完璧な人間などこの世に存在しない。

例え機械のように精密な頭脳を持っていようとも。

氷のような精神を有していても。

必ずどこかに綻び(ほころび)がある。

 

〜昼下がりの小事(海燕達の災難 番外編)〜

 

あれは、日本を訪れて幾日かたったある日の昼下がり。

特にすることもなかったので、庭に面した縁側で一人読書に耽っていた。

二冊目の三分の一に入った位の頃だろうか「ただいま。」と聞き慣れた声が玄関から聞こえて、本から目を上げる。

ワトソンが帰ってきたのだ。

「ホームズ。何処〜?」彼は僕が部屋にいないので探してくれているらしい。

声に答えて縁側にいることを伝えると、パタパタと足音をたてて愛しい人はこちらへかけてくる。

ここまで来た彼は、僕の目を見て改めてただいまと言った。

「お帰り。」(ああ、今日も綺麗だよ。ワトソン。本当は言葉に出して伝えたいけど、君が怒るから言えない。)

「暑いー。」言うがはやいかワトソンは目の前にあった湯飲みを持ち上げ、入っていたお茶をひと息で飲み干した。僕が使っていた湯飲みだった。

それに気づいていないのか、それとも気にしていないのか、ワトソンは着物の襟元を少し緩め、座り込んでひと息ついた。

二杯目のお茶をゆっくりと(僕の使っていた湯飲みで!!)飲む愛しい人。

舞いの稽古を受けるようになってから、彼は痩せた。

と言うより引き締まった感じがする。慣れない着物である上、かなりの運動量なのだろう。

それに、姿勢も良くなった。師匠に『舞いは姿勢が命。』と厳しく矯正させられたそうだ。

彼は、日増しに綺麗になっていく。それを視姦、もとい、観察するのが最近の楽しみだ。

今日も、ワトソンのうなじはこんなにも美しかったのかと目を奪われる。

「ねえ、ホームズ。」話しかけてくる彼の白い肌と華奢な胸板が先ほど緩めた襟元からきわどく見えたり見えなかったりする。(ああ、日本の文化万歳!!)

「何だい?ワトソン。」

「頼みたいことがあるんだけど。良いかな。」

「いいとも。」(その潤んだ碧の瞳に頼まれて断る理由が何処にある!?)

「ホント?ちょっと待ってて、すぐに準備する。」ワトソンはそう言って立ち上がり、一度僕の視界から消えた。

最近、こういうことがよくある。この前だってお酌の練習台になったばかりだ。(あんなにお酒が美味しかったのはだったのは久しぶりだった。)

今度は何かな。とワクワクしながら待っていると、ワトソンが戻ってきた。

「お待たせ。」

「今日は何をすればいいんだい?」

「じゃあ、ここに頭置いて。」その場に座りこんだワトソンは自分の太股をポンポンとたたいた。

もしかして、コレは、まさか・・・!?

膝・枕?

「ワトソン!?何をする気なんだ?!」

「耳掃除。」

「耳掃除?」

「うん、時々お客さんでねだってくる人がいるから一応練習しとけって女将さんが。」

耳掃除だって?!

僕の頭脳はパニックをおこし始めていた。というのも、今まですっと隠して来ていたが、僕の唯一の弱点は耳なのだ。

ワトソンの練習台になると言うことはそれをワトソンにさらけ出す事になるのだ。

出来れば、それは避けたい。でも、ワトソンの膝枕、膝枕。僕の中で理性と欲望が激しく戦いを始めた。

どうする?ドウスル?

「はやく、ホームズ。」

ワトソンの声に、欲望が勝利のときの声をあげた。

「痛かったら言ってね。」

僕にとって痛い以前の問題である。

ワトソンの動かす耳かきが僕の神経を刺激するたび、気が狂いそうになるのを必死でこらえた。

「動かないで、大きいのがある。」

ああ、いつもワトソンはこんな気分なのか。

「取れた。ほら。」目には入っていたものの、頭には入っていなかった。

そうして、両方の弱点をこれでもかと言うまでに攻め込まれた後、「はい、終わり。」仕上げとして、ワトソンは僕の耳に思いっきり息を吹き込んだ。

それが、最後の一撃だった。

見つけられてしまった、この僕の唯一の弱点・・・。

でも、それも悪くない。(だって僕の方が遙かに多く、君の弱点を知っているからね。)

縁側に降り注ぐ日の光が、僕たち二人の時間を優しく包む。

聞こえてくるのは、風が枝を揺らして鳴らす音、鳥の囀り。

鼻をくすぐるのは庭にある木に無数に咲いている小さなオレンジ色の花たち。

完璧な人間などこの世に存在しない。

例え機械のように精密な頭脳を持っていようとも。

氷のような精神を有していても。

必ずどこかに綻びがある。

だから、美しい。

だから、愛おしい。

 

今度はこちらから行かせてもらうよ。ワトソン。

 

 

****************************************************************

ふはははははは!!

JBさんからいただいてしまいました!海燕達の災難・番外編!!

膝枕!耳掻き!!耳掻きーーーーー!!!!(絶 叫)天然に誘ってますワトソンさん♪

ああもう萌えv幸せvvv

あ、ちなみにこの話は11月22日の「良い夫婦の日」にむけて書かれたものでしたー強奪申し訳ない☆^^;

****************************************************************

もどる