・・・  ・・・・チッ、 ・・・・  ・・・・・チッ、・・・・

 

 

ああ、時計の鼓動はこんなにゆっくり時を刻んでいるのに。

目に見えて感じる時は、どうしてこうも流れるように過ぎてゆくのだろう。

 

 

アーケード街とアーケード街を挟む横断歩道

いつも以上に五月蝿い街頭活動に思わず耳を塞ぎたくなった。

けれどそんな顕著な行動などできるはずもなく、仕方なしにコートのポケットをまさぐる。

チャリ、と音を立てて出てきたのは懐中時計。

最近ようやく出会えたお気に入りの一品

そうだ、これを耳に当てれば。

心臓の鼓動を聞いているように、心が落ち着くかもしれない。

そう思って懐中時計の背を耳に当てた。

 

・・・ ・・チッ、 ・・・ ・・チッ、

 

思いのほかゆっくりと時を刻む音に驚いた。

そして自分の前方──横断歩道、それに交わる車道を、向こうの信号待ちの群れを見た。

 

車は忙しなくびゅんびゅんと走リ去り

ビルの電光掲示板は何某かのニュースを流すように告げては消え

信号待ちの人々はそれぞれにうごめき

街頭活動はあいかわらず質の悪い拡声器を使って何か吠えている

 

・・・ ・・チッ、 ・・・ ・・チッ、 ・・・・・・

 

ああ、刻まれる時はこんなにも緩やかだというのに

目の前の目まぐるしい──見苦しいとまでも思えてしまうほどの、この愚行はいったいなんだ?

 

なんだかとても醜く、むなしいものを見たような気分になった。

くしゃりと顔を一瞬歪めて

それでも信号が進めと告げると同時に、私もまた見苦しく動き出していた。

 

すれ違う人、すべてがそうであるように

なんの感慨も無い表情で横断歩道を渡り終えると、街頭活動の横を足早に通り過ぎて行ったのだった。

 

 

ポケットの中の時計の音も、いまは耳まで届かない。

 

 

 

END

****************************************************************

これも実体験をもとに☆
意外にゆっくりなんですよね、時計の音って。
目に映るギャップにちょいと驚いた話でした。

****************************************************************

モドル