何だろう? 

 

近頃

 

ワトソンがおかしい。 

 

 

自分の書斎にこもることが多くなったし、食欲もないようだ。

身体の調子でも悪いのかと訪ねると何でもないと素っ気ない答えだけ返してくる。

今までは低血圧で寝起きの悪いワトソンを起こして朝のお茶を一緒に楽しむのが日課だったのに、

最近は部屋に入る時にはもう着替えをすましていることが多い。

包み隠さずに言ってしまえば、夜の営みも一週間近くご無沙汰だ。

 

そして今夜も・・・。 

 

夜遅く、ソファに長くなり僕は読書を楽しんでいた。

時々本を下げると書き物机に向かっているワトソンが目に入る。

彼はせわしなくペンを走らせていた。

「ワトソン。まだ寝ないのかい?」愛しい人の背中に声をかける。

「うん。ついでだからキリのいいところまで終わらせてからにする。」

背中から答えが返ってくる。こちらに顔すら向けてくれない。

「このごろ毎日遅いじゃないか。たまには早めに休まないか?僕ももうすぐ寝るから。」

本当は眠くなど無かったが少しでも気を引きたくて心にもないことを言う。

「お構いなく。」(ずいぶん冷たいじゃないか、え?)

あきらめきれずもう一押しする。「体に毒だよ。」

「君に言われても説得力ないな。」

それっきり会話が途絶えてしまった。

ほんの短い時間のはずだったのに、ひどく長くひどくじれったかった。

僕は読んでいた本を乱暴に置き、身体を起こす。

彼が気づいて振り返る前に背後に立って手を伸ばした。

「ホームズ?!」いきなりのことにワトソンは驚きの声を上げた。

「すごいな。まるで岩みたいにガチガチじゃないか。」

「やだ、いきなりなにすんの。」

「熱まで持ってきてる。」

「やめて、やめてよ。痛っ。痛い。ホームズ。」

「でも気持ちいいだろ。」

「・・・・・・。」

「だだこねてないで。じっとして。」

 

「肩こりはほっとくとタチが悪いんだ。」

 

 

 

〜指の触れる先〜

サブタイトル★恋愛関係の倦怠期とそれの脱却の方法論

 

 

 

「全く、君は一体どんな生活をしてるんだい?」

ワトソンは肩の周りを軽くほぐしただけで悲鳴を上げている。

「作家は大変なんだよ。何かと。」

「ワトソン。」

「何?」

「僕は君に負担をかけているかい?」

「え?」

「その、捜査に熱中すると君を僕と同じぐらい動けるものとして扱ってしまうから。」

「ホームズ。そんなに深刻にならなくてもいいよ。たいしたことないんだし。」

「そう?」

「うん。だから、もう手を離して。」

そういって肩に乗せていた僕の手にワトソンの手が触れた瞬間、どこかで何かの留め金がはずれてしまった。

肩をつかみ、身体の向きを変えさせ、唇を押しつける。強引に舌を相手の中に押し込み蹂躙する。

服に手をかけ、そのままことに及ぼうとした。そのときだった。

いつもの彼のものとは思えない程強い力で身体を押され、唇を引きはがされてしまった。

「ワトソン。どうして。」

思いも寄らぬ恋人の反応にこのまま倒れてしまいそうになるのを必死でこらえた。

「だめだ。」

「え?」

「今はだめなんだ。」ワトソンは息を荒げて服をなおしている。

こんなことは無論初めてのことだ。なんだか、目の前にいるのが僕の恋人ではなく、全く違う異物に思えてきた。

「何か、僕に不満があるのか?なら言ってくれ、直すから。」

語尾が震え、頭の中がグチャグチャになるのが解る。

「そんなんじゃない!!」

「じゃあどうしてだめなんだ?!理由を教えてくれ!」

口からでた言葉は自分でも驚く程荒々しく、怒りがこもっていた。そうしてまっすぐにワトソンを見つめる。

最初は口を固く閉ざしていたが威圧感に負けたのかワトソンは「笑わない?」とだけ尋ねた。

何度も強く頷く。

それでもまだしばらくはもじもじしていたが、意を決して口を開く。

「・・・たんだ。」

蚊の鳴くような声だった。

「え?」

よく聞こえなかった。

「太ったんだ!」

覚悟を決めて大声で叫んだ顔は真っ赤に染まっている。

「太った?」

ワトソンはうつむいたまま、ぼそぼそと話し始めた。

彼が言うことには少し前、患者の健康診断の後何気なく体重を量ってみたら以前より2キロ近く増えていたらしい。

そういえば、最近ワトソンがハルヒ嬢からもらったニホンの食べ物『餅』とやらをとても気に入っていつも口にしていたのを思い出した。

彼曰く餅の中に入っている黒っぽい『あんこ』なるものが甘くて病みつきになるんだそうな。

おそらく、原因はそれだろう。

それで痩せようと思い立ち、鉄アレイを買い込んで書斎で一人ダイエットにいそしんでいたらしい。

だからあの時僕の身体を押し返すことができたのだ。

にしても、それで肩こりになっては意味が無いというのに・・・。

「別にいいじゃないか。元々君は細身なんだし。」

「良くない!?」

「どうして?」

「だって・・・。」ワトソンは口ごもって俯いた。

「だって何?」

「・・・ベットの上で・・・恥ずかしいから。」

そういうとまたいっそう顔が紅くなった。

思いも寄らぬ答えに一瞬無意識に笑みがこぼれる。

「やっぱり笑った。」

目の前の愛しい人はそれをめざとくそれを認め、咎めるような視線を向ける。

それがあんまりにも純粋で美しく、言い訳をするのも忘れて思わず唇を重ねる。

もう、拒まれることは無かった。

「ワトソン、僕が君を好きなのは君が痩せてるからじゃなくて君だからなんだよ。」

「それは・・・。」

「だから、もう無理しないで。ね?」

「・・・うん。」

そして、僕たちは再び口づけを交わす。今度はお互いがお互いを求め合う、暖かいものだった。

「さて。」

「わっ、ホームズ?」

急に抱き上げられ、咄嗟に両腕を首に絡ませてくる。

「痩せるには汗をかくのが一番だよ。ワトソン。」

寝室のドアに意味ありげに目配せをする。

すべてを悟ったワトソンは降ろせ降ろせとわめきながら腕の中で暴れ始める。

だが僕はがっちりと彼の身体を抱いて離さなかった。

抱き上げた身体から伝わる体温が、必死にあげる抗議の声が、どんどんと僕の胸を叩く小さな痛みさえ今はすべてが愛おしかった。

「だめ、さんざん僕を拒んだ罰はしっかりと受けてもらわないとね。」

目に見えて愛しい人の顔から血の気が引いていくのに、僕は忍び笑いを禁じ得なかった。

 

 

終

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えっへへへvvvまたまたJBさんから頂き物vvvいつもどうもありがとうございます♪
ちなみにドクターは翌朝3キロも体重が落ちていたそうな。どんだけ貪ってんのさホームズ・・・!!(爆笑)
愛情一本、『ワトソニアンH』をどうもありがとう!ホムワトリン100�咾漏亮造棒歇茲靴燭茵�むしろそれ以上入ってるよ!
いやー本当にごちそうさまでしたvvv

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モドル