気まぐれだ、こんなのは。
幻覚だ幻想だ偽りだ
おれは愛してなんかいない
愛するなんて面倒だドツボだ
その結果がどうなるかはおれを生んだおふくろと孕ませた親父が味わった。
『その結果』が『おれ』だ。
だから、おれが愛する、なんて。
───気まぐれにきまってんだろ?
「アタシは愛してると思うんだけどな」
真顔でなんの恥じらいも無く、アイツはそんなことをすっぱり言ってのけた。
「───はあ?」
誰が、何を。
チリチリと何かが心に触れる。挑発されてるみたいに。
「アンタが。アタシを」
ぜったいそうだって。目の前の女は自信たっぷりにそう告げる。
「愛してねぇよ」
気のせいだろ、つーかフツーそうゆうことって自分で言うか?
「日本人は意思表示がハッキリしないって言われがちだから、自分の意見ははっきり言いなさいって。叔父さまが」
ハッキリさせる事例が違うような気もするが。とゆーかオマエの叔父さんが言いてぇトコはそこじゃねえだろ。
「まあ、それはいいとしてさ。ぜったい愛してるって」
「───だから愛してねぇって。だいたい」
単なる気まぐれだろ?愛してるなんざ。
そっけなく言い返せば
「何言ってんの、そんなのトーゼンじゃない」
予想もしない答えが返ってきて思わずハルヒを振り返っていた。
かち合った視線。その目が怖いくらいに澄んでいて息を呑んだ。
「『好き』になるには理由がいるけど、『愛する』ことには理由なんていらないもの」
だから『愛すること』は『気まぐれなこと』よ。理由も無く愛しちゃうんだからね。
「・・・・・・・」
言葉もない。なんでコイツはこうなんだ。
おれは体の奥のほうから熱くなるのを感じた。
これ以上顔を合わせていると熱の昇った顔をもろに見られてしまう。
フイッと顔を背けて、ふと。
「・・・・オマエ、さっき叔父さんから自分の意見はハッキリ言えって言われたって言ったよな?」
「?うん」
「百歩譲っておれがオマエを愛してるとしてよ、だったらオマエはどうなんだ?」
アタシ百歩も譲われなきゃなんないの?不服そうにぷーっと頬を膨らませて腰に手を当てる。
でも、そうね。
「愛してるわよ?単なる気まぐれってヤツでね♪」
人差し指を顎にあて、ウインクまでされてしまった。
こりゃ完璧におれの負けってヤツか・・・・・?
完全な敗北を感じ取って、クラリと軽い眩暈を覚える。
分が悪ければ日も悪い。
今日はこれにて退散といったところか。
何の挨拶も無しに踵を返して歩き始める。
すると背後から
「“愛するとはなんでしょう?”」
厳かな問い。
答えはもう知っている。だから言ってやった。
「“ただの気まぐれ、愛する故に”」
───というか、最初からそれで認めちまってたんだな。
愛とは故無き気まぐれ、それを気まぐれと称すなら貴方はもうそれに気づいてる。
END
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やっぱハルヒの方が感情面では大人ですかね^^
愛した結果がどうなるか。それはまだ誰にも分からない。
愛するふたりにも分からない。
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