ぼくはその国に『歓迎』されていた。
ぼくは魔法使いのようであり、賢者のようでもあった。
だがぼくはそんなことはどうでもよかった。
きみを一刻も早く落ちつけたかったから。
ボロボロでぐだぐだになった身体。
あらゆる肉が切れて、血は垂れ流れ、ところどころ骨が見えている。
その骨すら折れて
きみはまるで糸を失くしたマリオ・ネット
抱きかかえて、───大理石であろう、よく磨かれた部屋に落ちつかせる。
大理石の床にきみの血が滴り落ちてあちこちに小さく浮いたがそれもどうだっていい。
きみは死んでる
すこしの粗相くらい、どうってことない。許される。
死体のきみを部屋に残して、ぼくは外に出た。
人々が陽だまりの中、散歩している。楽しそうに。
花壇。
ぼくはじょうろを持って水を与える。
そのじょうろの模様がぼくは気に入っていた。
* * *
頭蓋骨。
巨大な頭蓋骨にぐちゃぐちゃになった肉が、血が吸い込まれる。
黒く空いたふたつの目から
顎の空いた口から
吸い込まれて吸い込まれて・・・・・・
わたしはよみがえる
透明な空間で意識を満たしたわたしはふらりと起き上がると。
ふらふらと、屋敷内を歩き回った───歩き回ったというのは変かもしれない。わたしは真っ直ぐ歩いて行ったのだから。
まだ完全じゃない身体は多量の血をこぼしていったけど
痛みも無く、わたしは気にならなかった。
そのままわたしは外に出て行った。
人々が散歩をしていた。
いぶかしむように、不審な目でわたしを一瞥する。
わたしはふらふらと、グラウンドの中央・端へと歩いて行った。
* * *
ぼくはじょうろで水を与えていた。
ふと見た視界の端、草むらのむこうに。
散歩する人々とは明らかに違うテンポの人影を見た。
それが彼女だと気づくや否や、ぼくはじょうろを携えて走り出した。
グラウンドまでひとりで出てしまった彼女はひどく目立った。
マズイ
彼女が魔女だと知られたらマズイ。
そうだ。彼女は魔女だった。
彼女に追いつき、彼女の肩に手をかける。
両肩を掴み上向かせる。
小声で、アブナイ・マズイ・戻ろうと言った。
彼女はまだ目覚めたばかりで夢うつつらしい。目は半開きで、ぼくを認識しているのかどうかもわからない。
それでも行こう、と手を引くと大人しくついて来た。
そのまま彼女の手を引いて邸宅に戻る。
人々の、彼女に対する不審の視線に、内心冷や汗を覚えながら。
大理石の広間をいくつも通り抜けて部屋へ向かう。
その広間のひとつひとつに大きな血だまりが出来上がっていた。
彼女が歩いてきたのだと容易に知れた。
部屋に戻ると、ようやく彼女の意識が明るくなってきたようだった。
ぼくは彼女に告げる。
この国を出よう、と。
この国は魔女にやさしくない。魔法使いであり賢者のようなぼくのことは歓迎するのに。
ふたりで手をつないで邸宅を出て、下り坂をゆっくりと歩く。
いっしょに逃げよう
はやくここから出よう、この国の人々がきみに気づくまえに。
道のつきあたり、梯子があった。
国を出るためにはこれに上り、シスターたちの言うことに従わなければならない。
彼女が先に上った。
顔を出したその先にシスターたちがいるらしい。
下にいるぼくにはそれがわからない。
* * *
もうバレてるな
なんとなく、わかった。
二言三言、わたしを伺うように質問し、わたしがそれに答えるとシスターたちはニヤリと笑って「これを首から提げるように」と言って琥珀色をした、後光
のような金の装飾のあるペンダントを渡した。
「それから貴方の付けている青い勾玉をこちらに」
ドキリとした。
なぜ、わたしが勾玉を付けていることを知っているのだろう。
服の下に隠してあるのモノなのに。
服の上から勾玉をギュッと握り締め、わたしは梯子下すぐに控えている彼を困り顔で───縋るように見た。
その瞬間、彼はひょいと梯子を上り、わたしの上に覆いかぶさるようにやって来て。
そして
END
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こんな夢は珍しいかも。
たいていフツーに自分が夢の中に出てる夢ですから。まったくの空想キャラというのが珍しい。
この後、このふたりは無事に国を脱出できたのでしょうか。
いつか続きを見たいなあ。
そんなことは永久に無いと知りつつも、望んでしまう。
再会の花。
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