ほんとうに闇に生きる者なのかと

 目を疑いたくなるほど

 夜の闇にも染まらず煌々と輝くあなたはまるで───

 

 

 

 『わたしを滅ぼす真昼の太陽』

 

 

 

「あなたは輝くべき舞台を間違えましたわ、アルセーヌ」

「クラリモンド、何だい?突然」

 顔を上げ、振り返った気配。

 きっといま彼はこちらに向かって融けてしまいそうなほど優しげな微笑を浮かべ、首を傾げているのだろう。

 その微笑は、きっとどんな陽だまりよりも温かいに違いない。

「だって・・・闇夜に太陽では、土俵が違いすぎますわ」

「闇夜の太陽?私が?」

 クスリと笑った声が、空気を伝わる。

 目を細めただろうか。微笑は深まっただろうか。

 

「だって、あなたを見ていると、目を閉じているのに、眩しい。」

「あなたが通るところ、夜であろうと灯りが無かろうと道が出来る」

「真昼は明るく、温かな太陽。闇夜は絶対的で、圧倒的な強い力を誇る、太陽」

 

 なんて慈悲深い、なんて猛々しい。

 温かな腕で優しく抱きしめる加護のある反面、この人が手を振りかざせば真夜中にもたちまち陽は昇るのだろう。

 ああ、なんて。

 

「そこまで御賞賛頂けるとは汗顔の至り───・・・光栄です」

 カツ、という靴音に続いて衣擦れの音。

 足を片足にクロスさせ、胸に手を当てて一礼の儀をしたようだった。

 

 ああでも、そんなあなたに。

 そんな、あなただから。

 

「わたしが触れたら、きっと灰になってしまう」

 そう言いながら、彼に向かって両の手が差し伸べられているのは何故だろう?

「ならない」

 するりと伸ばした腕の脇をすりぬけて、力強い腕がこの体を抱き上げる。

 ああ、彼の手は見えないはずの目も眩むほどの、眩い光を放っていて。

 痛いほどの瞬光なはずなのに、何故かそれは酷く温かい。

「ね、ほら。ならないでしょう?」

 悪戯っ気たっぷりに、でも少しくすぐったそうに、微笑みを含んでいるのが分かる。

「でもやっぱり太陽ですわ・・・温かいですもの」

「おや、それは良かった。暑くて堪らない、真夏のよう!なんて言われたら落ち込むところでした」

「まあ」

 

 鼻先と鼻先が触れ合わんばかりの距離で顔を見合わせて、ふたり、クスクスと笑う。

 そのまま彼は移動して、わたしはスプリングの良いベッドの上に優しく下ろされ、その隣に彼も座った。

 彼の手が伸びてきて、両頬を包み込む。

 

「私が闇夜の太陽ならば、クラリモンド、あなたは真昼に昇る月でしょうね」

「そうですわね・・・真昼の月は、目立ちませんわ。誰も、気づかない。何の存在価値も無い・・・」

 

 太陽の昇りきった真昼に、夜に忘れ去られたように青空にぽつんと残る月。

 その存在は、中天にて輝く太陽の瞬きに一瞬にして消し去られてしまう。

 昼にも夜にも見放された存在。

 

 まるで、わたしのように。

 

「クラリモンド」

 両頬に添えられた手の温もりと空気を震わせて呼んだ声音が、彼の胸のしめつけを教える。

 彼に悲しい気持ちになって欲しかった、わけではないのに。

「ごめんなさい・・・」

 いいえ、と吐息に近い呟きが頬のすぐ横で聞こえたのに驚いて顔を引こうとするが包み込む手に押さえられる。

「言葉が足りませんでしたね、クラリモンド。

 たしかに真昼の月は目立ちません・・・が、青い空に慎ましく浮かぶ透き通るような白は美しい。

 そうしてそんな美しい月が真昼に輝いていることを大概の人間は知りもしなければ見つけることも出来ず過ごすのです。

 真昼の月は、隠された美しさ、見ようとするものだけが見れるのです。

 その清廉な美しさを。

 幸運にもそんな真昼の月を見つけ出せたことを私は───」

 

 真昼の月の例え話のはずが、わたしが真昼の月そのものになっている。

 きっと包まれている頬はみっともないほどに上気してしまっていることだろう。

 だって、顔が熱い。

 瞼の裏側で、瞳がジンとしていることに気がついた。

 

「とても、光栄に、嬉しく思っています───」

 

 

 ああ──やっぱり彼は真昼の太陽だ───

 

 

 わたしを滅ぼす真昼の太陽。

 こんなにも眩しく、熱く、力強い光では。

 包まれたところから、わたしは灰になって崩れていってしまうだろう。

 

 

 それなのに、わたしを滅ぼす真昼の太陽はこんなにも優しく、温かく、わたしを幸福にしてくれる。

 

 

 

 END

 山●達郎の『太陽のえくぼ』を聞いてたらこんなルパクラがむくむくと育ちました(笑)
 って、もしかしてクラリモンド視点で書くの初めて?(ひゃー)
 クラリモンドはモノホン吸血鬼ってわけじゃなくて
 バートリの血統をそう例えてて、吸血鬼になぞらえたような生活をしてるってことにしようかなとかもやもや。
 目は開くけど見えてない。けどそんな目でも映った人が穢れてしまう(と思ってる)ので閉じたまま。
 んで、目が見えないぶん他の知覚がもの凄い良くて
 そのせいでちょっと人間離れしてて、吸血鬼を囁く声に拍車がかかってる、と。
 よし、設定に加えて置こう。(ここでキャラ設定決定すな!/殴打)
 ありがとう●下達郎!(違)

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 06.09.29.SUISEN