Meet again...?

 

 

 黄色の広葉樹が散らばる道の上。

 置かれたベンチに腰掛けながら。

 

「スケッチですか?」

 

 声を掛けられて、顔を上げると見知らぬ青年がそこには立っていた。

 碧い瞳に、綺麗な金色の緩い巻き毛。

 一瞬、呆けたように見上げてしまった。

 

 

「え、ええ…」

 

 

 言うと相手は微笑んだ。

 それから、ふと絵の具で汚れた指先を見て言う。

 

「油彩が専攻ですね」

 

「あ、はい…」

 

 答えながら、なぜか違和感を覚えた。

 どこかで。

 どこかで、この会話をこの人と交わしたことがあったのでは無いだろうか。

 

 もう、忘れてしまったほどの彼方で。

 

 

「どうしました?」

 

 

 突然沈黙した自分に、相手の訝しげな視線が降ってきて慌てて首を振る。

 

「いえ、別に…」

 

 答えながらも、やはりどこかに感じるのは。

 既視感。

 

 

 

『………で、…………ね』

 

 

 

 途切れ途切れで、懐かしい声が。

 頭の内側から、鼓膜を叩いたような気がした。

 

「あの…」

 

 思わず、目の前の青年に問いかける。

 

「どこかで、私と会ったことがありませんか?」

 

 相手は、ほんの一瞬だけ目を碧い目を見開いて。それから緩やかに首を振った。

 

「いいえ」

 

 否定の言葉が放たれて。

 どこかで失望を覚えながら、安堵している自分がいた。

 

 

 

 

「私はあなたと会うのは、初めてです」

 

 

 

 まるで言い聞かせるような、呪文のような言葉だった。

 

 なぜだろう。

 

 じっと見上げていると、困ったように相手の青年は眉を寄せた。

 

 

 私は。

 

 

 

 (ふと、無いはずの記憶が告げる。)

 

 

 

 彼を。

 

 

 

 (確かにこの目で見たと、私の体が言う。)

 

 

 

 一枚の絵に仕上げたことが、無かった、だろう、か――?

 

 そう。

 

 それも。

 

 

 ずいぶん、前、の、こと――?

 

 

 

 急速に記憶が引っ張られるような幻覚は、手から滑り落ちたスケッチブックの音で中断された。

 目を瞬くと、目の前の青年がスケッチブックを拾い上げていた。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、どうもすみません」

 

 

 スケッチブックを受け取りながら、ふと視線を合わせると碧い目がそこにある。

 

 

 息を呑んだのは、数瞬。

 

 

 すぐに碧い目は、何かを秘めたような微笑に切り替わった。

 

「どうぞ、気をつけて」

 

「ええ、どうも…」

 

 頷くと、相手はすぐに歩き出した。

 

 私の横を通り過ぎる一瞬に。

 

 

 

 

 

 

「さようなら」

 

 

 

 

 

 ただ一言、そう残して。

 

 金色の髪が、視界の端から消えていった。

 

 

 なぜだろう。

 つきり、と胸が痛んだ気がした。

 

「え…?」

 

 なぜだろう。

 視界が、水に垂らした絵の具のようにゆがんでいる。

 

「…え……?」

 

 なぜだろう。

 頬を生暖かい涙が伝っていた。

 

 バサリとスケッチブックが、枯葉の積もった道の上に再び落ちた。

 

 

 

 

 

 街路樹の落ちた道を、枯れた葉を踏みしめながら歩く。

 前に、前に。

 《彼》のことは振り返らないで。

 

 きっと、私は再び《彼》を壊してしまう。

 

 

 

 だから

 

 

 

 

 私が再び、君を自分の手で壊してしまう前に。

 

 

 

 

 

 

 

 さようなら。

 

 私の愛した、

 

         愛しい画家――。

 

 

 

 

 

 

 end…?
 * * *
 名無しさんから三周年のお祝いにいただきましたv
 ドリバジ現代パロですよ!!しかも悲恋!!!(悶)
 このままではすまないと信じていますよええ!追いかけろバジルーッ!!(>_<)
 現代でもヘンリー卿が出てきて二人の恋路を邪魔するのかしら。。。
 ヘンリー卿が出てきたら真っ先に絶望しそうなのはドリアンよりバジルのような気がする。
 『ああまたドリアンが行ってしまう』的なね。逆にドリアンはしっかとヘンリーを拒絶しそうですが。
 その辺のすれ違いもまた面白いだろうなと悶々してしまった春。(何。)
 名無しさん素敵作品をどうもありがとうございましたーーーッ!!

 ブラウザバックプリーズ!

 07.05.22.from:名無しさん