彼の目にかかった者たちの処には、しばしば宴の便りが届く。
それはあらゆる階級の者たちが集う狂宴。
上流階級から没落した貴族、女優・男優、山師、芸人、悪人、殺人鬼・・・
フランスにおけるかつての英雄騎士の末裔が、今宵も妖艶な宴の幕を上げる。
『礼拝堂の狂宴』
また集めに集めたもんだと思う。
本日の宴の招待客の一人であるジャック・ザ・リッパーことジャックは感心を通り越して呆れた溜め息を吐いた。
客はまあ、集めれば集まるだろう。
何せ腐っても英雄の末裔、信仰じみた崇拝心を持った後ろ盾がこの男にはあるのだから。
では一体何に呆れているかというと、極上の酒・料理を給仕してくるのがすべて女官ではなく少年だということだ。
彼らは皆同時に今夜、自分を含めた来客たちに振舞われる『ご馳走』そのものでもあるわけだが。
一人極上のワインを飲み干していると、いつの間にか隣に3H───ハーマン・H・ホームズがやって来ていた。
詩を詠うように人を殺す、と豪語するアメリカ在中の殺人鬼だ。
「なんだい、マジェスティ。釣れなさそうにしているねぇ」
明らかに浮かれた調子で話しかけて来た。
マジェスティ、というのはハーマンが俺につけた呼称だ。
初めて出会ったとき、俺を見たハーマンは酷く興奮して叫んだ。
『───王者の風格≪マジェスティ≫!』と。
以来俺はこの男に『マジェスティ』と呼ばれ、俺は俺で名乗らなきゃならない面倒な時などはこの名を使っている。
「るっせぇな。あからさまに嬉しそうな顔してんじゃねぇよ、うっとーしい」
すぐにでも舌なめずりをし出しそうなハーマンを軽くあしらって突き放す。
「おやおや、ホントに釣れないねぇ。久しぶりに会ったっていうのに」
そういえばそうだ。このオヤジは手ずから造らせた、罠を張り巡らせた迷宮のような邸に閉じ篭りまず出てくることは無い。
なんでも2メートルを超す人類の開発に明け暮れているとかで───・・・そんなもん造ってどうするんだか。
「別に会ったからってどうってこともねぇだろ。どうせ早くヤりたくてウズウズしてんだろ、お前は」
「言葉を選ばないか、マジェスティ。まったくお前という子は」
俺の唇に人差し指をあてて、しょうがない子だねと笑う。
しょうがねぇのはどっちだってんだ。
「しかしどうだろうマジェスティ。あの子なんか、色白の柔肌でメスがよく通りそうじゃないか?」
前言撤回。どうやらコイツはヤりたいんじゃなくて殺りたかったらしい。
うっとりと酔いしれたように呟くハーマンに、俺は盛大な溜め息で答えてやった。
ジルドレは『城も礼拝堂も初代が建てたもので、今も昔も用途は変わらない』と言っていた。
初代もなかなかの狂人にして皮肉屋だ。礼拝堂で、少年を喰う、か。
見た目清楚に建てられた礼拝堂の中で、繰り広げられる狂気じみた宴。
その宴の主催者はいつものナリを潜めて、尤もらしく振舞っていた。
いつも騒ぐ・はしゃぐ・すぐ泣くなジルドレが、今は幼さの抜けた顔に妖艶な笑みを貼り付けて
話し掛けて来る客と会話し、洗練された動作で酒を飲み干しグラスを空ける。
ああ、気分が悪ぃ。
理由が分かっているだけに、余計に。
そのうちに礼拝堂のあちこちで乱交を兼ねた賭け事が始まった。
其処かしこで少年たちの啼き声が上がる。
いまはまだ賭け事の装いを成しているが、輪姦になるのも時間の問題だろう。
ジャックは頬杖をついて卓の席に着いたまま、横目でぼんやりとその様子を見ていた。
「ジャック、遊ばないの??」
「ぉおッ?!」
そんなジャックの背後からひょいっと顔を出したのは今夜の宴の主催者───若きチフォージュ城7代目城主、ジル・ド・レだ。
「脅かすなよ!!」
「ぇえ?ごめーん♪」
ケタケタと笑う童顔の男には城主たる、という風格なんてものは全く無い。
このツラ構えで己より年上だなんて詐欺だと思う。
「んで、ジャック、遊ばないの??」
みんな、遊び始めたのに。なんで?なんで??
駄々を捏ねる子どものように、人の肩を掴んでガクガクと揺さぶる。
俺もとくに抵抗しないもんだからガクンガクンと揺れる。あーヤメろ酒が回る。
「気分じゃねぇんだよ・・・・」
ジルドレの手をゆるく払いのけ、溜め息を吐く。
・・・・ざわつく礼拝堂の中、さっきからこっちを舐めるように見ている複数の視線が気に喰わない。
「? こんなに据え膳なのに手ぇ付けないなんてジャックらしくない・・・」
風邪?そう言うと白く透けるような手をぴとっと俺の額に当てる。
本気か冗談か、コイツがやると判断が付け辛い。
「あー・・・まー・・・気分は、悪いわな・・・・」
「酔ったの?吐く??」
背後にまわって今度はさすさすと背中を擦る。本気か天然。
「そーじゃなくてな」
「?」
わからない、ワケは無いと思うのだがこのままでは埒が明かない。
「見られてるぜ」
俺の一言に我が意を得たのか、ジルドレは琥珀色の目を溶かすように歪ませて笑った。
「見せたいヤツには見せておけばいい」
どうせヤツらは指を咥えて見ているだけしか出来ない。
幼さの皮が剥けて、下等なものをせせら笑うような傲慢さを一気に見せる。
そう、見え隠れする複数の視線はあきらかにジルドレに集中していた。
彼の腰や首筋、ワインを飲み干す瞬間に上下する喉元など。
用意された少年たちよりも、主催者の姿に舌なめずりをしている連中が少数とはいえ居るのだ。
そいつらが脳内でコイツを何度も犯していると思うと宴特有の雰囲気ですら鬱陶しく感じる。
まったく、『舐めるように』とはよく言ったものだ。
やれやれ、と俺はまた溜め息を吐いた。
「このツラの皮に騙されたヤツらはどんだけ居んだろーな」
「いひゃいいひゃい!!」
むにーっと頬の顔を摘んで伸ばしてやれば涙目で抗議してきた。
「むー・・・・何すんのさぁー・・・」
ヒリヒリと痛むのだろう頬を両手で擦りながら、ムスくれて恨みがましい目でこちらを見てくる。
「俺はイラつくんだよ、そーゆうの」
隠すことなく不満を告げると、じゃあ抜け出そうとジルドレが言い出した。
主催者が抜け出していいのかと問えば飽く事の無いご馳走を提供しているのだから問題は無いだろうと言ってのけた。
「上に行こう」
「上?」
「礼拝堂の上に、部屋がある」
ジルドレの後についていくと、そこは所謂『隠し部屋』的な作りの部屋だった。
「礼拝堂の・・・祭壇の上部、ってところか?」
ビンゴ?と人差し指を向ければニッと笑って返された。
「初代はまた、豪勢な隠し部屋を作ったもんだな」
「だよね。ビラビラし過ぎ」
「お前が言うかぁ?それを」
隠し部屋、と言ったがその広さは充分な広さだった。
豪奢なテーブルに椅子、本棚などが置かれた部屋に続いてその奥には天幕付きの、広々とした寝室だった。
どちらの部屋にも壁に装飾が施されており、また美しい絵画が掛けられていた。
確かにあの酔狂な宴を抜け出して、酔いを醒ましてくつろぐには丁度いいように思われた。
さしずめ初代もそのような部屋として使っていたのだろう。
もしくはとびきり上等の少年を連れ込んで、この豪奢なベッドで貪っていたのかもしれない。
「ジャックーーー!あそぼーーーッ♪」
「ぐふぅ?!」
ベッドを見つめながらそんなことを考えていたら、イキナリ後ろから腰にタックルされてベッドに倒れこんだ。
「ジルドレ・・・てめぇなぁッ!」
「えへへーーーっvvv」
ぐりっと体を反転させると、俺の上でジルドレがさもご機嫌と言わんばかりに満面の笑みで馬乗りになっていた。
それはもうこの上なくはしゃぐガキと一緒で。
階下でのツンとそびやかした貴族っぷりが嘘のようだ。
「・・・やっぱ詐欺だろお前」
「??? なにがー?」
何がって、目を瞬かせてきょとんとしてみせてる時点で詐欺だろ。
「ぅおい・・・いつまで乗っかってる気だ?」
ガキじゃねぇんだから、いつまでもそうやってっと───
「ぴ?!!」
さわり、と着衣の上からシリを撫でてやるとシャチホコばって変な声を上げた。
「あー・・・なんかあるよな、こーゆう触たっりすっと変な音出す人形」
そう言いつつ再び触ろうとすると「変態オヤジ!///」と叫ばれたあげくに枕で圧殺されそうになった。
年齢的に言ったら『オヤジ』と呼ばれるようになるのはお前が先だろう・・・と
抗議したかったがひとまず枕から脱出するのが先だった。
「あー、もうっ」
「ふえっ?」
がばっと起き上がると、体勢を逆転させてジルドレをベッドへと静める。
「はいはいはい、お子さまは黙ってアメと鞭でも貰って大人しくしてりゃいーんだよ」
「むぅッ!お子さまってなんだよーーーッ!!」
ジャックのあほー、ハゲー(誰がハゲだ)と暴れるジルドレに業を煮やし。
「だってお前、アメだけ鞭だけじゃ満足しねぇだろ」
耳に吹き込むようにそう言うと、「むー」と唸りながらもジルドレは大人しくなった。
それでも、まず最初の『キスのおねだり』は忘れなかったが。
「ん、ふぅ・・・・」
服の上から、というゆるい刺激が焦れったいらしい。
いまいち恍惚に浸りきれないのだろう。捨てきれない理性のせいでいつにも増して恥らんでいる。
腰をくねらせて、ずるずると股を開いていく。
「んんッ、ああっ」
直接触れさせようと伸ばしてきた手を振り払い、あくまで布地の上から慰撫し、蕾を甘やかす。
「濡れてきてんのが丸分かりだなぁ、オイ」
「ぁッ・・・う、ふぅッ、ん」
じんわりとシミを作り出した服地に満足感を覚えて哂う。
いつまで経っても奥に触れてもらえない苦しさに、ただ欲しいだけの子どもはシーツの上で狂い踊り続けた。
「このままで一度出せ」
「ぇ、アッ!ンァあああああッ!!」
布地の上から容赦なくグリグリと刺激を与えると焦らしさに震えながら熱を放った。
紅潮した目元を讃えて喘ぐ様は、薄暗い室内に仄かに漂う熱の匂いを思わせた。
ドレスシャツは彼の汗と悶えのせいでくたくたになっているし、いまの放熱でスラックスの下もびしょびしょに濡れていることだろう。
衣服の下で、ギトギトの体液に汚された陶器のような体を早く見たい。
「あっ」
貪るように服を剥ぎ取る。
非難めいた悲鳴も気にすることなく、闇に浮かんだ肢体に向かって微笑んだ。
直接犯されることを望んでいたのに、晒された体はあまりにも淫らで。
彼はその羞恥にかそれとも触れた外気のせいかふるりと体を震わせた。
───この陶器のような身体を手に入れようとしているヤツが、どれだけ居るのか。お前は知ってるのかい?
思っていた以上に濡れていた股の合間に手を縫うように這わせながら辿ると、何の躊躇もなく秘部へと指を一つ突き入れた。
「はああああああッ?!」
突然得られた最奥への刺激に、軋むように体が仰け反った。
中は灼熱の如く、熟れて融け切っていて。
「なんだ、慣らす必要も無いな。これじゃあ」
ずるりと指を引き抜く瞬間に感じた絡み付くような肉壁に、してやったりとほくそ笑む。
そのまま間を置かずに己の肉棒を彼の中へとねじ込んだ。
「ヒ───あ・・・・ア・・・・・・ッ!!」
碌に声も上げられず、息も出来ず、それでも待ちわびていたことに体は正直で、ようやく得られた熱にむしゃぶりつく。
───まさにアメと鞭だな。
自侭な子どもを手懐ける基本中の基本。
誰もが見目美しい彼を捕って喰おうと彼に近づくが、大抵アメ、もしくは鞭ばかりで彼を手に入れようとして
結局彼の『退屈』という名の逆鱗に触れてハルバードの露と消えるのが常だ。
それはそうだろう。
誰一人として彼を子どもと見抜いたものは居ないのだから。
「あッ、あッ、アッ!」
手加減無しに突き上げに伴ってがくがくと揺れる体はまともに呼吸も出来ず、気を失うか違えるかの一歩手前といったところだ。
いや、もう気を違えていると言われているようなヤツが気を違えるというのは可笑しいか。
壊れる、という方が正しいかもしれない。
これが性欲に壊れたら、いままで指を咥えて見ていた連中がその欲望を吐き出すために殺到するだろうがな。
そのとき、彼は堕ちた娼婦も同然だろう。
「さぁて───全部飲み干せよ?」
酸欠で半ば気を失いかけた彼の耳にそう囁くと彼は惰性のように首を縦に振った。
それが可笑しくて笑うと、彼の中に一気に熱を流し込んだ。
ビチャビチャと音を立てて、飲み切れなかった熱が後口から溢れる。
「勿体ねぇなぁ・・・零すなよ」
「ヒ・・・ふぁ・・・・」
太腿を伝った残液を指で拭ってやる感覚にさえヒクリと引き攣る体に優越感が増す。
まさにすべての子どもの長であるネバーランドの王を制圧した、と言ったところだろう。
「ぁ・・・ジャック・・・・も、抜い・・・・・」
まだ絶え絶えな息を使って乞うてくる子どもをひたと見とめる。
未だ己の中にある熱の存在に震える腰。快楽の余波から抜け切らぬ瞳。
そして遠く階下で聞こえてくる怪しげな宴の酣。
狂宴とあれば尚更。
「ヒぅ・・・・・ッ!」
「今夜は宴なんだろ?」
熱をそのままに、何食わぬ顔で彼の上へと圧し掛かると両手でジルドレの顔を掴み込んでその瞳をべろりと舐めた。
「俺は、客なんだからな?」
目玉を舐められたせいか怯えるように引いた体をしっかりと捕らえながら。
「欲しがるお前の為に散々アメと鞭をくれてやったんだ──今度はお前が俺のアメになってしゃぶり尽くされるんだな」
言い終わらない内に、薄く開いていた唇に舌ごと食い尽くすように吸い付いた。
───
宴は酣。
極上の酒。極上の料理。極上の賭け事。
余興は終わり、淫猥な水音とともに佳境へと。
給仕をしていた少年たちは来客たちの慰みものとなって奇声を上げる。
次々と少年たちを陵辱し、輪姦していく正気とは言えない狂乱の宴の中で。
少年たちの啼き声に混じって響いた、この宴の主の啼き声を聞いたものは居ない。
END
* * *
エロよりエロ前の方が長かったりして(ぅオイ)
いいんだ・・・一度やってみたかったネタだから!!
ジルドレが自分の城の近くに建てた礼拝堂で狂気じみた宴やってたってのは本当です。
むしろジルドレ自身も輪姦されてれば(強制終了★)
ゲフンゲフン・・・なっなんでもないですぅ(ダッ)
* * *
06.02.12.SUISEN
ブラウザバックプリーズ!