愛情確認警報?
さてさて、これはどうしたものか。
「だいたい、お前ってやつは、いっつもいっつも人の話は聞かないし、怪我は勝手にするし………」
「ああ、うん、ごめんごめん」
「もっと真剣に謝れっ!!」
「うん、はい。ゴメンナサイ。―――――てかさ、レストレイド」
「だから、いっつも言ってるだろ、………なのに、お前は…………ッ、……いっつも、いっつも……人の話聞かないし…」
「だから、さ。レストレイド」
その話、もう二十回目。
そんなグレグズンの指摘する声も、まったく今のレストレイドの耳には届いていなかった。
普段よりも色づいた頬だとか、やけに定まらない青灰色の視線だとか、時々支離滅裂で呂律が回らなくなる口だとか。
早い話がレストレイドは酔っ払っているのである。それもかなり。
なんだってこんなに飲んじゃったのかねぇ、と呆れたように思いながら肩に担ぐようにして恋人を支えたまま歩く夜道。
帰るのは勿論二人の家だ。
本日久しぶりに捜査課の警部連で集まって、パブで軽く飲んだのだ。
軽く。
本当に軽く飲んでいただけのはずなのに、どうしてかこんなに出来上がったのだろうか。
確かに疲れは溜まっていたようなのでその所為で酔いやすくなっていたのかも知れないが。
途中辺りから、何回も何回も同じ話を繰り返し話し始めたあたりでもうやばいかなー、と思っていたのだ。
最終的に、惚気なのかわからない話をしたあたりで、他の面々からお引取り令を出されたので早々に二人で退席したのだが。
「レストレイド?」
「んー……」
「あー、どしたの」
何とかかんとか家にたどり着いてベッドに上に寝かせてやったのはいいのだけれど、
なんのかんのと世話を焼いてやろうと立ち上がろうとした途端に、しっかりと服の裾を掴まれた。
その理由を聞けば相変わらず何か言葉にならない様子で枕に顔を擦り付けながら、んー、と可愛らしい声をレストレイドが漏らす。
普段に無いその幼い仕草は大変に可愛い。ともすれば、押し倒したいと思うほどに。
しかしながら。
「明日、着替えておかないと嫌でしょーが」
結構神経質の気があるレストレイドは、外着のままに寝たりするのを事のほかに嫌がる。
そりゃあ捜査やなんだでヤードの方に詰めている時は別だが、自宅にいる時はきちんと着替えてから必ずベッドに潜り込む。
それが無いと落ち着かないぐらいに。
それを思って口にしているのに、相手の耳にはそんな言葉は届かないらしく見事に素通り。逆に妙なことを口に出された。
「俺のことなんて、もうどうでもいいだろ……」
「は?」
「好きにすればいいだろ、別に……」
「ちょっと待て、何いってんのレストレイド」
「………馬鹿」
「え?」
「もう、お前なんて知るか」
馬鹿ぁー、とそのまま泣き出されたので、今度こそグレグズンは対応に困った。というか、先ほどのセリフは聞き捨てなら無い。
説教の後は泣き上戸。こんなに酒癖悪かったっけ?と疑問に思いながら、宥めるように頭を撫でてみた。
「レストレイドー?どうした?俺、なんかした?」
子供に言い聞かせるように優しく優しく。それでいて、相手の負担にならないような軽い声音。
それを駆使しての質問に、しゃくりあげながらレストレイドが答える。
「………ぐれぐすん………ッ」
「なに?」
「……っ、別れたいなら………っ、さっさと言えば、いいだろッ……」
「…………はい?」
クエスチョン、なんで俺がレストレイドと別れないといけないわけでしょうか。
「レストレイド、何言ってんの?」
酔っ払いの戯言にしてはあまりにも物騒すぎる。
それで顔を覗き込んでやれば、青灰色の瞳にはいっぱいに涙が溜まっていた。
零れ落ちそうなそれを指先で拭ってやろうと手を伸ばせば、それは掬い上げるよりも先に白い頬を伝い出す。
いっそのこと痛々しいまでに悲痛な表情に眉をしかめて、何度も相手の顔の輪郭を指で辿れば息を詰まらせながら言う。
「もう……っ、知ってるから……」
「だから、レストレイド。何が?」
「………別に、お前ならそうなってもおかしくないと、思ってたし………ッ」
「…レストレイド?」
一向にこちらの質問に答えてくれないのは酔っているせいなのか、それともわざとか。
とりあえず大事な大事な相手に自分がこんな顔をさせているということだけで、心が体が焦ってどうしようもなくて仕方が無い。
「なぁ、レストレイド。ちゃんと教えて?」
言えば眼鏡の下の目が、どこか頼りなげにこちらを見据えていった。
「………お前が」
「うん、俺が」
「………ヤードの前で、知らない女性とキスしてたって、聞いた、から」
「…………は?」
言ったきりそのまま視線を逸らして、小さく肩を震わせてしまう相手に半ば呆然とグレグズンはする。
なんだそれは、どんなデマだ。
っていうか、誰だよそんな話吹き込んだ奴と思ったところで、思い当たる事項が一つ―――――――。
「あのさ、レストレイド」
声を掛ければびくりと肩を跳ねさせる。それを落ち着かせるように、軽く優しく手をかけて。
「いや、ある意味その話本当だけど。レストレイドが心配することじゃないから」
「………だって、キス」
「いや、あのさ。女性っていっても、その子、五歳だから」
「……………は?」
ぽかん、とした顔でレストレイドがこちらを見やる。目の端に溜まっている涙の粒も動きを忘れたかのように停止している。
「この間、捜査の途中で迷子見つけたっていったじゃん?あの子が、案内してくれたお礼にって頬に軽くキスしてくれたんだけど。
っていうか、それ以外俺に心当たりないし。だから全然レストレイドが心配することないんだけど―――」
言い終わった途端に、ぶわっとレストレイドの目から涙が溢れ出して、慌てて腕の中にグレグズンは抱き込んだ。
どうせ情報の出所はブラッドだろうと簡単に見当が付く。後で何がしか言っておかないといけないとは思うけれど、
この解答のどこでレストレイドが泣いてしまうのかがさっぱり理解できない。
安心するか、怒り出すかのどちらかだと予想していたのにまったく別の方向で。
「何、どうしたの。俺なんか泣かせた?」
ひっくと大きくしゃくりあげる肩をぽんぽんと優しく叩いてやって、自分の胸に顔を埋めさせてやりながらそんな疑問を口に乗せる。
しっかりと掴んだこちらの服の裾を握り締めたまま、レストレイドが小さな声で言う。
「……………だって、俺はかなり口うるさいし」
「そんだけ俺のこと心配してくれてるんでしょ」
「…………融通は利かないし、頑固だし、仕事人間だし、神経質だし」
「俺なんて適当だし、仕事はしないし。だからレストレイドがいてくれてちょうどいいんだけど」
「………お前にわがままばっかり言ってるし、甘えてばっかりだし」
「レストレイドが甘えてたら、世の中の九割の人間は甘えすぎだと思うんだけど」
「………可愛くないし、男だし」
「可愛いし、綺麗だし、別に男でも女でもレストレイドだからいいんだし」
「………だから、俺のことなんて別にもういいのかと思って」
「………レストレイド、ヒトの話ちゃんと聞いてた?」
これだけベタ惚れだと毎日のように言っているのだから、少しは自信というものを持って欲しい。というか、うぬぼれてくれたっていいのだ。
それだというのに、この可愛い恋人はうぬぼれるどころかそんな些細なうわさに振り回されるほどに自分に対しての評価が低くて。
「あー…、ホント、可愛いからレストレイド。俺が好きなの、レストレイドだけだし」
信じてなと覗き込めば、一瞬だけ躊躇ったように。それでもこくりと引かれる顎に相好を崩す。
そのまま絡めた視線。
手馴れた動作でそのまま相手を引き寄せようとした途端に。
「…………………ッ」
「……レストレイド?」
「…………気持ち、悪い」
「はぁっ!?」
すっかり蒼白になってしまって口元を抑える様子に本気で慌てたのはグレグズンだ。
「ちょ、とりあえずバスルーム連れてってやるから、そこまで我慢しろよッ!?」
「……も、吐く」
「レストレイド!?」
安堵と飲みすぎのせいで、そのままレストレイドがぱたんと子供のように眠ってしまうのは意外にすぐのこと。
傍らでは安心した子供のようにすやすやとレストレイドが寝息を立てている。
その顔を横で眺めながら、青灰色の髪の毛に指先を絡めてグレグズンが溜息を吐き出す。
「参ったよなぁ……」
あれだけ好きだ、愛してるという言葉を重ねているとうのにこの恋人は結構些細なことで揺らいでしまう。
いつぞやはエイプリール・フールの戯言を本気で受け取られてしまって大変に苦労した覚えもある。それは確かに可愛いのだけれど。
「……愛情が足りないのかね」
独り言でぼそりと呟く。
頬に手を当てれば、それに擦り寄るようにレストレイドが身を寄せてくる。
その姿を見ながらへらりと口元に笑みを浮かべたまま。
―――――とりあえず、明日は急だけど休暇でも取って、たっぷりと俺の愛情を教えてあげようかね。
レストレイドにとってはそんなにありがたくないであろう計画を胸中で立てながら、そのままグレグズン自身もレストレイドの隣にと体を滑り込ませる。
眼鏡を外してくったりと眠っている顔は案外幼い。それを見ながら、グレグズンはライトグリーンの目を細めて、額にと柔らかく口付けた。
END
名無しさん。今年初めての名無しさんッ!!
うわーん、今年もよろしくお願いしますーーーーーッ!!!!
こちらこそご挨拶も出来ずすみませ・・・!!
にも関わらず惚気まくりなグレレスを本当にありがとうございます!!
今年はグレレスも補強できるように頑張りますので!(グッ)
そんなわけで体たらくな管理人ですが今年もよろしくお願いします!!
ブラウザバックプリーズ!
09.02.02.from:名無し様