生徒たちが待ちに待った夏休み。

 だけれど、自分には必然的に大好きな人から引き離される期間であって。

 夏休みも仕事だと言っていた声を思い出して、始めの一週間だけは我慢して。

 とりあえず適当に宿題を片付けながら、だらだら過ごして。

 そして。一週間目にして我慢はとっくに限界を超えて。

 結局いつもどおりに学校に足を運んだ。

 

 

 

アツイナツ

 

 

 

 外ではミンミンと蝉が鳴いている。

 

「暑いですねー」

 

 耳元で呟かれた言葉に同意しながら、レストレイドは平静を装って書類を片付けていく。

 

「なんでこの部屋、クーラーないんですかー」

「…予算がないんじゃないのか」

「あー、なるほど」

 

 しばし訪れた静寂に、ようやくレストレイドは決意をして教え子に言う。

 

「…グレグズン」

「はい?」

「暑いのか?」

「暑いですねー」

「なら」

 

 離れたらどうだ?

 

 先ほどからずっと思っていた言葉をようやく吐き出すことに成功した。

 暑い、暑いと連呼しながらレストレイドの体に腕を回して、肩口に顔を乗せているグレグズン。言葉と行動が激しく食い違っている。

 

「嫌です」

 

 即答で否定が返ってきて、思わずレストレイドは溜息を吐いた。

 

「…暑いんだが」

「僕も暑いんです」

 

 いいながら抱きつく腕の力を強めるグレグズン。

 

「…だから、離れたらどうだ」

「嫌です」

「…あのなぁ」

「レストレイド先生、一週間ぶりですね」

「…そうだな」

 

 突然の話題転換に訝しげな顔をしたまま、同意する。

 

「僕、ずっと我慢してたんですけど」

「は?」

「せんせいに逢いに来るの」

「…は?」

「一週間は長いです」

 

 言いながら額を肩口に押し付けるグレグズンに、レストレイドは呆れた溜息を吐いた。

 

「あのなぁ、一週間ぐらいで…」

「先生、寂しくなかったんですか」

「………」

 

 寂しくなかったと否定すればそれは嘘になる。

 だから沈黙に陥ったレストレイドに、グレグズンは言葉を続ける。

 

「僕は寂しかったです。宿題も全部終わらせてきました。だから、これは僕の自分へのご褒美をかねた一週間分の補充ですー」

 

 

 

 だから、暑くても別にいいんですー。

 

 

 

 子供のような理屈を言いながら、ぎゅうと自分を抱き締める相手を思わず可愛いと思ってしまった。

 思ってしまってから、それを自覚して顔に血が上るのを感じた。

 

 自分も相当重症だ。

 

 ああ、もう。

 思いながら、大分残り少なくなった書類を見遣る。

 

「…グレグズン」

「なんですかー…」

「もうすぐ仕事が終わるから、そしたらかまってやるから」

 

 ―――それまで我慢できるか。

 

 顔も見ずに言い放った言葉に、しばらく沈黙してグレグズンが聞く。

 

「…明日もかまってくれますか」

「……ああ」

「明後日もですか」

「…ああ」

「明々後日もですか」

「ああ」

 

 半ばヤケになってそう頷くと、背中からするりと体温が無くなった。

 

「――飲み物買って来ますけど、何がいいですか」

 

 背後から声を掛けられて、振り返らずに「コーヒー!」とだけ叫ぶように告げた。

 機嫌のよさそうな声が返ってきて、ドアの閉まる音を聞くと同時に書類の上に突っ伏す。

 先ほど抱き付かれていたときよりもなんだか顔が熱い気がして、思わず頭を抱えた。

 どうにも、自分はグレグズンに甘えられると弱い。自覚しながらどうにもならないのは、惚れた弱味というやつか。

 

 ちらりと窓に視線をやれば、抜けるような空。

 

「――………あついな」

 

 それは一体何に対しての言葉なのか。

 蝉のみんみんという鳴き声が妙に鮮明に響いている。

 

 

 

END

 名無しさんからアツイ暑中見舞いを頂いてしまいましたvvv
 アツイなグレレス!!(笑)
 人気が無いから密着度が100アップしてる感じですね!
 ああ、なんかいつも貰いっぱなしですいません名無しさん・・・!!
 いやでも頂ける物は両手広げてすたんば(殴 打)
 素敵作品をどうもありがとうございましたv

 ブラウザバックプリーズ!

 07.08.04.from:名無しさん