-----------------------「アキの世界観。」番外編-------

 

カラッと晴れた七月の空を見上げながら、サヤカは溜息を吐いた。
数学って、面倒―・・・。と、教室の端で暑さ・湿気と戦う。

この六時間目は「三クラス合同成績別クラス授業」という長ったらしい名前の数学である。
アキは同じ三クラスの枠に入っているが、成績ランクAのクラスの為、教室が違う。

サヤカは視線を逸らして、時計を見た。無機質なそれは、嫌になるくらいに進みが遅い。
・・・・・・そういえば、前にアキとこんな会話をしたっけ。

「授業中は他人の二倍ノートを取りなよ。そうすれば、家でやらなくたって覚えるんだから。」
「無理だよ。面倒くさいし。」
「無理でも面倒でも、やればやるだけの成果が絶対に出てくる。絶対に。
私だって三年間続けて来れたんだから」
「へー。ご苦労さん」

あのときは適当に流したが、アキは今、必死な顔をしてノートを取っているのだろうか。
あの、いつも余裕綽々な態度のアキが必死な様子を思い浮かべて、苦笑した。

そう考えれば考えるほど、アキは変な奴である。

人をからかうことが好きで、楽天家。けれどいつの間にか、冷静で厳しい目をしてる。
ONのときと、OFFときのギャップが大きい。
真面目で優秀かと思えば、考えられないほど馬鹿で奇天烈な行動を取る。
よし、あとで問い詰めてる・・・・・・。
「訊いてやる」ではなく、「問い詰めてやる」とシャーペンを握りなおしたサヤカは、
とりあえずアキを真似て、急いでノートを取ってみた。

・・・・・・これ、結構ツライかも。
右手が痛くてしょうがない。こんなこと、アキは毎日やってるのか?
ありえないだろう。人間として。

そのとき、待ち構えていたチャイムが鳴った。
黒板は既にまっさらである。

「あ!ノート取り終わってないのに!」
時既に遅し、とはこのことである。

* = * = * = * 

「アキ、いつもあんなことやってんの?」
「は?何が?」

早速、学校帰りに訊いてみた。
今日は部活も無く、委員会もなかったため、一日安泰だった。

「ノートのこと。二倍云々言ってたじゃん」
「ああ、あれ。うん、やるよ。毎日毎時間。」

訊いて、後悔した。反吐が出てくる。
あんなことずっとやってたら、自分はきっとおかしくなってしまう。

「慣れちゃえば、全然苦じゃないよ。寧ろ充実するし。」
「あーそー」

なんだ、その優等生的発言は。

「悪かったね。私は学校では優等生だよ」
「否定しようよ!」

アキには、謙遜という言葉がないのだろうか?
いつも自信あり気である。正直、ムカつく。

「やっぱ、アキは変人だ。」
「何ソレ。どこが。」

アキは怪訝そうに眉を顰めた。

「変な人」と言われるのは耐えられるが、「変人」と言われるのは嫌だ、
といつだったかに言っていた。意味は同じなのに。

「偉ぶっちゃってー」
「実際、偏差値高いもん。県トップクラス。」

平均偏差値は69を保ち続けている。

「そういうとこだよ!本当、デリカシー無いな!!」

サヤカはついにキレて、アキに向けてサブバックを振り回す。
しかし寸でのところでかわされた。
ちっ、当たれば本五冊分の重みだったのに。

「っと、危ないなぁ。ほんのジョークなのに。」

事実だけどさ。とは言わないことにした。
これ以上、サヤカを煽らない方がいい。

「大丈夫、ダイジョウブ。サヤカも大丈夫だから。ね?」

宥めるような仕種と、子供扱いのような声音に、サヤカの炎は更に増す。
でもアキは解ってやっているのだろう。余計にムカつく。

「サヤカちゃんはさ、努力家で粘り強くて真面目だからさ。うっぷん溜まっちゃうんだねー、きっと。」

ふざけたような声だが、言ってることは確かである。
アキは分析力に長けている。だからこそ、反論する隙を与えさせない。

「私はそういうとこがサヤカのいいとこだと思うよ。だから、とにかく自分なりの方法でやってみ?」

そう言って、アキは自分より低い位置にある頭を撫でた。

「なっ・・・・・・!?」

また子供扱いか、と手を払おうとしたが、
見上げた先のアキの笑顔は、ひどく優しいものだった。
こんなアキは珍しい。いつも喜怒哀楽がはっきりとしたそれしか見ていないからだ。

「ま。まだまだ時間はあるんだ。ゆっくり頑張れよ。」

男らしい口調だが、声は違う。

「じゃーねー」
「うん。ばいばーい」

サヤカの家の前で、いかにも女子学生らしい別れの言葉を交わした。
姿が完全に見えなくなると、アキは周囲に人がいないことを確認する。

いないことがわかったら、アキは苦笑し始めた。
くっくっと、腹から出てきた堪えきれない声が漏れる。

「ったく、なんなんだ。サヤカってば。ノート二倍のことなんて、すっかり忘れてると思ったのに」

笑いは収まらず、後から後から出続ける。

「本当もう、可愛いなぁ。」

こんなこと言ったら、殺されかねないんだけどさ。

「愛してるよ・・・・・・。」

本人の前じゃあ、こんなことは恥ずかしくて、絶対に言えないけどさ。


貴女に想いを語る前の話・・・・・・。

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Claudeさんからアキの世界観・番外編を残暑お見舞いに貰ってしまいましたよーーーっ(歓喜☆)
ああもうごちそうさまですよ!!この二人大好き!!!(>▽<)
本編とはまた違った感じの二人を拝めてシアワセでしたーーーvvv
ノート二倍とまではいきませんが水仙もアキちんみたく授業中に全てを済ませてたなぁ。(しみじみ)

Claudeさま、素敵な残暑お見舞いありがとうございましたーーーーっ(>▽<)

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モドル