暑気払い〜ヤード百物語・後日談〜
「ふぅん?俺そっくりのオバケねぇ?」
呟けば、あれは幻覚だと腕の中の恋人が自分に言い聞かせるように呟いている。
「…もしくは、ホームズさんが変装して…、いや、今噂のフランスの怪盗が……」
そんなわけ無いだろうが。と言いたげな顔で、腕の中のレストレイドを見やる。
ちなみに、その探偵は愛しのドクターと地方に出張中だし、怪盗はフランスで某小説家の友人と夕食を共にしてたので思い切り無実である。
「レストレイド」
現実逃避気味なレストレイドの頭を撫でて、こちらに意識を引き戻させる。
「…何?」
「お前、俺が帰るまで偽者に気が付かなかったのか?」
「…途中でおかしいなとは思った…んだけど…」
う、という顔のレストレイド。その顔を見下ろして、グレグズンがぼそりと呟いた。
「愛が足りなかったかねぇ…」
「え?」
突然体がふわりと浮いて、そのままベッドの上に運ばれた。
「?え?グレグズン?」
視界が反転した中に、ひょいと覆いかぶさったグレグズンの名前をわけがわからない風情でレストレイドが呼んだ。
にっこりとグレグズンが微笑んで、レストレイドに言う。
「まぁ、何はともあれ。俺と偽者の区別がつかないのは問題だよな?」
「え、いや…そう、だけど…」
「だから」
「…だから?」
グレグズンがにこりと微笑んだ。
「探偵だろうが怪盗だろうがオバケだろうが、俺の偽者なんて一目で見分けるくらいに本当の俺を
体に
叩き込んでやるから」
レストレイドの顔が別の意味で青くなった。
「ちょ…っと待て、グレグズン…ッ!」
「大丈夫、大丈夫♪じっくり、たっぷり、教えてやるから☆」
するりとグレグズンの手が、レストレイドの体を滑った。
思わずレストレイドの体が強張る。
「お勉強しようか?」
耳元で囁かれて。
何を…!?
レストレイドが反論するよりも先に、口はグレグズンのそれで塞がれた。
次の日、グレグズンがレストレイドをお姫サマ抱っこで運んで出勤してきたが、ヤードの賢明な捜査員一同は誰も何も言わなかった。
ましてや、この暑いのにレストレイドがきっちりと長袖を着こんでその上首に無数の絆創膏を貼って、妙に腫れぼったい目をしていたことも。
グレグズンの首に引っかき傷と赤い小さな痕がいくつかついていたことも、ヤード一同は何も見えないと必死になって言い聞かせていた。
「…暑いですねぇ」
「…暑いな」
ポプキンズとピーターが遠い目をしながら呟いた。
「夏だからな」
アルセニーの言葉に、そこにいた全員が。
(((((違うだろ)))))
と思っていたとかいなかったとか。
その日の遅く。
誰もいない捜査課。
珍しく残業中のグレグズン。
恋人は体調不良を抱えて今日は早々に家路についていた(今日一日デスクから立ち上がれていなかった)。
他の面々も、またしかり(全員熱中症気味)。
「…さぁて、俺も帰るかね」
呟きながら書類をさっさとまとめて、捜査課のドアまで来て立ち止まると。
ライトグリーンの瞳に剣呑な光を漂わせて、部屋の中を一瞥して一言。
「わかってるだろうけど、あれは俺のだから」
手ぇださないでくれる?
誰も答えない部屋をそのままに、ドアを閉めてグレグズンが立ち去った。
その捜査課の部屋の隅で。
陽炎のように一瞬、空気が揺らめいたが。
後は静寂と沈黙のみが残った。
完
* * *
後日談まで頂いてしまいました・・・!!
ぬっはー名無しさんてばグッジョブ!!(ぶはー/鼻血)
どんな教育指導をされたのか覗きたくてたまりません(コラ)
さりげに地方に出張したホムワト組もフランスルブラン宅のルパルブ組もイチャコラこいてんのが
暗示されてるあたりナイスです名無しさん。
これで暑気あたりが2倍になるわけですね!(いやダメだろそれ)
暑気一点集中(オイ)な作品をありがとうございます・・・!!
ブラウザバックプリーズ!
06.08.04.from :通りすがりの名無し人さん