唯一の旧友よ
わが朋よ
もう逢わないようにしないか。
あの日のぼくらのために?
いいや
他ならぬ、君のために。
『不変ゆえに変わる愛』
私の唯一無二の親友といえば誰しもがあの男、アルセーヌ・ルパンを思い出すだろう。
だが、彼と親友になるもっと前に。
私にはたったひとりの『旧友』が居た。
その旧友はいまでも時々、私の邸を訪れる。
「ルディール♪」
今日も今日とて、連絡も無しに突然私の庭に現れた。
私の姿を見とめるや否やほうっと顔がほころんで、嬉しそうに両手を広げて歩み寄ってくる。
「ひさしぶりだね、元気してた?ルディール」
旧友は私を『ルディール』と呼ぶ。
いつから、どうしてそう呼ぶようになったのかはもう忘れてしまったが。
「ルディール。ひさしぶりだ、ああ本当に」
キュッと抱きついてきて擦り寄る様は完全に甘えた子どもだ。
嗚呼、お前は本当に何も。
「・・・・いつもと同じだ。お前も、変わらない、な。」
ん?と首をかしげて琥珀の目が覗き込んでくる。
子どもの頃は自分の方が背が高かったが、いつのまにか彼の方が大きくなってしまった。
変わったといえばそこだけだろう
あとは本当に何も何も変わらない。
「それより、ルディール♪」
青い髪。
「アイサツの、キスを」
琥珀の瞳。
「キスを、」
哀れなぐらいに、無垢なそのすべて。
「───・・・・」
望むままに、欲しがるままに口付けを与えてやる。
唇と唇が触れ合うだけの、アイサツ。
幼稚なキス。
こちらから止めないと、彼──ジルドレはいつまでたっても目を閉じたまま。
柔らかな接触に甘んじたまま。
酔いしれる。
「───・・・ジルドレ」
「・・・ん?」
うっすらと琥珀の瞳が開かれる。
夢の国でも見てきたかのように、その瞳はうっとりと、そして輝いていた。
「私が居なくなったらどうする」
突然の問いに、目をぱちくりさせたかと思うと──クシャッと顔を歪ませた。
「ヤダよ。捜すよ。何処まででも」
帰ってこないボクを、ルディールがずっと、ずっと捜してくれたときみたいに。
ずっと捜すよ。
見つけるまで。
ギュッと目を閉じると腕に力を込めて抱きついてくる。
「何処にも行っちゃヤダよ───何処かに行かなきゃいけなくなったときは、言って。」
なにもかもが真っ正直で、なにもかもが無垢なその思考がひどく、痛い。
それはあの頃と何ら変わっていないはずなのに。
ここに居るのは、あの頃のままの彼のはずなのに。
「そのときは言って。何処にも行けないようにしてあげるカラ」
嗚呼、お前は本当に何も変わらないのだな。
変わらなさ過ぎて、変わってしまった。
お前のその純真さも、無垢な心も、無邪気ささえも。
あの頃のままなのに。
変わらないことで、お前は変わってしまった。
あの頃のままなのに、いまここにあの頃のお前はもういない。
時間は進むのに、その時を遡って。
彼の心はより幼く、無垢なものへと変貌を遂げてゆく。
ネバーランドを飛び回る君と、地上の時の流れに身を委ねた私と。
あまりにも遠く哀しい隔たりが、私たちの間に出来てしまったことに。
君は、気づいているのだろうか。
いつか君がその事実に気づくときが来るならば
ほんとうは
私とはもう逢わない方がいいのだろう。
あまりにも深すぎる溝が二人を隔てていることに君が気づいたら───
「・・・そうだな」
じっと見つめる、無垢な瞳の奥に宿るのは、穢れ無き光。
穢れ無き、狂気。
「そのときは、おねがいするよ。ジルドレ」
哀れなまでに純粋なきみに、何と別離を切り出したらよいのか解らないから。
そうして私はまたそれを先延ばす───
それがいけないことだと知りながら。
だいじょうぶ。
そのときはちゃあんと迎えに来るよと。
嬉しそうに笑ったその顔が。
本当に嬉しそうに。
パッと笑ったその顔に、胸が、痛んだ。
唯一の旧友よ
わが朋よ
もう逢わないようにしないか。
あの日のぼくらのために?
いいや
他ならぬ、君のために。
そう。
愛しているから、逃げ出さなくてはならないんだ───
他ならぬ、愛して止まない、君のために。
END
* * *
ちょい消化不良でした。。。−−;
ま、まあ、汁の狂い具合は無垢純真の延長ってことが伝わっていただければ;;;
あとルブと仲良しで、ルブランは変わってしまった旧友の姿をけっこう嘆いてるというのが解れば;;;
・・・わかんないか;まだ汁とルブの過去話書いてないしね;;;
ネタはもう出来てるので・・・・前中後編な形でいづれ出来れば。
* * *