『愛の嵐 』─踊女帝VS盗帝─

 

 

「パトロン、書簡が来てますけど」

海上に築き上げられた城、その回廊をゆったりと歩き、陽の光を楽しんでいた盗帝のもとに側近のジルベールが駆け寄ってきた。

「書簡?何処からだ?」

サッとジルベールから書簡を奪い取ってザッと目を通す───と。

突然、真紅のビロードのケープをバサリと翻して盗帝が回廊を疾走して行った。

「パトロン?!!」

驚いてジルベールが声を上げた頃には、盗帝の姿は既に回廊には無かった。

 

一方、城の中庭では樹帝が温かな海風に吹かれながら木陰でのんびり過ごしていた。

近頃ではようやく盗帝が強烈なアタック★を控えて、どうにか話もできるようになっていた。

今日もゆっくり話ができるといいな───そんなことをほわんと考えていた、まさにそのときであった。

「あああああああああ!!!居た!!アタシのベシュー!!!!」

「?!!」

天空を突き抜けるような女性の悲鳴に振り向いた瞬間、樹帝の視界は真っ暗になった。

 

「しまった!遅かった!!」

回廊から樹帝を捜して息を切らして走ってきたのは盗帝。

中庭の光景に舌打ちをする。

「よかったああああああ!!やっぱり生きてたのねーーーっvvv
  嗚呼!アタシのベシュー!!もっとこっちにいらっしゃい!!接吻してあげるから!!
」

「ふぐぅ〜むぐぅ〜!!」

・・・・抱きついて押し倒してるあげくに自分の胸の中で窒息死しかねない相手に向かってもっとこっちにも何も無いと思うんだが。

樹帝を名指しで呼び、抱きしめている女性は感極まって相手がどういう状況かを全く把握していないらしい。

「踊女帝!!」

「あら、盗帝」

盗帝の一喝に、踊女帝と呼ばれた女性ははたと我に返り振り返った。

「お・・・オル・・ガ?」

そこでようやく解放されたベシューがポツリと呟いた。

「まあ!憶えててくれたのね!!嬉しいわ!!アタシもアンタが好きよベシュー!!!!」

名前を呼ばれただけで何故それを「好き」と同意にするのか。

さしもの盗帝もクラリと眩暈を覚えた。

 

踊女帝は観劇や踊り、音楽といったものが盛んな国の女帝である。

彼女自身見目美しく、舞台に立ったりと生き生きと活動していて女性としてはとても魅力的なのだが。

如何せん、盗帝にとって彼女は。

「やっぱり感動の再会って女の特権よねvね、ベシューvvv」

・・・・恋敵なのである。

 

「・・・・お言葉ですが踊女帝、恋愛に男女は関係ありませんよ」

そのままガッと樹帝の腰に腕を回し、自分の方へと引き寄せる。

「あーら、抱きしめて貰うにしろするにしろ、柔らかい女の肌の方がいいわよねーね、ベシューv」

踊女帝が負けじとガシッと樹帝の首に腕を回す。

「キスだって、女の子の柔らかい唇の方がいいでしょう?ねっvベシュー・・・・」

「�瑤佞┐┐┐┐─�!!」

んーっv、と唇を寄せてきた踊女帝に、樹帝が顔を真っ赤にしてうろたえる。

「ほらほらほらっっ!!嫌がってますよ踊女帝!!」

寸でのところで盗帝が樹帝の口を手で覆い隠す。むぐっと樹帝が呻いたがお構いナシだ。

「何言ってるの!!照れてるのよっ!!
 だいたい許婚の接吻を拒むわけが無いでしょう!!さあさあさあ早くそのお手をお外しくださいましっ!盗帝!!!」

「アンタらただの幼なじみでしょーが!!!!」

「ふぐぅ〜〜〜っ(@@)」

 

「・・・・・・」

庭に面したテラスで、無言で佇みながらその様子を眺める影がひとつ。

「夜帝・・・じゃなくって、えっとルブラン、さん・・・・今日は止めないんですか??」

その後ろからぱたぱたと駆け寄ってきたのは夜帝がこの城に来て以来、彼の身の回りの世話を一手に引き受けている侍女の芳黒だった。

「恋は盲目だ。・・・いま止めに行ったら嵐に巻き込まれる」

「はぁ」

芳黒の問いに、目の前の光景に呆れきった様子で答えながら夜帝はくるりと身を翻す。

「さて、この暇に私たちはお茶だ」

「はいっ♪」

夜帝と芳黒が庭に足を踏み入れることなく去って行くその後ろで。

 

「アタシの方が先にベシューを好きになったのーーーっ!!!」

「恋愛に先も後もありませんよっっ」

「ふぐぅ〜む〜うぅ〜(@@)」

 

盲目になった恋の信者が二人、愛するただ一人の人を嵐に巻き込んでいた。

 

 

これもひとえに平和だからこそ訪れる嵐。

 

 

END
***

オルガ女王ご乱心(笑)
建て前は男女がどーの言ってますが
オルガは男が恋敵だからといってそれを差別的に見ることは無いと思う。
同じ立場で正々堂々☆って感じで^^
それゆえに捲き込まれるのはベシューくんですが(笑)

ブラウザバックプリーズ!

ブログ掲載 :06.03.12.
再掲載 :06.04.14.SUISEN