タナバタ(後編)

 

 

 いつ聞いたかは忘れた東洋の伝説。

 それを思い出しながらぼけっと雨に打たれていたら、思いかけず恋人に『何をしている』と問い掛けられ。

 自分なりに真面目に答えて見ると、『馬鹿』という言葉ではなくなんだか優しい言葉が返ってきて。

 自分の腕を掴んだ手のひらに指を絡めて歩いた。

…雨がまだ降っている。

 レストレイドの自宅。

 いかにもあいつらしく几帳面そうに並べられた家具。その玄関に、びしょ濡れの俺は立っていた。

「…まったく、お前は一体いつからあんなところにいたんだ」

 その言葉と共に頭にバスタオルが投げ掛けられて、返事をする間もなくわしゃわしゃと頭が拭かれた。

「ん〜…?いつからだっけね?」

 呑気に答えれば、頭を拭く手が止まって。

「…馬鹿」

 ため息交じりにそんな言葉が降ってきた。

「悪いね」

「思うならなんとかしろ」

 バスタオル越しに手が離れていくのを感じる。

「…早くシャワーでも浴びてこい」

 寒いだろ、の言葉と共にレストレイドのものらしい着替えが押し付けられて。不意に触れたその手の体温が心地いいと思った。

 思わずその手を引き止めるように掴んで。

 そのまま、熱を確かめるように強く握った。

 

「…?グレグズン?」

 

 訝しげに見上げてくる青灰色の瞳を、じっと見返す。

 

「どうした?寒いのか?」

「ああ」

「じゃあ、早くシャワーでも浴びてこい。紅茶かコーヒーでもいれてやる」

「ん〜」

「グレグズン?」

 

 確かに寒い。

 生乾きの髪。冷えた体。水を吸って重くなった服。 寒い。

 

「…寒い」

「なら早く…」

 

 それよりも。

 

「こっちがいい」

 

 言いながらぐいとレストレイドの体を腕の中に抱き込んで、首筋に顔を埋めた。

「な…!?」

 葉巻の匂いと共に、レストレイドの香りと。体温が直接感じられて。

「…お前、あったかい…」

「なっ…、はな…」

 腕の中から抜け出そうとするレストレイドを更にきつく抱き締めて。

「…無理」

 そう呟いた。

「…グレグズン?」

 

「レストレイド」

 

 耳元で、熱を確かめるように体を抱き締めたまま。

「…お前が欲しい」

 

 低く呟いた。

 

 一瞬、何を言われたのかわならないような顔をしたレストレイドの顔が一拍おいて、一気に朱に染まる。

「な…っ、あ……」

 

 言葉が出てこないように口を開閉させる。そりゃそうだ。俺だってこんなことを言うとは思っていなかった。

 

「駄目?」

 

 腕の中の顔を覗き込めば。

 紅い顔をして俯いたレストレイドが。

 小さくコクンと頷いた。

 

 

 冷えた指先がじれったいくらいに優しく体をなぞっていく。

「ん…っ、ふぅ…ん」

 ついばむような唇が何度も何度も深く口の中を侵していって。

 何も考えられなくなりそうだ。

 …耳の奥に響くのは外でまだ降り注ぐ雨の音と、自分と相手の声と息遣い。

「レストレイド?」

 まだ余裕をたっぷりと含んだグレグズンの声が、耳元で囁く。

 それだけで力が抜けそうになるのを必死に堪えて、相手の顔を見返せばライトグリーンの目が細められて再び口付けを落とされた。

 ――より、深く奥に。

「…っぁ…」

 何度も何度も口付けを落として。

 だけれど指先は、首筋や耳元、他にもシャツ越しに体の線をなぞるだけで決してそれ以上触れてこようとしない。

「…れ…ぐずん…っ」

 キスだけで思考回路が溶かされてしまったような錯覚。

 離された唇と唇の間で、お互いの唾液の混ざりあった銀糸が繋がっている。

 生理的に滲んだ涙が、じわりと目から零れた。

「…どした?」

 それをゆっくりと舐め上げてグレグズンが聞く。

「…もっ、やぁ…!触…って…」

 実際、焦らされ続けて気が狂いそうだった。まだ水に濡れたままの相手の服に両手で縋り付くと笑みを含んだ声が届いた。

「わかった」

 その言葉と共に耳たぶをやんわりと噛まれて。

 背中にゾクリと何かが走った。

「ひぁ…っ」

「ん?」

 ワイシャツのボタンを外していく冷えた指が、悪戯に肌を撫でていく。

 その度に過剰に反応する体や声を必死に抑えようとすると、無防備だった胸元の飾りが弾かれた。

「やぁ…ッ!」

 ビクリと体が跳ねた。その反応を確かめるように、今度はじっくりと円を描くように親指の腹がそこをなぞる。

「ふ…ぁ…っ、はぁ…っ!」

 胸の飾りを遠慮なく弄ばれて、首筋にキスを降らせていた唇が片方それを軽く吸い上げた。

「やぁッ…ん!」

 肌蹴た前に触れる冷たい濡れた服の感触に肌があわ立つ。

 体と意識が全て奪われていくような感覚。

 胸の飾りは触り続けられて、痺れるような甘い痛みを伴い始めている。

 口からは浅い呼吸音と喘ぎ声がひっきりなしに零れて羞恥心に拍車をかける。

「…はぁ…っ、やぁ…ん…っ…ぐれ…ず…」

「ん…?」

 胸元にあるグレグズンの頭を抱え込むように縋れば、くすりと笑う声と共にチュッと音がして胸から唇が離れた。

 痺れるような余韻。そして、グレグズンが着ていた服が床に投げ落とされるように脱ぎ捨てられて。

 ひんやりとした感触が今度は直に触れ合う。

 先程まで胸元にあった手が今度は下肢に伸ばされた。

「だ…めッ、そこ…はぁんッ!や…ッ」

 抗議の声を封じ込めるように口付けが降ってきて。抵抗の力は抜けていく。

「あッ…!」

 下肢に伸ばされた手が、既に先走りを零し始めた半身に触れた。

 今までにないほどの直接的な快感に頭の中が白くなる。ゆっくりと丁寧にグレグズンの指先がそれを撫でた。

「ひッ…はぁん…ッ!っめ…や…」

 快楽とない混ぜになって弱々しくなる抗議の声には耳も貸さずに、グレグズンがそれを口に含んだ。

「ひやぁ…ぁああッ!」

 あまりにも大きすぎる刺激で体がビクンと跳ねた。

「だぁ…っめッ!で…っる…イク…やぁ…離し…」

「無理っ…」

「っめ…やぁ…ぁっ…ぁああああっ!」

 一際大きく体が痙攣したように跳ね上がって、ぐったりと力が抜けた。

 グレグズンが出されたそれを綺麗に飲み干して顔を上げた。

「っ…。離せって…言った…のに」

「ご馳走様」

 言われて再びキスを仕掛けられて。頭の中の理性は簡単に崩壊していく。

「…っ」

 体が初めてのところを撫でられて、強ばったのを自覚する。秘部に指が当てられて、それが序々に本数を増やしていく。

「…っァ…」

 息が熱い。下腹部に初めて感じる圧迫感。無意識のうちにシーツを握り締めていた。

「…はっ…くっ」

「…大丈夫か?」

 聞かれて、シーツを握り締めていた手をグレグズンの背中に回すよう促されて。

「…だ…っめ」

「?どして」

「…爪たてる…」

 無意識にそう呟けば、苦笑と共に「爪くらいいくらでもたてろ」と言われて。

 結局、背中に腕を回せられて。三本目がゆっくりと入り込む。

「っはぁ…っ」

 奥の方までかき回すようにいれられた一本が、奥のある部分に触れた。

「ひぁッんッ!」

 突然突き抜けた快感。

「…ここか」

「?…何が……ッ、はぁんッ!!グレグズンッ…」

 中をはい回るような指の感覚に思わず縋り付いて名前を呼べば、耳元で囁かれた。

「…悪い、我慢できないわ」

「?な…に?」

 指がずるりと抜かれて、代わりにもっと質量のある熱いものがあてがわれた。

「ふっ…あっつ…」

「…っ、お前の中…あつ…」

 一つになるかのような錯覚。奥へ奥へと。

「はぁッ…あ、ぁあッ」

「っく…」

 流されそうで不安で。背中に回した腕に力を込めた。

「…あっ…やぁッ…また…イク…っ」

 息が荒い。奥の方で少し動く度に快感が背中を駆け上がって。

 溢れる涙もそのままに、グレグズンにしがみついた。

「…っ、俺も…イク…」

 珍しく焦ったような声が耳元で響いて。更に奥へと入り込まれて。

「駄目…もッや、あああッ!!」

「…ッ」

 すっと溶けるように意識を失った。

 

 

 水の音。

 腕の中に紅い痕を全身に残してぐったりとしたレストレイドを抱えて、労るようにゆっくりとグレグズンがバスタブに浸かった。

 ぐったりと湯の中でグレグズンに身を預けながら、レストレイドが言った。

「…雨」

「ん?」

「雨…止んだな」

「そうだな」

 そのままグレグズンの胸に頭を預けて、緩やかにレストレイドが目を閉じた。

 その姿に口元で笑みを浮かべて、グレグズンが首筋に新しく紅い花を咲かせた。

 雨音の代わりに、水滴の落ちる音が響いて。

 

――天の川の二人も。空の上で今頃あっているだろうことを思いながら。

 

 

 

END

* * *

もらったーーー!やったーーー!!裏だーーー!!ヤったぞーーー!!(黙れ★)
ぬおおおん名無しさんが七夕でグレレスをっ。しかも裏をっっ!!
ニヤニヤ笑いが止まらないんですが何か。
グレグズンがさりげにイジワルでニヤリです(何)
ごちそうさまでした名無しさん・・・!!(平伏)
裏ーーーっ!!(まだ言うか)

モドル