『解放の日』

 

 

明日は大樹の贄になる、という日の前日。

それでもいつもどおり樹帝は自室の窓辺で、ぼーっとしているのだった。

 

今日はやけに臣下たちが騒がしいな

 

緊張した面持ちで、慌しく動いている。

きっと明日の貢の儀式の為だろうと樹帝は勝手に解釈し、とくに気にもしなかった。

部屋の外の慌しさから窓の外への景色へと意識を移す。

眼下に広がる彼の国は、今日も豊かだった。

 

それも今日で見納めか───この景色のひとつになれるのは嬉しいと思うが、そうなってしまってはもう見ることが叶わないのが悲しい。

 

焼けるようなこの青い空を。

ひび割れること無き肥沃の大地を。

 

またこれから数十年───護ってゆくのはこの命だとしても。

小窓から見上げた空に、届かないと知って樹帝は手を伸ばした。

 

その瞬間、空に夜が訪れた。

 

「?!」

陽が落ちることもなく、今の今まで真昼だった国を夜が覆っている。

細い、弓のような月が出ていた。

廊下で騒いでいた臣下たちはさらに騒がしくなり、大挙して一斉に、狂ったように樹帝の部屋の扉を叩く。

突然始まった怒涛のように扉を叩く音に、樹帝は慄くしかなかった。

 

王を、贄を逃がすな。

 

狂ったように謳い叫ばれる輪唱。

扉が破られた暁には、無数に伸びる手によって四肢を引き千切られると感じた。

退路も無く、日々居座り続けた窓辺に縋るように後退った。

 

「御取り込み中の所申し訳ありません樹帝───私からの書簡には、お目を通して下さったでしょうか?」

 

背後から掛かった奇妙に落ち着いた声音に、樹帝は身を震わせた。

恐る恐る振り返ると、そこには深紅のケープを羽織った金髪の男が佇んでいた。

片目を、モノクルで隠している。

「やはり、手元には届かなかったのですね」

自分を見て、ただただ怯えるだけの樹帝に男は苦笑で返した。

「全くこの国の大臣たちと来たら───この盗帝の書簡を通さないなんて、なんて卑しいんだろう!!」

「え─── 盗帝?」

男の口から出た男の意外な正体に、樹帝は目を見開いた。

「そうですよ」

盗帝は長い髪を流して微笑む。

羽織っていたケープをバサリと翻し、その中に樹帝の身を包み込む。

 

「大樹の国を統べる王にして柱、樹帝。貴方を盗みに参りましたよ」

 

このふざけた国からね。

視界を埋め尽くす温かな深紅の中で、樹帝は夢うつつにその声を聞いた。

 

 

どんな歴史にも崩れ落ちる瞬間が来る。

 

 

END
***

BBはルパンがベシューをおもいっきり加護下に置いてる気がします(原作でも!)
ルパンの宿敵と言えばガニマールですが、それよりもベシューはもっとルパンに近づいてる感じ。
たぶん、一緒に事件解決に取り組んだことがガニマールよりも多いからだろうなぁ。
兄弟みたいなBBが好きだーvvv
でも、お兄ちゃんは弟可愛さのあまり虐めまくってますが(笑)

ブラウザバックプリーズ!

ブログ掲載 :06.02.02.
再掲載 :06.04.08.SUISEN