White day

 

 

「せーんーせー」

  ガラリと教室の戸を開いて、入って来た見慣れた金髪の生徒は笑顔で近寄って来るとこう言った。

 

「『お返し』ください」

 

「…は?」

 

  …お返し?

  何の?誰の?

 

  疑問符を飛ばすレストレイドにお構いなく、グレグズンはもう一度同じ言葉を繰り返す。

「『お返し』ください」

「…なんのお返しだ?」

  心底わからない様子で首を傾げたレストレイド。

  それにグレグズンが言う。

 

「今日、三月十四日じゃないですか」

「ああ、そうだな」

 

  …それが?

 

「今日はホワイトデーなんです」

「ホワイトデー?」

「バレンタインのチョコのお返しをする日です」

「ふぅん…」

 

  …だからなんだと言うのだろうか、この男は。

  なんとなく嫌な予感を覚えながら、顔を見上げるとライトグリーンの瞳が細められた。

  あがる口角からこう言葉が放たれる。

 

「お返し、ください」

 

「…チョコはやっただろう」

「でも先生、僕からチョコもらいましたよね。だから」

  だから、チョコのお返しください。

 

「…わざわざか?」

  レストレイド的には、お互いチョコを渡したんだから別に『お返し』なんてしなくても良いだろうという感じだ。

  しかし、目の前の相手はどうやら違うらしい。

「それはそれで、これはこれです」

  言われた言葉に、書類を片付けながらレストレイドは眉をしかめた。

 

「…何も用意してないぞ?」

 

「知ってます」

 

「…?」

 

  知ってるのにどうして『お返し』を欲しがるのか。

  グレグズンの行動を疑問に思いながら、ふとレストレイドは訊ねた。

 

「お前は…、何か用意してるのか?」

 

「してますよー」

 

  なんだったら今あげましょうか?

 

  そう、笑顔で告げるグレグズン。

 

「ああ…」

  大した考えもせずに頷くレストレイド。

  途端に笑顔になったグレグズンが手招きする。

「じゃあ、ちょっとこっち来てください」

  机の上の書類を整理して、招かれた方に回り込む。

  するとそのまま、腰をさらうように抱かれて。

  驚く間も無く、顎を固定されて。

 

  口で、口をふさがれた――。 

 

  一瞬、呆然とする。

  くちゅくちゅという生々しい水音に、思考回路が混乱する。

 

「っん…!?ふ…っ」

 

  反射的に退こうとした腰は、普段のひょろりとした外見からは想像できない力で固定された。

  深いキスが、背けようとした顔を引き戻すように仕掛けられる。

 

  口の中をはい回る舌が、まるで別の生き物のように動いている。

  息が上がり、呼吸が苦しい。

  思考が、追い付かない。

 

「ふぁ…っ…!んっ…」

 

  ようやく口が離された。 一瞬、呆気に取られたようなレストレイドが叫ぶ。

 

「なっ……にを…っ!?」

 

  赤い顔で必死に口を拭うレストレイドの質問に、けろりとした顔でグレグズンが答えた。

 

「何ってキスですよ?」

 

  まだ足りませんかー?

  などと言いながら、ずいと顔を近付けるグレグズンにレストレイドが必死に言う。

 

「Σいいからっ!足りたっ、もういいっ///!」

 

「そーですか」

 

  あっさりとキスを断念したグレグズンに、ようやく落ち着いたのか、それでも真っ赤な顔をしたレストレイドが聞く。

 

「グ…グレグズン?」

「なんですか?」

「い…まの、なん…だ」

「だからキスですよ。…やっぱり、もう一回しますか?」

「�瑤靴覆�ていいっ!そうじゃなくて、な…」

「な?」

 

  顔を覗き込むグレグズンに、レストレイドが言い淀みながら言葉を続けた。

 

「だから、な…んで、キスしたんだ」

 

「『お返し』です」

 

  にっこり微笑むグレグズン。

 

「キ…キスが、か?」

 

「違いますよー?」

 

  そのままずいと顔を近付けて、再び唇が触れそうな位置でグレグズンが言う。

 

「僕、です」

 

「…は?」

 

「僕がお返しです」

 

  貰ってくれます?

 

「…〜〜〜〜っ///!?」

 

  なんだか間違いなく、物凄く恥ずかしいセリフを言われた気がした。

  いや、実際言われているのだが。

 

「僕、お返し上げましたよね?だから、先生から貰っていいですか?」

 

  ライトグリーンの瞳が、近い。

 

「お返しに、先生ください」

 

「なっ…」

 

「先生が欲しいです」

 

  赤い顔をして言葉を失うレストレイド。

 

「センセ?」

 

「…ぁ」

 

  覗き込まれた視線に、レストレイドが口を開こうとした瞬間。

 

  ガラリ。

 

「レストレイド?」

 

  顔を覗かせたマッケンジーが見たのは、やけに赤い顔をしたレストレイドと、

妙な体勢で立ち尽くして、不満げな顔をしたグレグズン(←レストレイドに突き飛ばされたらしい)だった。

 

「…どうかしたのか?」

 

「べっつに、なんでもありません」

 

  不機嫌そうに言い放ち、マッケンジーの横を通り過ぎようとしたグレグズンの耳に、レストレイドの声が飛び込んできた。

 

「グレグズンッ」

 

 振り返った視線の先には、真っ赤な顔をしながら青灰色の視線をさ迷わせるレストレイドで。

 

「センセ?」

 

  訝しげに問い掛けると。

 

「……で……から」

 

  小さく唇が動いて言うが、聞き取れずに聞き返す。

 

「はい?」

 

  その言葉にようやく自分の方を青灰色の瞳が捉えて、叫んだ。

 

「……ぁ…とで、やるから。『お返し』……会議、終わるまで…待ってろ」

 

  言った瞬間に、すごい勢いで逸らされた顔と、のぞく赤い耳たぶに笑みが零れた。

 

「待ってます」

 

  上機嫌にそう告げて、教室を後にする。

 

 

  その後、会議の終わったレストレイドがグレグズンにどんな『お返し』をしたのかは。

 

  ――それは、二人だけの秘密である。

 

  END

 * * *

 ホワイトデーに名無し様よりいただきましたーvvv
 バレンタインデーの続きで学生モノです♪
 バレンタインであれだけ消極的だったグレグズンが嘘のように積極的です(笑)
 とゆうか会議後何をしたんですかお二方(笑)
 名無しさん素敵小説ご投下ありがとうございましたーーー!!

 ブラウザバックプリーズ!

 07.04.19.from:名無しさま