借り先⇒HPでセリフなお題
*会話1*
春の穏やかな日差しの差し込むここはバーネット・ベシュー探偵社事務所。
その事務室の窓際で頬杖をついて外を眺める青年。
「さっきから何見てるんだ、ベシュー。なにかおもしろいものでもあるのか?」
バーネットが事務机から顔をあげて窓辺に貼りついたままのベシューを見やる。
「んーーー・・・」
バーネットの声にもベシューは振り向かない。
あまつさえ気の抜けた返事。
面白くないバーネットは立ち上がるとベシューの隣に歩み寄った。
「何見てるんだ?」
ベシューの視線を追って外を見れば、そこには無邪気に遊ぶ子どもたちの姿。
「かわいいよねぇ」
ベシューがほわんと頬を緩ませて笑う。
「───子どもが好きなのか?」
「うん♪すっごく。ほら、あのちいさい子とか。可愛い♪」
ベシューの指差す方向にはちいさな黒髪の子どもの姿があった。
「ああ、あの黒髪の子か」
「いいよなぁ、黒髪って。一番だ」
あーあ。自分の髪ももっときちんと真っ黒だったらよかったのになぁ。
そう言いながらベシューは自分の前髪をちょいと摘む。
ベシューの髪は先端こそ黒いが、根の方は茶色い。
「・・・・・・・」
そんなベシューをバーネットが何やら思案顔で見つめている。
その視線に気づいてようやくベシューがバーネットを振り返る。
「? 何?」
真剣な面持ちの男の口から出てきた言葉は。
「・・・・・そんなに子どもが欲しいんなら協力してやろうか・・・・?」
「・・・・・・」
一瞬言葉もなく固まったベシュー。
ツツツ、とあとずさる。
「何故逃げる」
ガシリとバーネットがベシューの腕を捕まえる。
そして。
「・・・・なんで上着を脱がすの」
ベシューが着ていた薄手のジャケットを脱がす。
うーんうーんと唸り、必死に上半身を反らせながらバーネットの腕の中から逃げようとするベシュー。
「ていうかジム、仕事はいいのか?!」
「・・・・いま2時59分か。もうすこし待て」
「は?!!」
ちゃり、と鎖の音を立てて取り出した懐中時計を見つめるバーネット。
ティーン♪と細く綺麗な鐘の音が刻を告げる。
「・・・・・何なんだ、その不敵な笑みは」
正直逃げ出したくて堪らないベシューの目にはもう涙が浮かんでいる。
「バーネット・ベシュー探偵社の営業時間はPM2時から3時までだからな。これで今日の仕事は終了だ。」
バーネットが口角を上げてニヤリと笑う。
「短ッッ!!!って、だーーーッ!!!
ちょっと待て、警視庁時代に僕が行くといつも開いてたのは何でだッ?!むぅ・・・・ッ」
探偵社の玄関にある『OPEN』のプレートがゆっくり回転して『CLOSE』になる。
事務室の窓のカーテンが、サッと閉められた。
*会話2*
「あの、センセイ」
「何かな、ルパン君」
ここはロンドン、221bのホームズとワトソンの下宿部屋。
「前から思ってたんですけど、センセイの手付きってヤらしいですよね」
フランスから訪れていた稀代の怪盗が、そんなことを口にした。
「・・・・そうかい?」
ホームズが自分の手をスッとひるがえす。
「そう!そこですよ!!その動作がすでにヤらしい!!」
向かいの長椅子に座る怪盗が力を込めて断言する。
「そんな断言しなくても・・・というか、君も奇術を嗜むのなら人のこと言えないだろう」
今度はホームズがルパンの手を指差す。
「僕はそんなでもないと思いますけどねぇ〜・・・」
ルパンが手袋を嵌めたままの手をスラリと出す。
そのまま奇術が始まりそうな手付きだ。
その手をジッと見つめる、ホームズ。
黒い真摯な瞳にまっすぐに見つめられて、ルパンはちょっと居心地悪く感じて身じろいだ。
「なかなかどうして。君の手も充分ヤらしいよ、ラウール」
名前で呼ばれて、ほんの少しルパンの手が震えた。
ルパンは手袋を外さなくて良かったと思った。
高揚した手を見られたら、きっとあの人は口角を上げて笑っていただろうから。
*会話3*
リパーは溜め息をついて隣の席の少女を見遣る。
その少女はいわゆる自分の彼女、恋人というやつなのだが───
はあ。
間髪居れずに、リパーはまた溜め息をついた。
「ねぇねぇ、コールズ!!」
「んぁ?なんだよハルヒ」
それは昼休みのこと
屋上で購買のパンをガツガツと食っていたリパーが振り向くと、そこには愛しい恋人であるハルヒが立っていた。
「男の人って、やっぱり巨乳が好きなの?」
ブッ!!!!
突然到来した嵐を前に、リパーは口に含んでいたものをすこし吹き出してしまった。
「なによ、きったないわねぇ。だいじょうぶ?」
減滅したような顔をしつつも、ゴホゴホと咳き込むリパーの背中をさするハルヒ。
こーゆうところがいいんだよなぁ・・・・って、でなくてッッ
「お、おまえこそ・・・いきなり何聞いてくんだよ・・・・」
ハルヒにさっきの質問の意図を尋ねる。
「ん?ああ、さっきの?んー・・・さっきクラスの男子がそんな話してるの聞いて、なんとなく」
誰だ。そんな話してたヤツは。
後でシメてやる。
リパーは心の中でそんな俗な話をハルヒの耳に届けた不届きモノを呪った。
「でさ、アンタもやっぱ巨乳がいーの?」
質問の内容が若干変わっている。
リパーに対象が限定されている。
「い、いや、おれは・・・べつに・・・・・」
どっちでも、と言おうとしたとき。
「アタシ胸そんなに無いんだよねーーー」
言うが早いか、バッとセーラーの胸元を開けた。
「おまっ……! バカ、いきなり胸元ひろげるな!」
慌ててリパーがハルヒの胸元を整える。
リパーがすぐに整えたのでハルヒの胸が肌蹴ていたのは一瞬だったが、それでも整えていたリパーからはバッチリ見えた。
ううう、おれだって一応男なんだからな?ハルヒ
授業中にも関わらず机に突っ伏してゴロゴロと寝返りを打つ。
ハルヒの胸元を整えるとき、リパーはハルヒの胸にもほんのすこしだが触れてしまっていた。
ハルヒの胸、やわらかかったな・・・・
そんなに大きくないとか言ってたけど、週一くらいでヤればけっこうデカクなるんじゃ・・・・
って、なに考えてんだ、おれ!!!
授業中、ブンブンと頭を振って邪念を掃おうするリパーを隣のハルヒは具合でも悪いのかなと始終見つめていたのだった。
*会話4*
「ルブランさぁーん・・・・・」
芳黒が心もとなげな声を向けているのは、お風呂。
その困った視線の先にあるものは
「お風呂で寝ないでくださぁーい・・・・・」
風呂に浸かったまま大爆睡しているルブランだった。
どうも、ルブランは昨日が原稿の締め切りだったらしい。
ルパンからのお遣いで、芳黒がルブラン邸を訪れた時点ですでにルブランは風呂の中だった。
そしてすでに爆睡済みだった。
脱稿したのが昨夜だとしても、いったい何時間このままだったのか。
風呂の湯はすでにぬるくなってしまっている。
水になってないだけマシか、と思うもこのままでは風邪を引いてしまうだろう。
「ルブランさん、起きてください。お風呂で寝たら風邪を引かれます」
風呂場にそっと入ると、ゆさゆさとルブランの肩をゆすった。
いや、風邪で済むのならまだいいほうか。
ヘタをすれば溺死だっただろうと思うとヒヤリとさせられる。
そして肝心のルブランと言えば声をかけてもゆすっても、いっこうに目を覚ます気配が無い。
「ルブランさぁーん!!!!」
耳元で叫んで、ガクガクとルブランの頭をゆさぶる。
と、そのときルブランの体がズルッと崩れて頭が落ちてきてしまった。
このままでは浴槽の縁に頭をぶつけてしまうと、慌てて芳黒が胸でルブランの頭を受け止める。
ぽすん。
芳黒の胸元に、ルブランの頭がぴったり納まる。
ルブランが一瞬身じろいで、肩で大きく息をした。
「・・・ルブランさん?」
控えめに声をかけるも、ルブランはまた眠りの淵に沈んで行ってしまった。
ど、どうしましょう。
この状況は・・・・・・・
すこし、嬉しいかもしれない。
ほんのすこし頬を赤らめて、この状況を打開するか否かを悩む芳黒の姿がルブラン邸の風呂場にあった。
*会話5*
その日はもう座っているのも億劫で。
人通り少ないし、あぜ道だし、まあいいやと思って。
地面に突っ伏していた。
ゆさゆさゆさ
ちいさな力が、体をゆさぶる。
触れられた感触が弱い。
子どもだろうか
目を開けて、動かすと桜色の着物を着た少女がしゃがみこんでこちらを見ている。
幼さが残る少女。
まだ十くらいか。
その後ろにはさらに幼い男児が立っている。
姉弟だろうか。
黒い、ぬばたまの瞳が四つ、きょとんとこちらを見つめている。
「・・・・横サなってるだけ。なんてもない。・・・放って、行けな」
ニッと笑ってやればふたりの子どもは顔を見合わせて。
少女が立ち上がると手をつないで行ってしまった。
ほんのすこし温かい気持ちになりながら、再び目を閉じた。
それからどれだけ時間が経ったのか。
また、ゆさゆさと体をゆさぶられた。
目を開ければさっきの少女と男児。
「ん・・・まだ来たっけ?放って行けて・・・・・」
「よかった。まだ生きてた」
言いかけた言葉に少女の声がかぶる。
「梅露姐ぇーーー・・・」
サワサワサワとまだ緑の稲穂が風にこすれる音がいやに大きく聞こえた。
ハルヒ、桃太郎、梅露
そして柳凪介。
四人はこのとき、初めて揃ったのだった。