青年は貴族に嫉妬する
Dorian Gray Is Looking For His Beloved.

 

 

 スコットランド・ヤードの喫煙室には、曰くつきの肖像がある。

「確かに、綺麗な顔した男ではあるな」

 グレグズンは喫煙室のソファに座って煙草をふかしながら呟いた。

 彼の恋人とはまた違った美しさ、と、ほんのり惚気を込めてみる。

(あいつは儚いって感じだもんな…)

「よく言われましたよ」

「だろうな」

「皆綺麗だ綺麗だって言ってくれたけど…最終的にその絵は…僕の片割れは…」

 溜息が耳元で聞こえて、グレグズンは振り返った。

 

 肖像画の男が物憂げにしゃがみん込んでいた。

 

「あれ?あんた、この絵のモデルさん?」

「はい」

「へぇ」

 グレグズンはしげしげと男を眺めた。

 二十代前半と言ったところか、金髪に青い目。

 美人である。

 でもやっぱ俺はレストレイドの方が好みかな。

「ああバジル…」

 その青年はよよよと泣き崩れた。

「バジル?」

「御存じないですか?バジル・ホールウォード」

「ああ、捜索願が出たとか魔王が言ってたっけ…」

「誰が!?」

 青年は驚いたように叫ぶ。

「僕より先に!」

「ナントカって貴族だよ」

「サー・ヘンリー・ウォットン!?」

「さぁ?」

「うわ!今のは寒い!今のは寒い!」

「何がだよ?」

 眉を寄せるグレグズン。と、そこに…。

「やかましいぞ」

 魔王降臨。

「お、魔王、ちょうどいいや。ナントカって画家の」

「バジル・ホールウォード!」

 青年が殺気の籠った眼でグレグズンを見上げる。

「って画家の捜索願」

「うむ」

「何て貴族が出したって言ったっけ?」

「サー・ヘンリー・ウォットンだ」

「やっぱり…!」

 青年は今にもハンカチを噛みしめそうな勢いで眉を吊り上げた。

「やっぱりハリーか…ッ!僕より先にマイラバー・バジルの捜索願を出すなんて!」

「…は?」

「それは公言しない方がいいと思う。捕まる」

 アルセニーが冷静に言った。

「男色はご法度だからな」

「わかってますよ…」

 青年は物憂げに溜息を吐いた。

「何やってんの?」

 詐欺師参上。

「お、詐欺師」

「喫煙室で相談やってたっけ?」

「俺だってやるつもりなかったんだよ」

「うう…バジル…」

「バジル?サー・ヘンリーが捜索願出した?『私の無二の友人が消えてしまったのです』だっけ?」

 ブラッドストリートがそのサー・ヘンリーらしき声真似をすると、

「うわあああ…」

 青年が頭を抱えた。

「くっそぉぉぉお…!あ、失礼いたしました。つい…」

「『私の大事な大事な友人ですので』」

「あの野郎…!!!」

「『見つかりましたらまず私にお知らせ下さい』」

「うぐううううう…!!」

「ブラッド」

 アルセニーがたしなめた。

「『つい面白くて…』」

 ブラッドストリートはにやりと笑った。

「落ち着けって」

 グレグズンが青年の肩を叩いた。青年は涙目でグレグズンを見上げると、

「うわああぁぁぁぁぁあん!」

 と、泣き出して飛びついた。

「何事だ?」

「どうしたんですかー?」

「げっ!?レストレイド…!?おい、こら!離れろ!」

「ふええええぇぇぇぇ…」

 レストレイドとホプキンズの声に、グレグズンは慌てて青年を引き離そうとした。

  誤解される。間違いなく誤解される…!

「おいグレグ…」

「グレグズンさん…?」

 案の定、レストレイドは固まっていた。ホプキンズも目をぱちくりさせている。

「ち、違う!レストレイド!誤解だ!」

「…ホプキンズ」

 レストレイドが囁くようにホプキンズに言った。

「は、はい?」

「…まだ片づけてない書類を思い出した」

「ちょぉおい!誤解だっつってんだろうがッ!」

(僕、グレさんがこんなに取り乱すの初めて見たよ)

(僕も…)

(うむ)

「こら離れろこのガキぃぃぃぃ!!レストレイド待てー!!」

 

 十分後、青年を振り切ったグレグズンが捜査課に戻ると、うなだれているレストレイドの頭をガシガシ撫でているピーターの姿があった。

(ナイスフォローだ、ピーたん…)

 グレグズンはそれを見るや、ずるずると壁にもたれて座り込んでしまった。

 

 その後、その青年は決してブラッドストリートの前には姿を現さなかったと言う。

 

 

  END

 赤形さんからいただいてしまいましたーvvv相互御礼!
 ヤード勢総出演+ドリアンでお届けしてくださいました!どうもありがとうございますv
 あ、ちなみにこのお話のドリアンはいつもの幽霊Ver.とは別物でお考えくださいとのことでした^^
 いやしかしうなだれてるレストレイドを慰めてるのがピーたんだということに脱帽。
 この後のグレグズンの動向が気になります(笑)
 そしてさりげにブラッドが大活躍(?)・・・!!
 声だけでならグレレスにちょっかいが可能だねブラッド!(いやいつもちょっかい出してるか)
 ああああ赤形さま、素敵な相互御礼小説をどうもありがとうございましたーーー!!!

 ブラウザバックプリーズ!

 07.06.21.from:赤形和水さん