

 

すぐさまヤツの根城に取って返す。

今や焦りや痛みを通り越し、握り締める拳は湧き上がる怒りを抑えるためにある。

ヤツの城は海に面していて背が断崖絶壁、入るためには城から下ろされる橋が唯一の手段だ。

所謂不落の城というヤツだが、それは今まで入ろうとした者が居なかっただけであって

城からの目に留まらないよう地道に海を渡り、崖を登れるだけのスキルがある者なら制覇することは容易い。

今まで入って来なかったからと言ってこれからもそうとは分からないのに、人の過信とはなんと愚かなのか。

あの私欲に肥えた豚と無能で野蛮な配下の者数名しか居ない為、広大な城は奇妙な静けさを保っていた。

 

───豚を見つけて居場所を吐かせるよりも、自分でつけた見当で捜した方が早そうだ。

 

紅い敷布の廊下を足音を立てることなく、まるでこの城の主のように堂々と、颯爽と歩く。

この城は古くに建てられたものだから、地下に牢屋や拷問部屋といったものがあったはずだ。

もちろんそんなところに居て欲しくは無いのだけれど、誰かを拉致・監禁しておくといったらそこしかない。

どうか無事でいて欲しい・・・・ああああ!!あの豚男め!!本物の豚には失礼かもしれないが!

一体どんな方法で仕返ししてくれてやろうか!!

もし今、彼とすれ違うものがあったとしたら、その形相に迷わずその道を譲っていたことだろう。

 

何百年も前に閉ざされたまま、使われていなかったのであろう地下の空気は湿っていてカビ臭かった。

そのうえ灯も何も無い───自分で見当をつけて来たのに、本当にこんな所に居るのかと絶望と不安に苛まれる。

階段を下りて続く廊下伝いにいくつもの牢屋が照らし出される。

錆びつき、固まって転がる拘束具を見るところ、拷問部屋も兼ねていたのだろう。

一つ一つ、カンテラで中を照らして行く。

だがどの檻もからっぽで、人影どころか蟲一匹の気配すらも感じられない。

奥へと進むたびに、自信が揺らぐ。

 

此処ではないのだろうか───

 

「!」

だんだんと流れ作業的になってきた動作の中、今し方照らした牢の中に何か居たような気がして立ち止まる。

「・・・・・・」

もっと牢の奥の方まで照らすように灯をかざすと、オレンジ色の光の中、骨だけのベッドに横たわる人影が浮かび上がった。

牢の格子に手を掛けるとやはり鍵が掛かっていたが、然も無い鍵で難なく開いた。

自分が死んだと思っている豚のこと、片や一介の物書きと軽んじていたに違いない。

キィ・・・という軋んだ鉄格子の音が、やけに大きく響いた。

だのに、鎖で繋がれているらしい人影は身じろぎ一つしない。

ヒクリとも動かない身体に、不意に恐くなった。

 

触れた肌が、手が、硬くなっていたらどうしよう?

気付けようと揺すったその身から、首が取れて落ちたりしたら。

 

そのときは、きっともう闘えない。

正気で居れない。

この地下で、この暗闇に。

呑まれてしまう。

 

強ばる足をどうにか動かして彼の枕元に近づき膝を折る。

カンテラを床に置いて顔を上げると、そこにある確かな友人の顔に緊張する。

口に布を噛まされている。

取ってやろうと伸ばした手、その指が震えていて結び目を解くだけなのに酷くもどかしく感じられた。

布を取り去っても、彼はぴくりとも動かない。

ゆらゆらと揺らめくカンテラの灯が邪魔をして、肉眼では呼吸を診ることもできない。

ふとその口元に血が滲んでいるのに気がついて、持っていたハンカチでそっと押さえてやった。

 

「・・・・・モーリス」

そこでようやく名前を呼べた。

「モーリス・・・・モーリス?」

急な覚醒を促したくなくて、なるたけ小さい声でそっと囁くように呼びかける。

 

「モーリス・・・・モーリス───」

「・・・・・・・」

 

触れるように揺すったところで、ゆっくりと闇より深い色を讃えた目が開いた。

 

「モーリス」

もう一度呼びかけるとその目がこちらを見た。

 

しばらくじぃっとこちらを見ていたかと思うと、「無事か」とかすれた声音で言ってきたものだから

僕は拍子抜けして「君がね」と言って口角を上げて見せたのだった。

2006.02.16.SUISEN

 

 

 

5 絆か枷か【Bond】(モーリス&ジルドレ)

 

西日が傾いたことで文字が読みにくくなったことに気づいて、モーリスは顔を上げた。

部屋を見回す。この部屋のルームシェアはまだ戻っていない。

もうとっくに下校時刻は過ぎている。

「───・・・・・」

眉間に皺を寄せて立ち上がると、寮母に「ちょっといってきます」と告げて夜を背負い始めた学校へと向かった。

 

 

校内。教室。廊下。

見落としそうなほどに小さく縮こまっているであろう人物を捜して、暗闇を迷うことなく疾走する。

 

くすんくすん。

何処からか泣き声が聞こえる。

泣いている本人のことは充分わかっているだけに、『何処』なのかが特定できないのが実に歯がゆい。

ぐすっ・・・ひっく。

「───ジル、どこだ」

ぴたっ。

泣き声が止まって、辺りがシンとなる。

「───ジルドレ!!どこだ!!」

ひィ!!

つい焦って柄にも無く大きな声を出してしまった。

余計彼を怯えさせるだけだというのに。

「───ジル?」

「・・・・も・・・モーリスぅ?」

真っ暗な中、震える声を辿るとそこにぱっちりと琥珀の目が浮かんでいた。

ホッとして駆け寄ったのも束の間、暗闇に浮かび上がる彼の状態に絶句する。

「・・・・大丈夫か?」

「ううう・・・痛い・・・・」

ジルドレは本棚の一番下のスペースに縄跳び数本でグルグル巻きにされた上で押し込まれていた。

なるたけ傷つかないように気をつけながら出してやる。

あの悪ガキども(自分もガキだが)加減というものを知らないのか。

これはちょっとお灸を吸えてやらないとジルも危険だなと考えながら、体に巻きついていた縄跳びを外してやった。

「カバンは?」

「ん・・・そこに・・・・ふえ」

「? ジル?」

ふ、ぅえええええええええ〜〜〜〜もーりすぅ〜〜〜〜ッ!!!

ガバリとしがみ付いてきたジルドレは暗かった怖かった痛かった暗かった怖かった・・・・をエンドレスに叫びながら泣き喚き始めた。

よく今まですすり泣き程度で我慢していたものだと思うほどに。

いや、どうなるか分からない内は怖さと痛さが先に立って泣くに泣けなかったか。

びーびーと泣くジルドレの頭をよしよしと撫でつつ、なんとか落ち着かせようとする。

もう日は落ちてしまっているし、事情を把握してくれている寮母も心配しているだろう。

「ほら、ジル。もう泣いてないで。帰ろう。寮母さんも温かいもの用意して待ってくれてるだろうから」

「・・・ひゃっく、ぅん・・・・・・」

ひっく、と喉を引き攣らせながらゴシゴシと涙を拭くものだから、目元が赤く腫れている。

「ほらジル、立って」

「ぅうん」

ジルドレのカバンを見つけて手に持って、反対の手でジルの手を掴んで起こす。

思ったとおり、窮屈そうでぎこちない動きで立ち上がったジルに、しゃがんで背を向ける。

「? モ、リス?」

「ずっと狭いトコに押し込められてたから動くと痛いんだろう。負ぶってってやる」

早く、と促すとジルはおずおずと肩に腕を垂らして寄りかかった。

「んっしょと・・・・」

「も、モーリス、重くない?」

ぐすっ、とまだベソをかいてる音を立てながらジルドレが不安げに訊いてくる。

「軽くは無いけど、歩いて帰るくらい平気だ」

「ぅん・・・・・」

 

ぐすッ、ひっく。

学校から寮まで。

歩いて帰る間、ジルドレは背中でずっと泣いていた。

寮が見えてくると、入り口に心配していたのだろう、寮母が立って待っていた。

ハラハラとしていた様子だったが、こちらを見止めるとホッとしたように顔をほころばせて手を振った。

そこでまた安心したジルドレが大泣きして宥めるのに一苦労した。

やはり寮母が用意してくれていた温かいものを食堂で二人で口にして、泣き疲れたジルドレを寝かしつけて、一息つけると。

「寮母、ちょっと相談が」

寮母を手招いてしゃがんでもらい、耳打ちする。

「しょうがないわね」

溜め息を吐きながら言った割には、寮母も満更では無さそうな顔をしていた。

寮母の許可も貰って準備もO.K.

そして思い立ったが吉日でそく実行に移したのは───

 

ぎぃやぁあああああああああああああ!!!

煩いよお前たち!!何事だってんだぃ?!!

「お、おお、お、おばさん!!おばおばおば」

悲鳴とともに部屋から飛び出してきた見るからに『悪ガキ』な少年たちは、震えながら部屋を指差す。

「何だい何だい?何だ、何にも居やしないじゃないか!!」

「えぇえええ!!そんなハズ無いよ!!俺ら、見たもん!!」

「おばけ、おばけ!!」

真っ青になって訴える少年たちを、寮母は呆れたように見やる。

「夢でも見たんだろ!!くだらないこと言って夜中に騒ぐんじゃないよ!!明日の朝ご飯、抜きにするからね!!」

「そそそそそそんなぁ」

 

泣き叫ぶ少年たちの背後の暗がりで

ざまぁみろ。

真っ黒なシーツを羽織った少年の顔がニヤリと哂って、夜の闇に溶け込むように消えた。

 

モーリスぅうううううう!!!!

どこ行ってたのさぁあああああ!!!と半泣きで震えながら部屋に戻ったモーリスに向かって跳びついてきたのは、ジルドレ。

「ジル・・・寝たんじゃなかったのか?」

「うううううう、怖くて眠れなくてモーリスのベッドに行ったらモーリス居ないし・・・・」

「だからってぼくのベッドに潜り込んで枕を涙とヨダレと鼻水で汚すんじゃない」

だってぇ、オバケに食べられちゃったかと思ったんだぁああああああああ。

ひっしとしがみ付いてうわああああんと泣くジルをやれやれとあやす。

たった今、そのオバケになってきたところなのだが。

「わかったわかった・・・一緒に寝てやるから。ほら早く寝よう」

今日は疲れただろ?と促して泣くジルドレをベッドへと追い立てる。

ちなみにベッドは二段ベッドで、上がジルドレで下がモーリスだ。

「ん・・・」

ごしごしと目をこすりながら、モーリスのベッドにジルドレが潜り込む。

 

「・・・もーりすぅー」

「ん、」

「しんぱいした?」

「うん」

「・・・ごめんねー・・・」

「いい」

「?」

 

「ジルが悪いんじゃないから、いい」

 

うん。

モーリスの首に腕が回されて、ジルドレがきゅっとしがみついた。

 

苦しいと言おうかどうか迷ったが、結局言わないまま我慢した。

しがみ付いてきたジルドレの目にはまだ涙が滲んだままなのを、分かっていたから。

2006.02.09.SUISEN

 

 

*未消化*
1 愛か恋か【Love】

ブラウザバックプリーズ!

再掲載 :06.04.22.SUISEN