ただ

ただ、まっ平らなせかいを見てみたかった。

 

ただ、それだけの理由。

 

 

 

『 044.地平線 』

 

 

 

まったくもう!たったそれだけの理由で全部消しちゃったっての?!!

信じられない!!アン・ビリーバブルだよ!!

月末(つきすえ)がオーバーアクションで両手を空に向かって振り上げる。

 

「だって、このちっこい島だってちょっと前までは何にも無くて、まっ平らで」

地平線こそ、連なる山々のせいで見えなかったけれど───

緑地の平原にどこまでも果てることの無い蒼穹(そうきゅう)。

どこか乾いたようにも見えるその光景が、そこに吹き渡る風が、自分は何よりも好きだった。

 

けれど、日を追うごとに年月の経つうちに、すっかりこの国は、いや世界は積み木の国になってしまった。

あんな今にも崩れそうな不安定なものを積み上げるだけ積み上げた土地で暮らす方がどうかしている。

だから、

 

「だからってねぇ!!あー・・・もうッ、どーすんのさ!!また最初っからやり直しじゃん!!」

あああああもおイヤだ・・・・・

月末が頭を抱えて座り込む。俺はぽりぽりと頬を掻く。

「あーーー・・・ワリィ」

キミ、絶対悪いって思ってないでしょ

うっわ、重々しいお言葉。

一応、考え無しな行動だったってのは承知してるから、申し訳ないとは思ってるんだけどな。

「・・・ないかもしれないけど・・・・申し訳ない、とは思ってる」

ゴメンナサイ。

深々と、俺は月末にむかって頭を下げた。

しばしの沈黙の後。

はぁーーーーーーー・・・・・・・っ 、という諦めにも似た長ぁーい溜め息を聞いた。

「仕方ないか・・・『月賭(つきかけ)』だもんね、キミは」

こーの博打好きに、ボクは末代付き合わされることになるんだーーーっ。

わーーーっ、と泣かれても何とも返答の仕様が無く、やっぱり俺はバツが悪そうに頬を掻くしかない。

 

「んーじゃ、とっとと再構築、始めちゃおうか」

蹲って、ワーーーッ、と泣いていたのが一変してスクッと月末が立ち上がる。

相変わらず切り替えの早いヤツだ。

「え?もうかよ?」

もうすこし、いま、この場を堪能したって。

せっかくすべてが、すべての地が、生まれた頃の姿を取り戻したってのに?

「誰のせいでこーなったと思ってんのーーーッ!!またイチからやり直しなんだよ?

 またウン万年もの月日をボクらは無駄にしなきゃならないんだからね!!善は急げ!とっととやる!!」

ブン、と腕を振り上げての一喝号令。

ご機嫌が斜めどころか垂直になるまえに、おとなしく従った方が良さそうだ。

「へ〜い・・・・」

すごすごと肩を竦めて、踵を返す。

 

 

振り返った俺の眼前にあるのは緑地の平原───突き抜ける蒼穹。

これからまた、云万年。

いましばらく、この風景を拝められそうだ。

 

 

「まずアダムとイブから創りなおさなきゃダメじゃん・・・・」

「こんな感じで良くね?」

月賭、センス悪い

なッ・・・ それ言うならお前がこの間創ったのだって・・・!!」

うっさいな!!このボクの芸術を否定する気?!!

いま俺を否定したお前は何だ、月末・・・・・

 

 

こうしてこの世は今日も破壊と再生を繰り返す。

───ノリとテンションだけで動く、二人の手によって。

 

 

 

END

* * *

あえて『神様』とはしませんでした、この二人(笑)
水仙的に神様は、居たとしてもそんなに大マジメに世界を創ってなかったと思う。
むしろ、ノリで創っておいて、なんかいろいろ創り損ねちゃったけどまーいっかー♪みたいな。
そんぐらいのノリで居て欲しい。
世界を滅ぼす理由も、滅びる理由も、そんな感じで居て欲しい。
そんなアンタを愛してるゼ、神様(笑)

* * *

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