「クラムボンってさーおいしそうだよねーー」

「・・・・はい?」

ペラペラと本をめくりながら目を輝かせる隣の恋人。

飛び出した本日のニューワードは

 

クラムボン。

 

「・・・ってなんだよ、ソレ」

恋人は今日は珍しく母国の本を読んでいる。日本語で書かれたソレをジャックは読むことができない。内容もわからない。

「さあ?でもなんかイメージ的に貝みたいでおいしそうじゃない?」

そんな読んでる本人もわかんないようなものを読めないおれにどう分かれと?

気持ち泣きたくなってきたジャックであった。

「貝?エスカルゴとか?」

しかし機嫌を損ねるのもイヤなので適当に合いの手を入れる。

「ううん、巻貝じゃなくって平べったいヤツ。焼いたらパカンって開きそうなヤツのおっきいの!」

少女がジェスチャーでその大きさを示す。

「・・・いや、そりゃ大きすぎるだろ」

彼女の手は宙に見えない輪郭をいっぱいに描いていた。

そんな大きな貝、捕る前にこっちが食われるだろうとか、捕ったとしてもそれを焼くモノがねぇだろ、などとも思ったりしたが。

「ハルヒ、おっきいのがいいもん」

でね、中にはきっとキラキラ透明のゼリーみたいなのがギッシリ詰まっててね、

スプーンですくって食べると少し水っぽく融けた感じですっごくおいしいんだよ♪

「・・・・・・」

恋人は脳内をすでに在らぬ方向へとその想像を膨らませて幸せそうにしているので喉元まで出かかったツッコミは抑えることにした。

「・・・で?結局その本の中ではクラムボンは食われちまったのか?」

ただし行ったきりになられると困るのでひとまず話題を元に(?)戻した。

はたりとした少女がブンブンと首を振る。

「ううん。カニが『やまなし』っていう山になってる食べ物を川底で見つけておしまい」

「?なんだそりゃあ」

ぜんぜん話と関係ねぇじゃん。そう言うと。

「話の最初でカニの兄弟がクラムボンのことを話してたの」

「ふーん?」

「あ、クラムボンって、食べられはしなかったけど死んじゃったみたい」

「なんで?」

「さあ?カニの兄弟がそう言ってる。『クラムボンは死んでしまったよ』って」

「ワケのわかんねぇ話だなあ」

がしがしと髪の毛をかき回す。ぜんぜん繋がらない、変な話だ。

「書いた人が見たユメなんじゃない?」

ぱたんと少女が本を閉じる。

「ほら、ユメってツジツマ合わないこと多いじゃん」

「・・・・まあな」

それにしたってそれを文章にしたらワケ分かんなくなるのは目に見えてんじゃねーか。

思いつつも反論できないのは、少女の横顔がまるで夢見るようだったから。

 

 

『猟奇殺人鬼と異国の少女が恋をしたよ』

『恋をした』

 

 

「・・・考えてみればアタシたちもクラムボンなみにワケわかんないよねーーー♪」

「はあ?なんでイキナリそうなんだよ?てかソイツよりはワケ分かると思うぞ、ぜってーに!」

 

 

わたしの幻燈はこれでおしまいであります。

 

 

 

 

END

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「やまなし」。宮沢賢治大好きでほぼ全部読み漁りましたが学校の授業で取り上げられたこれは内容をやや忘れ気味でした^^;

『クラムボンは笑っていたよ』、か。『死んでしまったよ』と云った後に再び『笑ったよ』と言うんですよね。ちょっと深読みしてしまう(笑)

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モドル/6, で、かぐや姫って結局何しに来たの?