あれから俺は大学を卒業して、医療電子系の製薬会社に就いた。
ネットジャンキー供にくれてやる薬を作ったりする会社だ。いわゆる市販の風邪薬を作るようなトコだ。
けっきょく好行は、好行の精神は自身の身体に戻ってくることは無かった。
なにぶん、事故が起こった所がそれ専門だから、いろいろ同級内で手を尽くしたが、無駄だった。
一年かそこらで好行の身体機能はすべて停止し、脳波の確認もしてもらって、事実上「死亡」と判定された。
好行がいなくなって、俺の生活は好行に会う以前のものに戻った。
いや、それ以下だった。
何もかもがつまらない。
どうしようもないくらいに、呆れるくらいに日々は単調でつまらないものになった。
それでも黙々と大学に行き、淡々と卒業した。
で、無事に就職もして。
何事も無く過ぎてゆく時間に、俺は好行のことはそのうち忘れるだろうと思っていた。
忘れたかった。
忘れてしまおうと思った。
アイツに関連する事柄、記憶、モノ、すべて。
もう金輪際好行のような存在に逢うことなんて無いだろうし
好行に代わるヤツなんていないから。
憶えてるだけ、苦しい。
それなのに最近、頭の中で声がする。
『アキィーーー』
時間が経てば、どんな声だったかなんて忘れてしまうだろうに。
『アキィーーー』
俺の脳みそはそれをヤツの声だ、好行だ、好行の声だと主張する。
『アキィーーー・・・』
なんだよ今更。今更なんでアイツの声が聞こえるんだよ。
俺は腹立たしげに社内の廊下を踏み歩いた。
「・・・・・ねぇ」
通り過ぎた会議室から話し声が聞こえてきて、ふと立ち止まり、耳を澄ます。
──あたらしく入った社員、例の工学大の──
──ああ、情報管理のヤツらが忍び込んだトコだろ?──
──研究、盗み見しようとしたら──
──さも無いモンだった、てオチだろ?笑っちゃうぜ──
──逆ギレしてネットクラッシュしちゃったってさ、ははは──
『アキィーーー』
また、頭の中で。
俺を呼ぶ、アイツの声が、響いた。
突然視界が開けてくる。
頭の中から霞が消えて、妙にすっきりして、クリアになった。
なるほどな。
そういうことか。
ぐるりと体を反転させて、もと来た方へと足を走らせる。
そうして向かったのは社内コンピューター室。
その個室に飛び込むと、鍵をかけてパソコンを立ち上げる。
起動するや否や自分とネットを繋げる。
青く綺麗に輝いていた画面に突如ノイズが走る。
そして画面上に現れたものは───
『アーーーキィーーーーーー!!!!!』
画面いっぱい、いまにも飛び出さんばかりの勢いの、あの頃と何ら変わらない好行の姿だった。
「・・・・・・」
さすがの俺でもちょっと退いた。
『ああッ!!退かないで退かないで!!』
画面にピタッと手を添えて、いかないでぇ〜と情けない声を上げながら泣きついてくる。
その様子に思わず苦笑して──キッと画面の好行を睨みつける。
「おまえなぁ・・・・なんッッッでもっと早く出てこねぇんだよッッ!!!」
だいたいどうして俺の中に居座ってんのか、お聞かせ願いたいねぇ。ああ?と脅せば。
『うッ!!いやだって俺も目ぇ覚めたの最近だしッッ;なんでって言われてもーーーーッ』
ぐるぐると一人百面相を始める好行。
ほんとに何も変わっていない。
そして気づけばそれを見て俺は笑ってる。
一気にあの頃に戻ったみたいだ。
「ま、いいや・・・それは後々考えるとして・・・さっきの話、聞いてたか?」
ワタワタしていた好行の動作がピタッと止まる。
『ばっちし☆』
二次元の画面上と、現実の三次元とが鋭く視線を交し合う。
「ひとまず作戦会議といこうぜ」
個室のPCの前で。
キィと椅子を引いて座りなおすと、俺たちは作戦会議を始めた。
俺たちの世界を壊したヤツらを破滅に導くために。
───とある医療電子系大手製薬会社が潰れるのは、それからわずか三日後のことである。
END
* * *
これはもうちょっと長編でやった方がよかったですね・・・・;
とりあえず書きたくて詰め込みすぎた・・・・;;;;
あ、電子・工学関係は水仙の専門外なので語彙はめちゃめちゃ。
悪しからずー♪