ああ、早く。
早く私の手に。
――《きみ》に伸ばす手――
――最近、気に入っていること。
天下のスコットランドヤードの捜査課で、彼らにちょっかいを出すこと。
「まだ仕事かい」
言いながら、彼の恋人の姿を借りたままひょいと背後から抱きついた。
「――っ!!?」
ビシリ、と音がしそうな勢いで腕の中で硬直した彼。
くすくすと笑いながら、肩に顎を乗せるようにして撫でると服越しからも、鳥肌を立てているのが分かった。
悪寒はどうしようも無いから我慢してもらおうと思いながら、ぎゅっと抱きつく。
冷たい自分とは違って暖かい。
生きている証拠。
何も感じない、何も感じられない私は。
――ああ。
まだ、私が《きみ》を。
この腕に感じられたのは、いつだろうか。
「だから、人のものにちょっかい出さないの」
そんな言葉と共に、目の前には本物の彼が現れて暖かい感触は腕の中から奪われてしまった。
「やぁ、ミスター・グレグズン」
「…どーも、ミスター・グレイ」
ライトグリーンの目が剣呑な光を帯びている。
腕の中にしまってしまった彼を、少し未練がましく眺めてから鷹揚に肩を竦めて見せる。
「つーか、何よその格好」
「うん?君の真似をしてみたんだけど」
「う…、ぐれぐず…?」
ようやく事態を把握したのか、彼の腕の中で声を上げる彼。
こちらを振り向くよりも早く、さっさと胸に顔を埋めさせられている。
「しばらく、こうしてて。見ると石になるから」
「酷いな」
苦笑気味にそういいながら、少し首を傾げてみる。
「ミスター・グレグズン」
「ん?何?」
「君の恋人は、僕がこの格好をしていてもすぐに君じゃないと見抜くんだけども」
「…そーなの?」
いつもの自分の姿になって、どうしてだろうと訊ねてみた。
ライトグリーンの目が、心なしか嬉しそうに細められて、口角が少し上げられる。
「そりゃあ、ねぇ。
俺の愛の教育的指導の――賜物?」
「なっっ!!?」
人の悪い顔で告げられた言葉に、じたばたと腕の中の彼が暴れ始めた。
「な、何を言ってるんだ、お前はっ…!!!?////」
「何って、ホントのことでしょ?」
耳まで真っ赤にして怒る彼を、くすくすと喉の奥で笑いながら髪に指を絡めている。
そんな二人の姿が、ひどく自然で。
普通で。
「…いいなぁ」
首を傾げて二人を見ながら、そう呟く。
ぴたりと二人の動きが止まった。
「いいなぁ、君たちは」
――心底、羨ましいと思った。
少し戸惑いを含んだ青灰色の瞳が振り返る。
似ているなぁ、とふと思う。
特に姿形が似ているという訳では無いけど、雰囲気が似ている。
私の腕の中にいない、人に。
二人より添っていられる彼らが。
とても羨ましく思えて。
ひょいと近寄ると、額に軽く唇を落とす。
「は…!!?///」
驚いて声をなくす彼。
「……おい」
地を這うような彼の声が振ってくる。
「ご馳走様でした」
これくらいのお裾分け貰ってもいいでしょう?
笑顔で告げると軽く手を振った。
「それじゃあ、またね」
そう言って、絵画の中へとふらりと戻った。
ああ、お願いだから愛しい人よ
早く
早く、私の手の中へと。
手を離したのは私です。
だけれど、胸の中に燻る狂おしいまでの焦燥と、泣きたくなるほどの喪失感は本当だから。
一人で眠る《きみ》は私を許してくれるのでしょうか。
――焦がれるのも、求めるのも。すべて《きみ》への思いのカタチだから。
だから、早く、愛しい人よ。
私の手の中に。
『ドリアン』
《きみ》が私を呼ぶ声さえ、消えるように遠くなる、その前に。
私の愛する
―――――バジル。
END
* * *
きゅーん。(ツボに嵌まった音)
イチャコラなグレレスと一緒に切なく甘いドリアン(ドリバジ)模様まで見れるとは・・・!!
何この一粒で二度オイシイ素敵小説・・・!!(きゅーん)
ぬあおおおおおおお、毎回毎回素敵小説のご投下をありがとうございます名無しさん!!
ドリバジでもドリアンが退屈で絵を描いてるバジルに抱きついた時、バジルがビシィッ!と石化したに違いない(笑)
ブラウザバックプリーズ!
07.01.20.from :通りすがりの名無し人さん