テムズ川。
いつ見てもだだっ広い川だと思う。
対岸には街の明かりのひとつひとつが集まって揺らめいている。
陽炎のように。
そしてソイツも陽炎のように現れた。
「テムズ川沿いっつったって広ぇんだぞ、あの好色色欲バカ。」
「あはは、ご心配なく♪ちょうどよくココにいるから♪」
───!!
バッと振り返ると手紙でオレを呼び出した主がそこにいた。
──きっと青が似合うんだろーね──
「ジルドレ!!」
「はぁーいv おひさしぶりィーーージャック、元気してたぁ?」
立ち込めた暗闇に、不気味なまでに青い髪をなびかせたジル・ド・レが、癇に障る笑顔で佇んでいた。
琥珀色にキラリと光る目はまるで猫のようだ。
「てめぇ、その気色悪い撫で声で話しかけてくんなっていつも言ってんだろ!」
「おや、一年ぶりだというのにジャックはつれない♪せぇっかくこのジル・ド・レが会いに来てあげたのにィ。」
「せっかくも何も頼んでねぇ(怒)
んなにナヨナヨしてっとフランスの『英雄』ジル・ド・レの名折れになるんじゃねぇのかぁッ?!」
「はっはっはー♪もうとっくの昔に名折れしてるもぉーん♪♪♪」
ケラケラ笑う様はホントにガキどもと一緒だ。ほんとーに腹が立つ。
ジル・ド・レがフランスの英雄なのは本当だ。
百年戦争のオルレアンの戦いであのジャンヌ・ダルクの副官として、活躍したフランスの大貴族だ。
しかし百年戦争なんて遥か昔のことで、つまるところ、こいつはその七代目。
そんな『英雄』にも、どす黒い影は生まれるらしい。
初代ジル・ド・レはジャンヌの処刑以後、当時禁止されていた錬金術や黒魔術に手を染め、
黒魔術の生け贄のために少年の大量虐殺を行った。
『聖女』を信じた男は、その反動ゆえか男色に走り、最初は生け贄目的だった少年たちを己の欲の為に殺していったのだった。
まあ初代のイタイ話はいいとして。
つまりだ、初代が男色に走ったということはもちろんコイツも。
「ねーーーぇ♪ ジャック、おれのモノになんない?」(直球勝負☆)
「ならん。」
「チッ」
「いまの舌打ちはなんだ? つーかオレは確かに両刀使いだがオマエとだけはやらん。」
こんなヤツにみすみす殺られるつもりはないが、過小評価してるワケでもない。
オレとタメを張れるだけの殺人狂なのだ、こいつも。
「ちぇーーーっ☆おれ、少年ラブだけどジャックだったら特別許可してあげるのに。(ぶーぶー)」
「いらんわそんなもん!!」
「ジャック冷たいーーーー」
ああもうはやく帰りたい。
ハルヒのフシギ発言に付き合ってる方がまだマシだ。
「だいたい、今日呼んだのは何の用だ?まさかこんなくだらねぇ雑談の為じゃ無ぇだろ。」
んーーーそれもあるけどーーーー♪
目の前のお天気ヤロウを本気で葬り去りたくなってくる。
ふるふると拳を震わせてるオレの顔を、ジルドレが突然覗きこんだ。
すべてを見透かす、琥珀色の獣の目。
鋭く切れそうな目が不穏に輝いてオレを射抜く。
それはほんの数秒だったが、オレには酷く長く感じられた。
いつものニヤついた顔が一瞬、真面目な顔で、言った。
「ジャック、君はどれくらい愛してしまったの。」
オレはその問いには答えなかった。
その夜のジルドレとの会話はそれで終わった。
アイツは何も知らずにああ言ったのかもしれないし、何もかも見越したうえでの警告だったのかもしれなかった。
ジャック、君はどれくらい愛してしまったの。
「・・・・無くてはいられないほどに。」
帰る途中。
夜空に星が宝石のように溢れているのを見て、オレはようやく空に月が無いことに気がついた。
END
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イラストよりも早くこんなに文章でいいキャラ出してくれてありがと、ジルドレ。(笑)
ジルドレの簡単な紹介は文章中でいいとして、このジルドレ、童話『青髭』のモデルと言われてます。
青髭はメソにまかせて(THE☆失言)若い七代目には髪を青くしてもらいました^^
リパーを振り回す良いキャラになりそう。しかしこう見るとリパーって結構まとも?(笑)
前半はリパーの一番心穏やかなころの感じで。なのでいつものリパーな感じじゃないです。(ないハズです;)