しゃきしゃき、さくさく、ぱりぱり・・・・・
「ん・・・・もう、いい」
フォークを置き、まだ残っているサラダの皿を退ける。
「え・・・?えぇッ?!」
思わず部下たちが小さく悲鳴を上げた。
そう。
それだけでも意外だったのに
自分たちの主人が、大好物であるはずのアン・ココテ(卵入りシチュー)に一度も口をつけずに食事を終わらせてしまったことに。
彼──アルセーヌ・ルパン──の部下たちは、拠点の酒場で(むしろ酒場の地場全体が)揺れに揺れたのだった。
・・・・・・酒場の主人にゃ迷惑だ。
注意☆ギャグとシリアスの間を彷徨う話です。
「パトロン・・・ぜんっぜん食べてない・・・・・・」
自分らの主人が去ったあと、彼の座っていたテーブルに、それこそこれ以上どうやったら群がれるんだというくらいに部下たちが群がる。(もはや『群れ』というより『山』である)
遠目から見たら、新緑も紅葉も枯れかけ☆もある色とりどりの山に見えたことだろう。
「そんなことはどーでもいいのッ!!(悪かったな枯れかけで!!/泣)」
山、同時に吠える。(同時に一部の山から居た堪れない呟きも漏れる)
・・・・・はい、すいません。あなた方の主人のことでしたね。
「そうだよ!・・・・パトロン、今朝も昼も・・・・ってか最近あんま食べてないよな」
「たたでさえ菜食で、つまりは偏食だってゆーのにさ」
「あと小食だよなぁ・・・・・」
部下たちがう〜ん、とぼやくたびに山がゆら〜りゆら〜り左右に揺れる。
正直、見ていてとてもコワイ。
「小食でも、肉とか少しでも食べてればバランスいいんだけどな」
「菜食だもんねぇ・・・・・」
「それで小食だもんな。バランス悪いよ。よく倒れたりしないよな、パトロン」
キミタチ(山)もバランス悪いよ。そしてよく倒れないもんだ。
「ウッサイ!!!!」(くわッッ)
・・・・・はいはい、黙ってますよ。もう。
「てゆーか・・・・アン・ココテまで残しちゃうってさあ・・・・」
けっこう、重症じゃない?との呟きに、ウンウン、と同意の声と共に山が上下にぐうんぐうんと揺れた。
・・・・・きっと直下型地震が起きたときの山の鳴動はこんな感じだろう。
「どーしたんだろうね。恋煩いとか?」
「んー・・・・でもなんか、(経験上)違うような気が・・・・」
「そうだよな、そういうときってまず感情の起伏が激しくなるもんな、パトロン」
それでおれたちがいつもとばっちり食うんだけどさ〜〜〜・・・・
メソメソと泣き出す山。中腹部分が異様に膨れ上がる。ずいぶんと柔軟性の高い山である。
「じゃ、やっぱ具合悪いのか、な・・・・・・」
心配そうに眉をよせる部下(その1)。
「医者、攫って来ようか?」
すでにスタンバイ気味の部下(その2)。
「うーん・・・でもまだ具合が悪いと決まったわけじゃないし・・・・」
「勝手になんかやらかすと後が怖いしな」
また山同士(もはや山扱い)が頭を寄せ合い、うーんと唸りだした、そのとき。
・・・・・ガター・・・ン・・・・
酒場の奥の宿部屋から聞こえてきた微かな、しかしはっきりとした物音に、部下たちは一様に顔を見合わせた。
「パトロンだッ!!」
一斉に叫んだかと思うとドドドドッと山が崩れ──この時点で何人かが上の者の下敷きとなり脱落する──皆、一目散に宿部屋へと通じる廊下へと走る。
入り口狭き廊下へ。
「はぐあッッ??!」
ぎゅむうっっ
ここで大半がつっかえて脱落する───残りはその狭き門を潜り抜けられし4・5人の部下。
それぞれ先を争うように(ときには踏み潰すように)廊下を走り抜ける。
実際、ここで数名が踏み潰されて脱落する。(廊下に点々と屍が。)
「パトロンッッ?!」
結局、最終的に主人の部屋のドアを開けて入ることができたのは、わずかに二人であった。
倍率高ぇな・・・・・(天の声)
***
カツカツカツカツカツ・・・・・
バタン、トサッ。
「ふう・・・・・」
部屋に戻ったルパンはベッドに腰掛けると額を押さえて短い溜め息をついた。
また食事を残してしまった。最近ただでさえ細い食がいっそう細くなってしまった。
・・・・なんか、眠ってる時間の方が増えてる感じがするし。
「・・・・どっか、悪いのかな・・・・・・」
それとも単に疲れているのだろうか。ここのところ、大きな冒険が多かったから。
ひさしぶりにルブランのところの長椅子でゆっくりしたい───そう思ったとき。
「・・・・・あれ?」
視界が揺れて、意識も、揺れた。
目がさめると床に倒れており、数秒ぼんやりしているうちに部下が二人、ドアを開けて飛び込んできた。
「パトロンッ?!大丈夫ですか??!」
部屋に飛び込んだ二人は主人が倒れたままぼんやりとしていたので、やはり具合が悪かったのだと確信した。
「ああ・・・・悪い。だいじょうぶだ・・・・・・」
言って上体を起こそうとする主人にひとりが手をかして肩を支える。
どうにか上体は起こせたものの、主人は座り込んだまま、立ち上がることはしなかった。
「・・・・・顔色悪いですよ」
俯いて、金糸の合間に隠れてはいるが、その顔色は決して良好と言えるものではなかった。
「医者、呼んできますね!(むしろ病院直行ですね!)」
「・・・いい、たいしたことな」
「ダメですッッ!!!!(パトロンの体はもうパトロンひとりのものじゃないんですよ??!)」
「・・・・・・(いま、変な叫びが混じったような・・・)」
渋る主人を部下二人が抱えるように支えて、すぐさま病院と医者の手配をした。
***
「ルパンくん、ひさしぶりだね!具合どう?」
「なんっっっでドクターが。(�瑤討�ここフランスの病院だろう?!)」
ルパンが驚くのも無理は無い。病室(ちなみにVIP専用☆)に現れたのはイギリスで懇意にしてもらっているドクター・ワトソン。
「元気なだけが取り得な君だろうに・・・・まったく」
「先生まで・・・・・」
そして同じく懇意にしてもらっているイギリスの名探偵、シャーロック・ホームズまで一緒であった。(まあ当然といえば当然。)
「きみの部下がいきなり転がり込んできて、きみが大変だって言うから急いで来たんだよ」
にこっと笑うドクター・ワトソン。その間にもルパンの容体をチェックしていく。
「来た、というよりは連れて来られた、という方が正しいがね」
見た目不機嫌そうに、探偵が体を揺する。
「・・・あいつら、ロンドンまで行ったのか・・・・・?」
「君のロンドン常設の部下だとか言ってたが」
「常・・・・・��設ッ?!(常備じゃなくて?!設置されてるのか??!)」
どうやらルパンも知らないうちに部下の行動範囲は広まっていた模様☆(むしろ必須範囲)
「過労だよ、ルパンくん。あと、ちゃんと食事とらなきゃダメだよ。菜食は・・・まあ、仕方ないにしても、それなりの量は食べなきゃ」
診察を終えたドクターがホッと息をつく。心配な表情がすこし和らいだ。
「肉食にはいつも文句をつけるくせに・・・・・(ブツブツ)」
釈然としないご様子の名探偵。しかしこちらも苛つくように体を揺するのを辞めている。
「きみのはただの好き嫌い!肉だけ、なんて菜食より体に悪いじゃないか!!もう!」
「・・・? センセイ、野菜嫌いなんですか?」
「べつにそういう「そーなんだよ、もう。大人気ないよね、このトシ(三十代☆)になってさ!!(ハッ/嘲笑)」
「・・・・・・・」
「あれ?ホームズどうかした?(ニッコリ★)」
「・・・・いえ別に。何でもゴザイマセン・・・・・・(滝汗☆)」
「・・・・・どくたぁ、つよーい♪」
そうしてコロコロと楽しそうに笑い出す。
そんな様子を見て、いつもの呼び方で呼ばれた二人は安心したように、そっと視線をあわせた。
ドクター・ワトソンによく休むようにと言われて、二人が帰ったあと、ルパンは浅い睡眠をとった。
浅い無意識と意識の狭間をとろとろと泳いでいると、ふと見下ろすされているような視線を感じる。
誰だろう
部下か、誰かか・・・・?
ふうっと目を開けた。
「�堯�□゜!うわあッ、が、ガニマール?!」
なんとベッドの傍らに立ってルパンを見下ろしていたのは宿敵(とゆーか遊び相手?)のガニマール警部であった。
しかしガニマールもルパンが目をさますと思ってなかったらしく、少し顔が驚いている。
上体を起こそうとしたルパンだったが。
ぼふっ
「起きるな。寝てろ」
ガニマールがそれを制して、枕に頭を押し付けられる格好となった。
何かしてくるか、と身構えたが何事も無く手は退けられた。
「?、??ガニマール?」
わけが分からず相手を仰ぐが相手は憮然とした、気難しい表情のままだった。
「捕まえないのか?チャンスだろうに」
そういえばガニマールのチープな部下たちの気配が無い
一人で来たのだろうか
だがそれはおおよそ彼らしくない行動だ
するとガニマールが口を開いた。
「・・・・犯罪の中途で倒れたわけじゃないんだろう?」
いまだ表情は眉間に皺を寄せていたが。
「まあ、画策はしてたかもしれないがね」
それがなにか?と揶揄するように返すと。
「それでお前を捕まえると俺の自尊心が納得しない」
「・・・・は?」
思いもかけない言葉にぱちくりと目を瞬かせる。
「あー、だから」
少し苛ついたように、ガシガシと頭を掻く。
「いまお前を捕まえれば俺の『義務感』は満たされる。こっちはただ捕まえれば満たされるものだからな。ただ・・・」
そしてガニマールの苛つきと対照に、ルパンはふつふつと悦びの感情が湧き上がってきていた。
口ごもるガニマールの先を言葉にしていく。
「つまり君は、この状況で僕を捕まえるのはフェアじゃないと」
「・・・・・・」
「君は何某かの事件──僕いわく冒険の中で、僕と勝負したいと」
「・・・・・・」
「でも君が───」
「分かったならもういいだろう!続きは現場でだ!!もう寝ろ!!」
横になっていたルパンの上体に、上掛けをバサッと乱暴にかけるとガニマールは大股で病室を出て行こうとした。
「ガニマール」
呼び止める声に振り向くと、ルパンが上体を起こしていた。
「でも君が、僕と真っ向勝負して僕に勝てるとは思えないけどね」
不敵な瞳、不敵に笑った唇の端。
「ふん、悪党め」
帽子を被り、背を向けた彼の口元にも笑みが浮かんでいた。
***
そして夜。白い月が美しい夜。
あともう数日もすれば、満ち足りるのだろう。
ルパンはVIP専用病室のテラスに出て、籐作りのチェアに腰掛けてフランスの夜空を仰いでいた。
その背後で、音も無く影が立つ。
「・・・いよいよ君のために柳を植樹しに行かなきゃいけないのかと思ったよ」
影がテラスに入ってくる。白い月明かりに浮かび上がった男性が、ルパンの隣にチェアを引き、同じく腰掛け、空を仰いだ。
「僕はそう易々と死ぬようなヤツじゃないって、前にも言ったろう?このとおり、僕は幸福で、自由だよ」
くすくすとルパンが笑う。
「それにしてもよくここに入って来れたね」
ここはVIP専用病棟。そう簡単に一介の物書きが入って来られるようなところではない。
どうやって?と視線を向ければ友人も答えるように視線を向ける。
「君ほどではないにしろ、それなりのことは僕も出来るさ」
つまり、それなりのことをして入ってきたのだ、と友人は告げた。
「やれやれ・・・君という人は。昼間に来ればよかったじゃないか」
そしたら部下もわかって手配してくれただろうに
この偏屈な、しかし信用を置いている友人に溜め息をつく。
「昼間は騒がしかった」
「もしかして昼間から?」
そして沈黙。
この沈黙は肯定の沈黙だ。
ルパンはじっと友人の目を見つめた。
友人もじっとこちらを見ている。
だが、友人の目は何も語りはしない。
沈黙する瞳。
その髪と同じ、こげ茶色の瞳にはよく見るとナイトブルーが刻まれていて。
───はたしてこの男は泣くことがあるのだろうか───
ふとルパンはそう思うことがある。
あまりにも落ち着き払い、沈黙する瞳。
煩くないその視線が心地よくて、よく彼の部屋の長椅子でまどろんでしまうのは、いつも自分なのだけれど。
それ故か──彼の瞳に感情の乱れが宿ることなどあるのだろうかと、思うことがある。
あのイギリスの名探偵だって、己の相棒に関しては感情を露にするのに
そこで友人からの視線が途切れた。
友人は静かに一輪挿しを二人の目の前にあったテーブルの上に置いた。
「見舞いだ」
言うと花を一輪、すっと挿した。
白く照らされたのは淡く青い、可憐な花──アイリス。
「フランスの花、か・・・・・」
ルパンはそっとその花に手を添えた。
アイリスはフランスの国花だ。
フランスを、パリを愛する怪盗には、これ以上ない見舞いの品だった。
「墓前だったら柳だったが、見舞いはこれが適当だろう?」
うっすら笑った友人に、今日の見舞いの中で一番だと礼を述べた。
「それに君にもぴったりの花だからね。その花は」
「ぴったり?」
怪盗ルパンでも知らないことがあるんだな
友人はそう言いながら穏やかにアイリスの花について教えてくれた。
『恋の使い』とも呼ばれる花、それがアイリス。
花言葉は『雄弁』、『軽快』、そして───
そして、『柔らかな知性』
「それは・・・確かに、僕にぴったりな花だな」
白い月明かりあふれるテラスで。
僕と友人と、そして愛すべきフランスの花が優しく夜風に吹かれていた。
***
「もう次の冒険は決まっているのか?」
「ああ・・・・・一応は」
「なら、その前に一度こっちに寄ればいい」
「?」
「あの長椅子も君が来なければ無用の長物なんだ」
「・・・・怪盗のほかに、まっとうな友人はいないのかい?君」
「長椅子で話もせずに眠りこける友人は君くらいさ」
END
****************************************************
ッあーーーーーー!!!!やっと(打ち)終わった!!!!
てゆーかオレ迷走しすぎ!!初っ端あんなギャグ風味でなんで終わりシリアス?!
ガニマールのせいだ・・・(クソ)あの辺からシリアス風味になってきてる!!(←読み返してみた)
もー、話はだいたい出来上がってたのに、いざ打つとなると要所要所で突っかかっちゃって、もうッ(><)
さて、差し上げもの小説にてルブラン初登場。キャラはイラストを参照で^^
いつも内容を明かさず素敵ブツを突然プレゼントしてくれるイチヒトさんに水仙からはじめてのリク無しプレゼントふぉーゆーです(笑)
毎度毎度お世話になってます〜(><)
愛してるゼ!!(笑)
****************************************************