自覚拒否後の弊害

 

 

 捜査課のスタンリー・ポプキンズより。

 

 ――え?レストレイドさんですか?

 おかしいなぁ、今ここで書類書いてたのに。どこ行っちゃったんでしょうね??

 え?心当たり?

 無いですよ。あ、仮眠室じゃないですか。

 毎回ですけど、お疲れのようですし。

 …喧嘩でもしたんですか?

 え?任せたって、これをですか!?

 ちょっと待ってください、僕まだ仕事あるんですよ!?終わってないのに!

 よろしく〜って、ちょっ…。

 グレグズンさん!!

 

 廊下のピーター・ジョーンズより。

 

 何?レストレイド?

 ああ、さっき廊下ですれ違ったぞ。

 どこに行ったって?

 仮眠室の方向だったか…?

 何かしたのか、お前。

 別に?本当かよ……。

 おい、どこ行くんだ。

 書類の山でポプキンズが溺れてるから助けてやれ?

 ………って、それお前の書類だろうがっ!!

 ちょっと待て、グレグズン!!

 

 仮眠室のアルセニー・ジョーンズより。

 

 グレグズンか。

 レストレイドならいないぞ。

 先ほどまでいたが、我と入れ違いに出て行ったからな。

 どこに行ったか?

 さぁ、分からぬ。

 ……グレグズン、何かレストレイドにしたのか?

 

 それは俺が知りたいねぇ。

 

 魔王の問にそう答えて、俺は仮眠室から出た。行く先々でレストレイドの居場所を尋ねれば、必ず返ってくる質問。

 レストレイドに何かしたのか?

 してないんだけどね、今ン所は。

 思いながら資料室へと足を伸ばす。

 ここ数日、明らかにレストレイドの様子が変だった。…しかも俺限定。

 資料が溜まろうが怒鳴り声の一つも無し。

 どころか、大好きな書類仕事はほとんど持ち帰り(あんな山よく持ち帰るよな)。

 書類の山に埋めようにも、まったく俺のところによりつかない。

 こちらから近づけば逃げられる。

 現に、今もその逃げられている途中であって。

 そんで俺は追っかけているという。

 

 …つーか、ホントに何かしたかね。俺。

 

 いや、したけどこの間。

 それでも精々、キスどまりだけど。

 

 …ん?

 

 開け放した窓から流れ込む風。

 奥まった廊下。

 葉巻を片手に窓辺に寄りかかるシルエット。

 

 ――ビンゴ☆

 

「一服か?レストレイド」

 

 いつもの調子でいつものように声をかけながら、近づいていくと。

 背中が強張ってこちらを振り向かない青灰色の髪。そして背中。

 

「……何かようか」

「ん〜、別に」

 

 なんでもないようにそう言って、レストレイドから少し離れた位置の背中を視界に収められるように壁に寄りかかる。

 

「…なぁ」

「………なんだ」

 背中は相変わらず振り向かない。固い声とのその背中に、名前を呼んでおきながら言葉は出てこない。

「…なんだ」

 もう一度、レストレイドが固い声で訊ねた。

「ん〜」

 曖昧にそういいながら、こちらを見ないかと思ったが。やはりあの青灰色の目が、こちらを捕らえることは無くて。

「…ようが無いなら、俺はもう行くぞ」

 まだ吸い始めて間もない葉巻を片手に、こちらに視線をやる事も無く足早に通り過ぎようとするその腕を。

 ぐい、と。

 掴んでみた。

 

「な…っ」

 

「なあ」

 

 至近距離。逃げられない程度に力を込めて腕を握って。

 

「俺がどうかしたか?」

 

「―――ッ」

 

 何かを言いたいのか。何も言いたくないのか。

 唇を噛み締めたまま何も言わないレストレイド。

 

「レストレイド」

 

「………俺はッ」

 

 今にも泣きそうな声で、震えた声で。

 

「俺は、お前なんか………大嫌いだ」

 

 泣きそうな、揺れている青灰色の目に気を取られて、気が付けば乱暴に手が振り払われていた。

 

「レストレイド…?」

 

 走り去った後姿の後に、さっきまであいつの吸っていた葉巻の香りが漂った。

 

 

 

END

* * *

くっ・・・先が気になりますお館さま・・・!!(違☆)
グレグズンは果たして無事(?)レストレイドをゲットできるのか!(笑)
しかし過敏に反応して逃げ回るレストレイドってば乙女・・・(笑)

ブラウザバックプリーズ!

06.06.30.from :通りすがりの名無し人さん