三年間、ずっと好きでした。

 

 

卒業式の日、人気の無い棟の廊下で。

そんな呆れた告白を聞いた。

 

「それを、いま言うんですか?!」

「いけなかったですか?」

首を傾げる男に、あたしは思わず眉を寄せていた。

 

「もう卒業ってときに言ったって、意味ないでしょう。」

「そうですか?」

「そうですよ」

 

卒業式に告白。

それはある意味ラブ物の定番のようなもので。

でもちょっと考えればすぐにわかる矛盾。

 

別れるときに、それを伝えてどうするの?

 

同じ空間に居られる時間はもう終わってしまったのだ。

好きだと伝えて、仮にOKをもらえたとしても、会える時間は格段に少なくなる。

だから家が近所だとか、よほどのことが無い限りそういった告白はそれっきりである。

事実、いまも100%そんな感じの風向きだ。

 

「せめて2年次とか。それぐらいに言ってたらまだ何か出来たかもしれないでしょーに。」

「べつに何か望んでたわけじゃありませんから。」

そこがあたしにはわからない。

望みの無い告白なんか無い。

「好きであることを知ってほしいから、言ったんでしょう?好きになってほしいから、言ったんでしょう?」

でなきゃ告白する意味が無いよ。

「いいえ。」

真っ向否定、全否定。

「ただの自己満足。自己への確認作業ですよ。」

本当に私が貴女を好いていたのだということへの。

人好きのする笑顔が、どこか本当に満足気で。

 

「それであたしに告白?」

そんな作業、ひとりでもできるじゃないですか。

不可解色満面のあたしに、彼は満面の笑みで答える。

 

「確認には証人が必要ですから」

これで私の言ったことが証明できるでしょう?

晴れやかな様子に、もう呆れて何も言えなくなった。

 

 

「それにしても」

「?」

「まさか、自分の父親ほども歳の離れた方から告白されるなんて、夢にも思いませんでしたよ。」

「はっはっは、私もです。」

定年すれすれのこの歳で、自分の子どもほども年下の女の子に告白するなんてね。

歩んできた分だけの皺を刻み込んだ顔が、柔和に呵呵大笑した。

 

そういえば、定年。もうじきですね。

 

ふと、視線を下げた。

おんぼろ棟の剥がれかけた床のタイルが、あたしの中ではとても印象に残った。

 

 

三年間、ずっと好きでしたよ。ええ。

 

 

定年を間近に控えた男は、もういちど確かめるように。

噛み締めるように、呟いていた。

 

 

END

* * *

なんか、学園モノ教師生徒恋愛はいつも若い先生ばっかなので。
相手を定年間近なおじいちゃんにしてみました(笑)
アメリカでは80でも現役だそうですから。(爆)
まあでも卒業時の告白って、言わなきゃ後悔するから言うみたいな感じなんですかね。
そこで言うくらいなら水仙は言わない方を選びますが。

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